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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
42. 取り巻き
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ポートハンドを出港した翌日の昼過ぎには、大陸側のモダンピークに到着した。ここからはまた列車になる。
船から降りるときに運よくカナリとモリス刑事と出くわした。
「カナリとモリス刑事はどこのホテルに泊まるの?」
「俺たちはこのまま、モダンピークに泊まらずに、夕方発の列車王都に向かう」
夕方発の列車の場合、王都に到着するのは、翌翌日の早朝になる。車内で二泊しなければならない。
朝出発する便は、到着は翌日の夕方だ。車内は一泊で済む。
どちらにせよ、モダンピークから王都まで列車で三十時間以上かかることになるのは変わらないが、揺れる車内泊か、ホテルのベッドに寝られるかは、寝心地の面で大きく変わってくる。
急ぎでない私たちは、当然、モダンピークのホテルに一泊してから翌朝の出発だ。
もっとも、闇の強化魔法でどこでも快眠できる私には関係ないことだが。
「私たちは明日の便なの、カナリ、それじゃあここでお別れね」
「マリー様、お話しできてうれしかったです。ありがとうございました」
カナリとはここでお別れである。ただ、カナリと私は同じ歳だ、十二歳になれば学園で再開することになるだろう。
だが、その前に確認しておきたいことがある。
今朝、思い出したカナリの名前は、台本に出てくる悪役令嬢の取り巻きAの名前だった。
台本には赤毛の少女とある。目の前のカナリとぴったりだ。
ただ、爵位は男爵でなく伯爵で、家名も違っていた。
そのため、台本のカナリと目の前のカナリが同一人物かははっきりしない。だが、台本にはカナリのもう一つの特徴が書かれていた。
「ところで、カナリは魔法で火を出せたりする?」
「魔法? 使ったことがないのでわかんない」
「魔法適正はあるの?」
「ん-ん?」
「教会で調べなかった?」
「あー。それなら火かな?」
「そう。火の適性があるのね」
台本に登場するカナリは火魔法を使っていた。これは、取り巻きAの可能性が高くなった。
それなら、今から親密度を上げておいた方がいいだろう。
「カナリ、何かあれば私のところを訪ねてきなさい。私とあなたは友達よ。力になるわ」
「ともだち……。わかった」
「もちろん、用事がなくても遊びに来てくれてもいいけど、今回、王都には二十日くらいしかいないから、機会があるかわからないわね」
「そうなの……。残念」
残念に思ってくれるということは、仲良くしてくれる気が有るようだ。
「モリス刑事、ちゃんと送り届けてね」
「わかってるって」
この時は、学園に入学したらまた会おうと、手を振りカナリに別れを告げたのだが、またすぐに二人に会うことになるとは思ってもいなかった。
船から降りるときに運よくカナリとモリス刑事と出くわした。
「カナリとモリス刑事はどこのホテルに泊まるの?」
「俺たちはこのまま、モダンピークに泊まらずに、夕方発の列車王都に向かう」
夕方発の列車の場合、王都に到着するのは、翌翌日の早朝になる。車内で二泊しなければならない。
朝出発する便は、到着は翌日の夕方だ。車内は一泊で済む。
どちらにせよ、モダンピークから王都まで列車で三十時間以上かかることになるのは変わらないが、揺れる車内泊か、ホテルのベッドに寝られるかは、寝心地の面で大きく変わってくる。
急ぎでない私たちは、当然、モダンピークのホテルに一泊してから翌朝の出発だ。
もっとも、闇の強化魔法でどこでも快眠できる私には関係ないことだが。
「私たちは明日の便なの、カナリ、それじゃあここでお別れね」
「マリー様、お話しできてうれしかったです。ありがとうございました」
カナリとはここでお別れである。ただ、カナリと私は同じ歳だ、十二歳になれば学園で再開することになるだろう。
だが、その前に確認しておきたいことがある。
今朝、思い出したカナリの名前は、台本に出てくる悪役令嬢の取り巻きAの名前だった。
台本には赤毛の少女とある。目の前のカナリとぴったりだ。
ただ、爵位は男爵でなく伯爵で、家名も違っていた。
そのため、台本のカナリと目の前のカナリが同一人物かははっきりしない。だが、台本にはカナリのもう一つの特徴が書かれていた。
「ところで、カナリは魔法で火を出せたりする?」
「魔法? 使ったことがないのでわかんない」
「魔法適正はあるの?」
「ん-ん?」
「教会で調べなかった?」
「あー。それなら火かな?」
「そう。火の適性があるのね」
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それなら、今から親密度を上げておいた方がいいだろう。
「カナリ、何かあれば私のところを訪ねてきなさい。私とあなたは友達よ。力になるわ」
「ともだち……。わかった」
「もちろん、用事がなくても遊びに来てくれてもいいけど、今回、王都には二十日くらいしかいないから、機会があるかわからないわね」
「そうなの……。残念」
残念に思ってくれるということは、仲良くしてくれる気が有るようだ。
「モリス刑事、ちゃんと送り届けてね」
「わかってるって」
この時は、学園に入学したらまた会おうと、手を振りカナリに別れを告げたのだが、またすぐに二人に会うことになるとは思ってもいなかった。
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