街角で悪役令嬢役にスカウトされた件 【OKしたけど、異世界でサスペンスだとは聞いてない!】

なつきコイン

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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

59. 調査結果

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 街で落ち込んだ様子のカナリを見かけたので、メイドにお願いしてグスコウ男爵家について調べてもらった。

「お嬢様、グスコウ男爵家について報告に参りました」
「早かったわね、ユキ。それで、どうだった。やはり爵位の継承で男爵の次男ともめているのかしら?」

「いえ、爵位は滞りなくカナリ様に引き継がれました」
「そうなの。それならばなんで暗い顔をしていたのかしら?」

「それが、グスコウ男爵は多額の借金をしていたようで、爵位を引き継いだカナリ様がその債務を背負うことになってしまったようです」
「えっ! 借金があったの。どれくらい?」

「ざっと、一億といったところです」
「一億……」
 といわれても、なんとなく「大金なんだろうな」ということしかわからない。

「それは、返せる見込みがあるの?」
「グスコウ男爵家は元々領地を持っていませんし、これといった事業も行なっていません。そのうえ、王都にあった屋敷も既に人手に渡っているそうです」

 つまり、領地からの収入や事業収入はなく、現金化できる資産もない。借金を返すには、働いてお金を稼がないといけないということよね。
 だけど、カナリはまだ七歳だ。働き口などあるのだろうか?

「借金を返せない場合どうなるの?」
「鉱山などに送られて、借金が返済できるまで強制労働させられることになります。一億ですと二十年から三十年くらいでしょうか」

「カナリはまだ七歳よ」
「七歳なら問題ありません」

「そんな……」
 この世界では、七歳になるともう労働力とみなされているようだ。

「なんとか鉱山送りにならないように助けられないかしら?」
「そうですね……。お嬢様がどうしてもというなら、公爵様にお願いして、借金を公爵家で肩代わりし、その代わり、カナリ様には公爵家で働いてもらってはどうでしょう」

 七歳なのに働かなければならないことは変わらないが、鉱山よりは公爵家の方がましだろう。

 台本では、カナリは悪役令嬢の取り巻きAになっている。それなのに、鉱山送りにされたら学園に通うことはできなくなってしまう。
 既に、弟ができたことにより、台本と食い違いが出ている。
 これ以上、台本とのズレを大きくするわけにはいかない。何としてもカナリの鉱山送りは回避しなければ。

「お父様にお願いに行くわ」

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