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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

55. ヒロイン?

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 学園の見学をした翌日は、サラのお勧めであるカフェに行く予定であったが、学園でのこともあり、サラが外出を控えた方がいいと言い出した。
 安全を考えれば、屋敷から出ない方が良いのだろうが、そんなことでは、一生引き篭りの人生を送らなければならなくなってしまう。
 それに、敵視をされて文句を言われたが、手を出されたわけではない。それなのに引き篭っていては、なんだかこちらが負けた気分だ。
 サラには心配をかけてしまうが、そこまで気にする必要はないだろう。

 なんとかサラを説得し、車に乗せてもらい屋敷を出て予定どおりにカフェに向かう。
 カフェは王都の中心街にあり車で十五分ほどだ。到着するとサラは周りの様子を確認して慎重に車を降りた。

「お嬢様、絶対に私から離れないでくださいね」
「サラは心配し過ぎよ。折角のカフェが楽しめないわよ」

「ですが、何か視線を感じます。ご用心ください」
「うん、まあ、用心に越したことはないわね」
 でも、たぶん、その視線は、必要以上に警戒するサラの行動が人目を引くからだと思う。

 人気のカフェということで、外まで行列ができていた。
「お嬢様、どういたしましょう?」
「急ぎの用があるわけでもないから、並んで待てばいいわ」

「申し訳ございません」
「別に、サラが謝ることはないわ」

 私たちが並んで順番待ちをしていると、カフェの入り口から怒鳴り声が聞こえてきた。

「ちょっと! なんで私が並ばなければいけないのよ」
「皆さん並んでお待ちですから、列の最後にお並びください」

「私、子爵の娘なんだけど」
「身分は関係ありません。貴族の方でも並んでいただいております」

「そんな事言っていいの。私はヒロインなのよ。少しは融通を利かせなさいよ!」

 え? ヒロイン!
 私と同じようにスカウトされた役者の人だろうか?

「そんなわけにはまいりません」
「私は光魔法に適性があるのよ。将来悪役令嬢を倒して王妃になるんだから」

 その悪役令嬢って私のことだろうか?
 台本だと、私がヒロインを虐めて、最後には王子から婚約破棄されてしまうが、別に、ヒロインから倒されるわけではないのだが……。

「たとえ、王妃様でも、並んでいただかないことにはご利用いただけません」
「ほんと、頭が堅いわね!」
「お嬢様、皆さんから注目されています……」

 少女に付いていたメイドが宥めに入った。もっと早く止めればいいのに。
「ララエル……。もういいわ!」

 少女はこちらを睨みつけると、怒りながら帰っていった。
 ララエルと呼ばれたメイドはこちらに頭を下げてから少女の後を追っていた。

 しかし、あの、ピンクゴールドの髪といい、光属性の魔法が使えると言っていたことといい、台本に書かれたヒロインの特徴に合致する。
 あの子がヒロインだとすると、これからしばらくは大変だろうな……。

 台本によると、ヒロインは元々貧しい平民の生まれだったが、光魔法が使えることから、子爵家に養子に出された。
 だが、そこでの生活は楽なものではなかった。
 娘として引き取られたが、事実上、小間使い。
 学園に入るまで、毎日こき使われることになる。

 あれ? でも、今の様子では、そんな感じじゃなかったわね?
 お付と思われるメイドも一緒だったし、人違いかしら?

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