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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
35. 王都行き
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「すみません、お父様、少し、ボーっとしていましたわ」
「大丈夫かい?」
「大丈夫ですわ。それでなんでしょう?」
「実は、後継者になるロバートが生まれたから、国王陛下の所に報告に上がらなければならないのだが、マリーも一緒に行かないかい?」
「私も、ですか?」
「マリーは、ランドレート大陸語も喋れるようになったし、ここらで、王都に行き、国王陛下や従兄弟の王子や王女と顔を合わせておいた方がいいと思うのだ」
「そうですか、国王陛下や従兄弟の王子や王女……。王子や王女が従兄弟ですの?」
「そうだぞ。リリヤは国王陛下の娘だからな。今の王太子とは兄妹になる。だから、王太子の子供たちとは従兄弟になるんだぞ」
え? てことは、お母様は、元王女様だったの!
知らなかったわ。そういえば前にそんなこと言ってたか。
ということは、私は国王陛下の孫で、国王陛下は私のお祖父様になる。
なんだか急に自分が偉くなった気分だ。
元々、公爵令嬢である時点で、十分に偉いのだが、今まで屋敷からほとんど出たこともなく、自覚がなかった。
「お母様たちも行かれるのですか?」
「いや、リリヤとロバートは留守番だ。ロバートはまだ生まれたばかりだし、リリヤもまだ体調が完全には回復していないからな」
「そうですか」
「別に行きたくなければ無理をする必要はないのだぞ」
本番の舞台では、私は王子の婚約者になっている。
いつの時点で婚約するかわからないが、早めに顔繋ぎをしておいた方がいいだろう。
「お父様、私、一緒の行きますわ」
「そうか、なら出発は明後日になるから準備をしておくように」
「何日くらい滞在することになるのですか?」
「往復を含めて一月ほどを予定している」
王都までは、片道五日のはずだから、二十日間向こうに滞在することになる。
結構長いな。
それだけあれば、王宮にあるかもしれない、闇の魔導書を探すこともできるかもしれない。
「わかりましたわ」
その日と翌日、二日かけて旅の準備をする。
といっても、実際にやるのはメイドの仕事だ。
出発の日は、朝食を取って、少し寛いでから、午前九時ごろ屋敷を出発する。
今回は、馬車でなく自動車だ。
馬車といえば、闇の身体強化魔法の実験台にされた、仔馬のノアールであるが、栗毛から黒鹿毛になってしまったが、その後もすくすく育っている。
今では完全に懐いていて、私の僕《しもべ》だ。
もう少ししたら、私を乗せてくれるのではと期待しているところだ。
ただ、私のことを舐めてこようとするので、それについては甚だいただけない。
さて、お父様と私だけでなく、メイドや執事や護衛が付くので、三台に分乗して、領都ランドンにある駅に向かう。
大人なら歩いて行ける距離だが、子供の私には少し遠い。それに、大量の荷物もある。
車から見た街並みは、ヨーロッパのそれのようだ。
こちらに来てから二年経つが、ほとんど外に出たことはないから、珍しくてきょろきょろしてしまう。
そのしぐさが子供っぽく年相応に見えるのか、お父様たちは微笑まし様子で私を見ていた。
「大丈夫かい?」
「大丈夫ですわ。それでなんでしょう?」
「実は、後継者になるロバートが生まれたから、国王陛下の所に報告に上がらなければならないのだが、マリーも一緒に行かないかい?」
「私も、ですか?」
「マリーは、ランドレート大陸語も喋れるようになったし、ここらで、王都に行き、国王陛下や従兄弟の王子や王女と顔を合わせておいた方がいいと思うのだ」
「そうですか、国王陛下や従兄弟の王子や王女……。王子や王女が従兄弟ですの?」
「そうだぞ。リリヤは国王陛下の娘だからな。今の王太子とは兄妹になる。だから、王太子の子供たちとは従兄弟になるんだぞ」
え? てことは、お母様は、元王女様だったの!
知らなかったわ。そういえば前にそんなこと言ってたか。
ということは、私は国王陛下の孫で、国王陛下は私のお祖父様になる。
なんだか急に自分が偉くなった気分だ。
元々、公爵令嬢である時点で、十分に偉いのだが、今まで屋敷からほとんど出たこともなく、自覚がなかった。
「お母様たちも行かれるのですか?」
「いや、リリヤとロバートは留守番だ。ロバートはまだ生まれたばかりだし、リリヤもまだ体調が完全には回復していないからな」
「そうですか」
「別に行きたくなければ無理をする必要はないのだぞ」
本番の舞台では、私は王子の婚約者になっている。
いつの時点で婚約するかわからないが、早めに顔繋ぎをしておいた方がいいだろう。
「お父様、私、一緒の行きますわ」
「そうか、なら出発は明後日になるから準備をしておくように」
「何日くらい滞在することになるのですか?」
「往復を含めて一月ほどを予定している」
王都までは、片道五日のはずだから、二十日間向こうに滞在することになる。
結構長いな。
それだけあれば、王宮にあるかもしれない、闇の魔導書を探すこともできるかもしれない。
「わかりましたわ」
その日と翌日、二日かけて旅の準備をする。
といっても、実際にやるのはメイドの仕事だ。
出発の日は、朝食を取って、少し寛いでから、午前九時ごろ屋敷を出発する。
今回は、馬車でなく自動車だ。
馬車といえば、闇の身体強化魔法の実験台にされた、仔馬のノアールであるが、栗毛から黒鹿毛になってしまったが、その後もすくすく育っている。
今では完全に懐いていて、私の僕《しもべ》だ。
もう少ししたら、私を乗せてくれるのではと期待しているところだ。
ただ、私のことを舐めてこようとするので、それについては甚だいただけない。
さて、お父様と私だけでなく、メイドや執事や護衛が付くので、三台に分乗して、領都ランドンにある駅に向かう。
大人なら歩いて行ける距離だが、子供の私には少し遠い。それに、大量の荷物もある。
車から見た街並みは、ヨーロッパのそれのようだ。
こちらに来てから二年経つが、ほとんど外に出たことはないから、珍しくてきょろきょろしてしまう。
そのしぐさが子供っぽく年相応に見えるのか、お父様たちは微笑まし様子で私を見ていた。
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