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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
51. 祖父母
しおりを挟む 屋敷に戻るとお祖父様とお祖母様が出迎えてくれた。
「お帰り、マリー」
「お帰りなさい、マリーちゃん」
「ただいま帰りました」
「ロベルトもご苦労だった、許可は取れたか?」
「はい、大丈夫でしたよ。二人でロバートの顔を見てきてください」
「そう、許可が取れたのね。よかったわ」
「お父様、許可とは何のこと? ロバートの顔を見ると言っているのだから、イングラスにある屋敷に行くのでしょうが、なぜそれに許可がいるの?」
「うーむ。何と説明すればいいかな……」
「マリーは賢そうだし、事実をそのまま伝えればいいだろ」
「マリーちゃん、ローレンスと私は王都から外に行くのに、国王陛下の許可がいるのよ」
ローレンスとはお祖父様のことだ。ちなみにお祖母様はクレアという名前だ。
「国王陛下のですか……」
「国王陛下の命令で、王都の屋敷を空にしないように言われているんだ」
三人の顔を見渡すと、三人とも浮かない顔をしている。
王都の屋敷を空にしないようにというのは、単に、緊急時に連絡がつかないと困るということではないのだろう。
この世界、携帯電話はないが、固定電話はあるし無線機もある。
つまりは、人質としてお祖父様とお祖母様は王都に縛り付けられているということだ。
今回、許可が出たのも、代わりにお父様がここに残るからだろう。もしかすると、私もその人質の内に入っているのかもしれない。
王宮に行った時には友好的に思えたが、裏ではそうでもないのだろうか。
お祖父様の時代には二国間で激しい戦争をしていたのだ。
歴史的に見れば、イングラスはフラスコット王国に占領されて、併合されたようなものだ。
でも、まあ、お母様はこちらからイングラスに来ているのだ、そこまでギスギスした関係ではないのだろう。
お互い人質を出し合って、友好関係を維持しているともいえるが。
「そうですか、ではお祖父様とお祖母様は久しぶりの里帰りでもあるのですね。どうぞ、ゆっくりしてきてください」
「マリーは私たちと一緒に帰れないのか?」
帰らないでなく、帰れないということは、やはり私も人質という認識なのだろう。
「マリーはまだ、こちらでやらなければならないことがあります」
「そうなのか……」
お祖父様たちが大変申し訳なさそうにこちらを見てくる。私としてはそれほど気にしてもらうこともないのだが……。
「まだ、王都の見学もしていませんし、王宮にもまた行ってみたいですわ」
「そうか、王宮にな……。王子たちとは仲良くできたか?」
「はい、特にトワとは友達になりましたわ」
「そう、それはよかったわね。王子二人とはどうだったの?」
「そうですね……。そこそこ、仲良くできましたわ」
「そこそこなのね。次に行った時にはもっと仲良くなれるといいわね」
「別に仲良くせずに、もう会わなくてもいいだろう」
「ローレンスったら……。そうもいっていられないでしょ」
これは、二人は私と王子の婚約話があるのを知っていて、お祖父様は反対、お祖母様は王様からの勧めでは断れないからといった感じだ。
お祖父様に強く反対されて、王子と婚約できないのは上手くない。
ここは、婚約に前向きであると伝えておこう。
「王子との婚約でしたら、私はやぶさかではありませんわ」
「そうなのか……」
「まあ、それはよかったわ」
「と、いうか、もう、その話しが出たのか?」
「国王陛下からは、私に内々に、マリーには帰りの馬車で私が教えました」
「ロベルトから話したのか。まあ、本人が乗り気ならばよいが……」
「お祖父様、心配してくれて、ありがとう」
私は子供っぽくお礼を述べてみた。
「マリーは本当に可愛いな。困ったことがあれば何でも相談するんだぞ。必ず助けになってやるからな」
「ローレンスだけでなく私もついているからね」
「お祖父様、お祖母様、二人とも、ありがとう」
何かあった時に信頼できる協力者はかけがえのないものだ、身内とはいえ、本当にありがたい。
