街角で悪役令嬢役にスカウトされた件 【OKしたけど、異世界でサスペンスだとは聞いてない!】

なつきコイン

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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

49. 散策

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 お菓子とジュースでお腹が膨れたところで、庭園の散策をすることになった。

「こっちです、今の時期だと向こうにある新しく改良された薔薇が見頃なんです」
 先程までの、引っ込み思案な様子が嘘のように、ニコラスが庭を案内してくれる。

「ニコラスは相変わらず花のことに詳しいわね」
「ふん。男のくせに」
 トアは感心しているようだが、ハインリッヒはニコラスを馬鹿にしているようだ。

「あら、男性だって、花が好きな方はたくさんいるわよ」
「男だったら剣を持って戦うべきだ」
 私が、ニコラスを庇う発言をすると、ハインリッヒは食ってかかってきた。
 男だから戦わなければならないという考えはどうかと思うが、何かを守るため戦うことが必要になることはあるだろう。

「ハインリッヒは剣を習っているの?」
「……いや、まだだが。これから習う」
 ハインリッヒは気まずそうにそっぽを向く。今まで強気で話していたのに、まだまだ、子供だ、可愛いところがある。ちょっと悪戯心で揶揄いたくなってしまう。

「そうなの。剣が使えるようになったら私のことも守ってね」
「なんでオレがお前のことを守らなければならない!」
 怒りながらも、顔を赤くして照れているようだ。

「えー。剣は人を守るためにあるのよ。なら、私を守ってくれてもいいじゃない」
「ふん! なにを言っている。剣は敵を倒すためにあるんだからな」
 まあ、このくらいの歳の男の子ならそんな感じか。悪を倒す正義の味方に憧れても、ヒロインを助けるところまで辿り着くのはもう少し先になるか。

「そんな心構えじゃ騎士にはなれないわよ」
「オレがなるのは騎士ではなく、王様だからな、そんなのは知らん」

「王様になるなら尚更、国民全員を守らなくちゃ駄目じゃない」
「そうなのか?」

 そんなことを言われたことがなかったのだろう、ハインリッヒは目を見開いてこちらを見ていた。
 私は、そんなことも知らないの、といった感じにドヤ顔で「そうよ。当たり前でしょ」とハインリッヒに答えてやった。
 悔しそうな顔をするかと思ったら、以外にも「そうなのか」と納得して受け入れたようだ。

「マリー、何しているの置いていくわよ」
「あ、ごめん」

 ハインリッヒとの話に夢中になり、前を歩く二人から遅れていたようだ。
 急いで前の二人に追いつく。

 この時、私たちの後ろからついてきていた、ロザリーとイザベラの笑顔が引き攣っているのが見てとれた。ハインリッヒの「王様になる」発言のせいだろう。
 ノアは面白そうに笑顔を浮かべていた。

 王位継承権はニコラスとハインリッヒで、どちらが上なのだろう? 後で、お父様に確認する必要がありそうだ。

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