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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
25. 馬
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この世界、自動車はあるが、公爵邸には馬車も用意されていた。
そのため、屋敷の裏に厩舎があり、馬が飼われていた。
そんなわけで、闇魔法の実験台に馬を使おうと思って厩舎にやって来たのだが、馬が思いの外大きいので近づくのが躊躇われた。
よく考えれば、私はまだ、五歳児だ。身長もまだ小さい。
馬なんて、それこそ怪獣を見上げるようだ。
「お嬢様でねえですか。こんな所に来たら危ねえですよ」
厩務員が私に気づいて、慌ててやって来た。
「馬を見たかっただけですわ。ちょっと触れないかしら?」
「お嬢様の小さな手だと、咬みちぎられかねねえですよ」
え? 馬って咬むの! 危険じゃない。
私は、出しかけた手を、慌てて引っ込めた。
身体強化魔法を他人にかけるには、直接触らなければいけないとクロード先生が言っていた。
とてもではないが、怖くて触れそうもない。
ちょっと、馬を実験台に使うのは無理なようだ。
私は諦めて帰ることにした。
気落ちして、とぼとぼと歩いていると、厩務員がみかねて仕方がなさそうに声をかけてきた。
「そんなに馬に触りたかったですか。仕方がねえですね。お嬢様、こっちです」
厩務員は私を厩舎の奥に案内してくれた。
そこには、小さな仔馬が柵の中にいた。
小さいといっても、五歳児の私よりは大きいのだが、それでも、親馬に比べれば威圧感が全くない。
「この子なら生まれたばかりですから、噛まれても怪我まではしねえでしょう」
「仔馬でも咬みますの!」
「咬むというか、舐められて、吸い付かれるかもしれねえです」
「そのくらいなら、我慢しますわ」
私は恐る恐る、柵から手を伸ばし、仔馬の首のあたりを撫でてみる。
仔馬は、首を曲げて、私の腕を舐めてきた。
私は、咄嗟に腕を引っ込めたが、手を舐められてしまった。
「ゲッ! 本当に舐めてきましたわ」
「お嬢様、大丈夫ですかい?」
大丈夫か、大丈夫でないかと聞かれたら、大丈夫ではない。
咬まれなくても、舐められるだけで嫌だ。舌がザラザラしていて、舐められただけで痛い。まるで垢スリでもされてる感じだ。
それに、何より、よだれでべとべとだ。
「一応触ったし、もう、十分じゃないですかい?」
私の目的は、仔馬に触ることではない、身体強化魔法の実験をすることだ。
ここまで、きて、成果を得ずに引き下がるわけにはいかない。
そのため、屋敷の裏に厩舎があり、馬が飼われていた。
そんなわけで、闇魔法の実験台に馬を使おうと思って厩舎にやって来たのだが、馬が思いの外大きいので近づくのが躊躇われた。
よく考えれば、私はまだ、五歳児だ。身長もまだ小さい。
馬なんて、それこそ怪獣を見上げるようだ。
「お嬢様でねえですか。こんな所に来たら危ねえですよ」
厩務員が私に気づいて、慌ててやって来た。
「馬を見たかっただけですわ。ちょっと触れないかしら?」
「お嬢様の小さな手だと、咬みちぎられかねねえですよ」
え? 馬って咬むの! 危険じゃない。
私は、出しかけた手を、慌てて引っ込めた。
身体強化魔法を他人にかけるには、直接触らなければいけないとクロード先生が言っていた。
とてもではないが、怖くて触れそうもない。
ちょっと、馬を実験台に使うのは無理なようだ。
私は諦めて帰ることにした。
気落ちして、とぼとぼと歩いていると、厩務員がみかねて仕方がなさそうに声をかけてきた。
「そんなに馬に触りたかったですか。仕方がねえですね。お嬢様、こっちです」
厩務員は私を厩舎の奥に案内してくれた。
そこには、小さな仔馬が柵の中にいた。
小さいといっても、五歳児の私よりは大きいのだが、それでも、親馬に比べれば威圧感が全くない。
「この子なら生まれたばかりですから、噛まれても怪我まではしねえでしょう」
「仔馬でも咬みますの!」
「咬むというか、舐められて、吸い付かれるかもしれねえです」
「そのくらいなら、我慢しますわ」
私は恐る恐る、柵から手を伸ばし、仔馬の首のあたりを撫でてみる。
仔馬は、首を曲げて、私の腕を舐めてきた。
私は、咄嗟に腕を引っ込めたが、手を舐められてしまった。
「ゲッ! 本当に舐めてきましたわ」
「お嬢様、大丈夫ですかい?」
大丈夫か、大丈夫でないかと聞かれたら、大丈夫ではない。
咬まれなくても、舐められるだけで嫌だ。舌がザラザラしていて、舐められただけで痛い。まるで垢スリでもされてる感じだ。
それに、何より、よだれでべとべとだ。
「一応触ったし、もう、十分じゃないですかい?」
私の目的は、仔馬に触ることではない、身体強化魔法の実験をすることだ。
ここまで、きて、成果を得ずに引き下がるわけにはいかない。
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