翌日、お祖父様とお祖母様の二人は、イングラスに向かったのだった。
「お帰り、マリー」
「お帰りなさい、マリーちゃん」
「ただいま帰りました」
「ロベルトもご苦労だった、許可は取れたか?」
「はい、大丈夫でしたよ。二人でロバートの顔を見てきてください」
「そう、許可が取れたのね。よかったわ」
「お父様、許可とは何のこと? ロバートの顔を見ると言っているのだから、イングラスにある屋敷に行くのでしょうが、なぜそれに許可がいるの?」
「うーむ。何と説明すればいいかな……」
「マリーは賢そうだし、事実をそのまま伝えればいいだろ」
「マリーちゃん、ローレンスと私は王都から外に行くのに、国王陛下の許可がいるのよ」
ローレンスとはお祖父様のことだ。ちなみにお祖母様はクレアという名前だ。
「国王陛下のですか……」
「国王陛下の命令で、王都の屋敷を空にしないように言われているんだ」
三人の顔を見渡すと、三人とも浮かない顔をしている。
王都の屋敷を空にしないようにというのは、単に、緊急時に連絡がつかないと困るということではないのだろう。
この世界、携帯電話はないが、固定電話はあるし無線機もある。
つまりは、人質としてお祖父様とお祖母様は王都に縛り付けられているということだ。
今回、許可が出たのも、代わりにお父様がここに残るからだろう。もしかすると、私もその人質の内に入っているのかもしれない。
王宮に行った時には友好的に思えたが、裏ではそうでもないのだろうか。
お祖父様の時代には二国間で激しい戦争をしていたのだ。
歴史的に見れば、イングラスはフラスコット王国に占領されて、併合されたようなものだ。
でも、まあ、お母様はこちらからイングラスに来ているのだ、そこまでギスギスした関係ではないのだろう。
お互い人質を出し合って、友好関係を維持しているともいえるが。
「そうですか、ではお祖父様とお祖母様は久しぶりの里帰りでもあるのですね。どうぞ、ゆっくりしてきてください」
「マリーは私たちと一緒に帰れないのか?」
帰らないでなく、帰れないということは、やはり私も人質という認識なのだろう。
「マリーはまだ、こちらでやらなければならないことがあります」
「そうなのか……」
お祖父様たちが大変申し訳なさそうにこちらを見てくる。私としてはそれほど気にしてもらうこともないのだが……。
「まだ、王都の見学もしていませんし、王宮にもまた行ってみたいですわ」
「そうか、王宮にな……。王子たちとは仲良くできたか?」
「はい、特にトワとは友達になりましたわ」
「そう、それはよかったわね。王子二人とはどうだったの?」
「そうですね……。そこそこ、仲良くできましたわ」
「そこそこなのね。次に行った時にはもっと仲良くなれるといいわね」
「別に仲良くせずに、もう会わなくてもいいだろう」
「ローレンスったら……。そうもいっていられないでしょ」
これは、二人は私と王子の婚約話があるのを知っていて、お祖父様は反対、お祖母様は王様からの勧めでは断れないからといった感じだ。
お祖父様に強く反対されて、王子と婚約できないのは上手くない。
ここは、婚約に前向きであると伝えておこう。
「王子との婚約でしたら、私はやぶさかではありませんわ」
「そうなのか……」
「まあ、それはよかったわ」
「と、いうか、もう、その話しが出たのか?」
「国王陛下からは、私に内々に、マリーには帰りの馬車で私が教えました」
「ロベルトから話したのか。まあ、本人が乗り気ならばよいが……」
「お祖父様、心配してくれて、ありがとう」
私は子供っぽくお礼を述べてみた。
「マリーは本当に可愛いな。困ったことがあれば何でも相談するんだぞ。必ず助けになってやるからな」
「ローレンスだけでなく私もついているからね」
「お祖父様、お祖母様、二人とも、ありがとう」
何かあった時に信頼できる協力者はかけがえのないものだ、身内とはいえ、本当にありがたい。
翌日、お祖父様とお祖母様の二人は、イングラスに向かったのだった。
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