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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
37. 少女との出会い
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王都に向かうため、列車で港町のポートハンドに到着した私たちは、そこから大型客船に乗り換えた。
大陸側の港町モダンピークまではおよそ一日半かかる。
「お嬢様、何か飲み物を用意いたしましょうか?」
船室に入り、落ち着いたところでメイドのサラが尋ねてきた。
「それよりも船の中を見学したいわ。いいでしょ、お父様」
「そうだな、サラと一緒にいくならいいだろう」
「わーい。ありがとう。それじゃあサラ行くわよ」
私はサラを引き連れて船内を見学することにした。
大型客船など、日本にいた時も乗ったことがなかったから、興味津々である。
もっとも、私たちが使っているのは、特別室の中でも最上位の部屋なので応接室と変わらないが、これが標準と考えてはいけないようだ。
一般向けの一等船室はベッドがあるだけの狭い個室だし、船の下層には個室になっていない、ただの広間の二等船室もある。
公爵家だからこそ最上級の特別室が使えるわけで、悪役令嬢役とはいえ、役得である。スカウトしてくれたプロデューサーには感謝しよう。
ちなみに、王家は王家専用船を持っているそうだ。
私とサラは、船室に続き食堂や娯楽室などを見学した後、デッキに出てきた。
するとそこで、赤髪のショートヘアーの少女と、長身の胡散臭そうな中年男性が言い争っている場面に出くわした。
「これはあたしのよ、触らないで!」
「どうせ盗品だろう、さっさとこっちに渡せ!」
どうやら少女が持っているペンダントでもめているようだ。
確かに、少女の首にしているペンダントは、宝石をあしらった豪華な物で、薄汚れた服装の、私と同じくらいの歳の少女には不釣り合いな物だった。
だが、だからといって無理矢理に奪い取ろうとするのはどうだろう?
「ちょっと、そこのあなた。止めなさい」
「あー! 何だ、お前?」
私が声をかけると、二人は一斉にこちらを向き、男の方が不満そうな声をあげた。
「私はマリー ロートブルクですが、何をしているのです」
「チッ。ロートブルクということは公爵令嬢か」
「公爵令嬢さま! ははー」
男は舌打ちをし、少女はその場にひれ伏した。
なんだ、この極端な反応は? これが普通の反応なのか?
今まで、ほとんど屋敷から出たことがなかった私には、その反応が普通なのか判断ができなかった。
「そこのあなた、立ちなさい」
「はい!」
少女は素早く立ち上がると直立不動の姿勢をとった。
何をそこまで畏まっているのだろう。まあ、ひれ伏しているよりはいいか。
男の方は、いかにも不満そうな態度だ。
「それで、何をもめていたの」
「この人が、あたしのペンダントを取ろうとしたの」
「俺は盗品かも知れないから確認しようとしただけだ」
「そんなこと言って、あなたがこの少女からペンダントを盗もうとしただけじゃないの」
「俺はこう見えても刑事だ。そんなことするわけないだろう」
「本当なの?」
「ほらこのとおり」
私が疑うと、男は懐から身分証を取り出した。
「サラ、本物なの?」
「そのようですね」
「お嬢様は疑い深いな。本庁刑事課のジョウ モリスだ」
いかにも怪しそうな男は、まさかの刑事だった。
大陸側の港町モダンピークまではおよそ一日半かかる。
「お嬢様、何か飲み物を用意いたしましょうか?」
船室に入り、落ち着いたところでメイドのサラが尋ねてきた。
「それよりも船の中を見学したいわ。いいでしょ、お父様」
「そうだな、サラと一緒にいくならいいだろう」
「わーい。ありがとう。それじゃあサラ行くわよ」
私はサラを引き連れて船内を見学することにした。
大型客船など、日本にいた時も乗ったことがなかったから、興味津々である。
もっとも、私たちが使っているのは、特別室の中でも最上位の部屋なので応接室と変わらないが、これが標準と考えてはいけないようだ。
一般向けの一等船室はベッドがあるだけの狭い個室だし、船の下層には個室になっていない、ただの広間の二等船室もある。
公爵家だからこそ最上級の特別室が使えるわけで、悪役令嬢役とはいえ、役得である。スカウトしてくれたプロデューサーには感謝しよう。
ちなみに、王家は王家専用船を持っているそうだ。
私とサラは、船室に続き食堂や娯楽室などを見学した後、デッキに出てきた。
するとそこで、赤髪のショートヘアーの少女と、長身の胡散臭そうな中年男性が言い争っている場面に出くわした。
「これはあたしのよ、触らないで!」
「どうせ盗品だろう、さっさとこっちに渡せ!」
どうやら少女が持っているペンダントでもめているようだ。
確かに、少女の首にしているペンダントは、宝石をあしらった豪華な物で、薄汚れた服装の、私と同じくらいの歳の少女には不釣り合いな物だった。
だが、だからといって無理矢理に奪い取ろうとするのはどうだろう?
「ちょっと、そこのあなた。止めなさい」
「あー! 何だ、お前?」
私が声をかけると、二人は一斉にこちらを向き、男の方が不満そうな声をあげた。
「私はマリー ロートブルクですが、何をしているのです」
「チッ。ロートブルクということは公爵令嬢か」
「公爵令嬢さま! ははー」
男は舌打ちをし、少女はその場にひれ伏した。
なんだ、この極端な反応は? これが普通の反応なのか?
今まで、ほとんど屋敷から出たことがなかった私には、その反応が普通なのか判断ができなかった。
「そこのあなた、立ちなさい」
「はい!」
少女は素早く立ち上がると直立不動の姿勢をとった。
何をそこまで畏まっているのだろう。まあ、ひれ伏しているよりはいいか。
男の方は、いかにも不満そうな態度だ。
「それで、何をもめていたの」
「この人が、あたしのペンダントを取ろうとしたの」
「俺は盗品かも知れないから確認しようとしただけだ」
「そんなこと言って、あなたがこの少女からペンダントを盗もうとしただけじゃないの」
「俺はこう見えても刑事だ。そんなことするわけないだろう」
「本当なの?」
「ほらこのとおり」
私が疑うと、男は懐から身分証を取り出した。
「サラ、本物なの?」
「そのようですね」
「お嬢様は疑い深いな。本庁刑事課のジョウ モリスだ」
いかにも怪しそうな男は、まさかの刑事だった。
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