52 / 118
第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
51. 祖父母
しおりを挟む
屋敷に戻るとお祖父様とお祖母様が出迎えてくれた。
「お帰り、マリー」
「お帰りなさい、マリーちゃん」
「ただいま帰りました」
「ロベルトもご苦労だった、許可は取れたか?」
「はい、大丈夫でしたよ。二人でロバートの顔を見てきてください」
「そう、許可が取れたのね。よかったわ」
「お父様、許可とは何のこと? ロバートの顔を見ると言っているのだから、イングラスにある屋敷に行くのでしょうが、なぜそれに許可がいるの?」
「うーむ。何と説明すればいいかな……」
「マリーは賢そうだし、事実をそのまま伝えればいいだろ」
「マリーちゃん、ローレンスと私は王都から外に行くのに、国王陛下の許可がいるのよ」
ローレンスとはお祖父様のことだ。ちなみにお祖母様はクレアという名前だ。
「国王陛下のですか……」
「国王陛下の命令で、王都の屋敷を空にしないように言われているんだ」
三人の顔を見渡すと、三人とも浮かない顔をしている。
王都の屋敷を空にしないようにというのは、単に、緊急時に連絡がつかないと困るということではないのだろう。
この世界、携帯電話はないが、固定電話はあるし無線機もある。
つまりは、人質としてお祖父様とお祖母様は王都に縛り付けられているということだ。
今回、許可が出たのも、代わりにお父様がここに残るからだろう。もしかすると、私もその人質の内に入っているのかもしれない。
王宮に行った時には友好的に思えたが、裏ではそうでもないのだろうか。
お祖父様の時代には二国間で激しい戦争をしていたのだ。
歴史的に見れば、イングラスはフラスコット王国に占領されて、併合されたようなものだ。
でも、まあ、お母様はこちらからイングラスに来ているのだ、そこまでギスギスした関係ではないのだろう。
お互い人質を出し合って、友好関係を維持しているともいえるが。
「そうですか、ではお祖父様とお祖母様は久しぶりの里帰りでもあるのですね。どうぞ、ゆっくりしてきてください」
「マリーは私たちと一緒に帰れないのか?」
帰らないでなく、帰れないということは、やはり私も人質という認識なのだろう。
「マリーはまだ、こちらでやらなければならないことがあります」
「そうなのか……」
お祖父様たちが大変申し訳なさそうにこちらを見てくる。私としてはそれほど気にしてもらうこともないのだが……。
「まだ、王都の見学もしていませんし、王宮にもまた行ってみたいですわ」
「そうか、王宮にな……。王子たちとは仲良くできたか?」
「はい、特にトワとは友達になりましたわ」
「そう、それはよかったわね。王子二人とはどうだったの?」
「そうですね……。そこそこ、仲良くできましたわ」
「そこそこなのね。次に行った時にはもっと仲良くなれるといいわね」
「別に仲良くせずに、もう会わなくてもいいだろう」
「ローレンスったら……。そうもいっていられないでしょ」
これは、二人は私と王子の婚約話があるのを知っていて、お祖父様は反対、お祖母様は王様からの勧めでは断れないからといった感じだ。
お祖父様に強く反対されて、王子と婚約できないのは上手くない。
ここは、婚約に前向きであると伝えておこう。
「王子との婚約でしたら、私はやぶさかではありませんわ」
「そうなのか……」
「まあ、それはよかったわ」
「と、いうか、もう、その話しが出たのか?」
「国王陛下からは、私に内々に、マリーには帰りの馬車で私が教えました」
「ロベルトから話したのか。まあ、本人が乗り気ならばよいが……」
「お祖父様、心配してくれて、ありがとう」
私は子供っぽくお礼を述べてみた。
「マリーは本当に可愛いな。困ったことがあれば何でも相談するんだぞ。必ず助けになってやるからな」
「ローレンスだけでなく私もついているからね」
「お祖父様、お祖母様、二人とも、ありがとう」
何かあった時に信頼できる協力者はかけがえのないものだ、身内とはいえ、本当にありがたい。
翌日、お祖父様とお祖母様の二人は、イングラスに向かったのだった。
「お帰り、マリー」
「お帰りなさい、マリーちゃん」
