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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
50. 帰り道
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王宮からの帰りの馬車の中、私は疑問に思っていたことをお父様に尋ねた。
「お父様、ニコラス王子とハインリッヒ王子ではどちらが王位継承権が高いのですか?」
「マリーはどうしてそんなことを気にするのだ?」
「深い意味はないのですが、周りがギクシャクしていたので、少し気になって……」
「そうか、周りがな……」
お父様は少し考えた後に、再び口を開いた。
「マリーなら、どちらが国王にふさわしいと思う?」
「私ですか? そうですね……。国王になるには、ニコラスは頼りないですし、ハインリッヒは乱暴者すぎます。現時点ではトワが一番だと思いますが」
「トワ王女か。成る程。だが残念ながらこの国では女王は認められていないのだ」
「そのようですね」
女性でも爵位は持てるが、王女は王位には就けない。ただ、王女の子供が男の子なら、その子は王位に就く可能性が出てくる。
お母様が王女だったため、正に、弟のロバートがそうだ。
「そのため王子の二人から決めなければならないわけだが、はっきり言って、国王陛下も王太子殿下も決めかねているようだ」
「つまり、王子二人の序列が決まってないのですか?」
「一応、生まれたのが早いニコラス王子が第一王子、ハインリッヒ王子が第二王子と呼ばれているが、王位継承権は、今の時点では同列だ」
「同列なのですか……。周りがざわつくわけですね」
「王位継承権はともかくとして、マリーはどちらの王子が好みだ」
「好みですか? それは私がどちらかの王子と婚約するということでしょうか?」
「うむ。まだ、内々であるが、国王陛下から王子のどちらかとどうかと話があった」
「そうですか……」
台本によると、学園に入学する時点で、私は王子の婚約者になっているから、これは既定路線なのだろう。
問題は、どちらの王子か、ということだ。
台本には、王子は一人しか出てこない。
ここで私が選んだ王子で配役が決まってしまうのだろうか?
その場合、選ばれなかった王子はどうなるのだろう?
「まあ、今すぐ返事をする必要はない。ただ、心算はしておいてくれ」
「また、お会いする機会がありますか?」
「希望があるなら、こちらにいる間、また、王宮に行っても構わないが」
「本当ですか!」
思わず声が大きくなってしまった。
今日は時間がなかったが、闇魔法の魔導書を探すため、王宮の書庫に行きたかったのだ。
台本に闇魔法を使う場面が出てきたので、闇魔法にどんなものがあるかわかったが、それだけで全ての闇魔法を使えるようになるわけではない。
自分なりに試行錯誤して使えるようになったのは、今のところ気配を消す魔法だけだ。
身体強化魔法では、魔力を身体の中を巡らせていたが、気配を消す魔法は、闇の魔力で体の表面を覆うようにすることにより、人から見つかり難くいするというものだ。
現段階では、完璧に姿を消してしまうことはできない。本当なら闇に潜ることもできる筈なのだが、自分なりの試行錯誤では限度がある。
やはり、きちんとした魔導書を一度読んでおきたい。
「そんなに王子たちと会いたいのか……。まあ、同世代の友達はいなかったからな、仕方がないか」
いや、王子たちと会いたいわけではないのだが、それは言わないでおく。
それに、学園入学までに王子のどちらかとは婚約しなければならないのだが、それはこのまま放っておいても自然に話が進みそうな雰囲気だ。
「時間を作って王宮に行くようにしよう」
「ありがとうございます。嬉しいですわ」
私は、王子たちに会えることではなく、魔導書を探す機会をあたえられたことにお礼を述べるのだった。
「お父様、ニコラス王子とハインリッヒ王子ではどちらが王位継承権が高いのですか?」
「マリーはどうしてそんなことを気にするのだ?」
「深い意味はないのですが、周りがギクシャクしていたので、少し気になって……」
「そうか、周りがな……」
お父様は少し考えた後に、再び口を開いた。
「マリーなら、どちらが国王にふさわしいと思う?」
「私ですか? そうですね……。国王になるには、ニコラスは頼りないですし、ハインリッヒは乱暴者すぎます。現時点ではトワが一番だと思いますが」
「トワ王女か。成る程。だが残念ながらこの国では女王は認められていないのだ」
「そのようですね」
女性でも爵位は持てるが、王女は王位には就けない。ただ、王女の子供が男の子なら、その子は王位に就く可能性が出てくる。
お母様が王女だったため、正に、弟のロバートがそうだ。
「そのため王子の二人から決めなければならないわけだが、はっきり言って、国王陛下も王太子殿下も決めかねているようだ」
「つまり、王子二人の序列が決まってないのですか?」
「一応、生まれたのが早いニコラス王子が第一王子、ハインリッヒ王子が第二王子と呼ばれているが、王位継承権は、今の時点では同列だ」
「同列なのですか……。周りがざわつくわけですね」
「王位継承権はともかくとして、マリーはどちらの王子が好みだ」
「好みですか? それは私がどちらかの王子と婚約するということでしょうか?」
「うむ。まだ、内々であるが、国王陛下から王子のどちらかとどうかと話があった」
「そうですか……」
台本によると、学園に入学する時点で、私は王子の婚約者になっているから、これは既定路線なのだろう。
問題は、どちらの王子か、ということだ。
台本には、王子は一人しか出てこない。
ここで私が選んだ王子で配役が決まってしまうのだろうか?
その場合、選ばれなかった王子はどうなるのだろう?
「まあ、今すぐ返事をする必要はない。ただ、心算はしておいてくれ」
「また、お会いする機会がありますか?」
「希望があるなら、こちらにいる間、また、王宮に行っても構わないが」
「本当ですか!」
思わず声が大きくなってしまった。
今日は時間がなかったが、闇魔法の魔導書を探すため、王宮の書庫に行きたかったのだ。
台本に闇魔法を使う場面が出てきたので、闇魔法にどんなものがあるかわかったが、それだけで全ての闇魔法を使えるようになるわけではない。
自分なりに試行錯誤して使えるようになったのは、今のところ気配を消す魔法だけだ。
身体強化魔法では、魔力を身体の中を巡らせていたが、気配を消す魔法は、闇の魔力で体の表面を覆うようにすることにより、人から見つかり難くいするというものだ。
現段階では、完璧に姿を消してしまうことはできない。本当なら闇に潜ることもできる筈なのだが、自分なりの試行錯誤では限度がある。
やはり、きちんとした魔導書を一度読んでおきたい。
「そんなに王子たちと会いたいのか……。まあ、同世代の友達はいなかったからな、仕方がないか」
いや、王子たちと会いたいわけではないのだが、それは言わないでおく。
それに、学園入学までに王子のどちらかとは婚約しなければならないのだが、それはこのまま放っておいても自然に話が進みそうな雰囲気だ。
「時間を作って王宮に行くようにしよう」
「ありがとうございます。嬉しいですわ」
私は、王子たちに会えることではなく、魔導書を探す機会をあたえられたことにお礼を述べるのだった。
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