「ただいま帰りました」
「ロベルトもご苦労だった、許可は取れたか?」
「はい、大丈夫でしたよ。二人でロバートの顔を見てきてください」
「そう、許可が取れたのね。よかったわ」
「お父様、許可とは何のこと? ロバートの顔を見ると言っているのだから、イングラスにある屋敷に行くのでしょうが、なぜそれに許可がいるの?」
「うーむ。何と説明すればいいかな……」
「マリーは賢そうだし、事実をそのまま伝えればいいだろ」
「マリーちゃん、ローレンスと私は王都から外に行くのに、国王陛下の許可がいるのよ」
ローレンスとはお祖父様のことだ。ちなみにお祖母様はクレアという名前だ。
「国王陛下のですか……」
「国王陛下の命令で、王都の屋敷を空にしないように言われているんだ」
三人の顔を見渡すと、三人とも浮かない顔をしている。
王都の屋敷を空にしないようにというのは、単に、緊急時に連絡がつかないと困るということではないのだろう。
この世界、携帯電話はないが、固定電話はあるし無線機もある。
つまりは、人質としてお祖父様とお祖母様は王都に縛り付けられているということだ。
今回、許可が出たのも、代わりにお父様がここに残るからだろう。もしかすると、私もその人質の内に入っているのかもしれない。
王宮に行った時には友好的に思えたが、裏ではそうでもないのだろうか。
お祖父様の時代には二国間で激しい戦争をしていたのだ。
歴史的に見れば、イングラスはフラスコット王国に占領されて、併合されたようなものだ。
でも、まあ、お母様はこちらからイングラスに来ているのだ、そこまでギスギスした関係ではないのだろう。
お互い人質を出し合って、友好関係を維持しているともいえるが。
「そうですか、ではお祖父様とお祖母様は久しぶりの里帰りでもあるのですね。どうぞ、ゆっくりしてきてください」
「マリーは私たちと一緒に帰れないのか?」
帰らないでなく、帰れないということは、やはり私も人質という認識なのだろう。
「マリーはまだ、こちらでやらなければならないことがあります」
「そうなのか……」
お祖父様たちが大変申し訳なさそうにこちらを見てくる。私としてはそれほど気にしてもらうこともないのだが……。
「まだ、王都の見学もしていませんし、王宮にもまた行ってみたいですわ」
「そうか、王宮にな……。王子たちとは仲良くできたか?」
「はい、特にトワとは友達になりましたわ」
「そう、それはよかったわね。王子二人とはどうだったの?」
「そうですね……。そこそこ、仲良くできましたわ」
「そこそこなのね。次に行った時にはもっと仲良くなれるといいわね」
「別に仲良くせずに、もう会わなくてもいいだろう」
「ローレンスったら……。そうもいっていられないでしょ」
これは、二人は私と王子の婚約話があるのを知っていて、お祖父様は反対、お祖母様は王様からの勧めでは断れないからといった感じだ。
お祖父様に強く反対されて、王子と婚約できないのは上手くない。
ここは、婚約に前向きであると伝えておこう。
「王子との婚約でしたら、私はやぶさかではありませんわ」
「そうなのか……」
「まあ、それはよかったわ」
「と、いうか、もう、その話しが出たのか?」
「国王陛下からは、私に内々に、マリーには帰りの馬車で私が教えました」
「ロベルトから話したのか。まあ、本人が乗り気ならばよいが……」
「お祖父様、心配してくれて、ありがとう」
私は子供っぽくお礼を述べてみた。
「マリーは本当に可愛いな。困ったことがあれば何でも相談するんだぞ。必ず助けになってやるからな」
「ローレンスだけでなく私もついているからね」
「お祖父様、お祖母様、二人とも、ありがとう」
何かあった時に信頼できる協力者はかけがえのないものだ、身内とはいえ、本当にありがたい。
翌日、お祖父様とお祖母様の二人は、イングラスに向かったのだった。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの
つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。
隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる