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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件
13. メイドの嘘
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(メイド、サラ視点)
「はぁー」
「どうしたの、サラ? 珍しく、溜息なんかついて」
私が溜息をついていると、同じメイドのユキが心配そうに声をかけてくれました。
「ユキ、どうしよう。私、お嬢様に嘘をついてしまったわ」
「えっ! 嘘って、何を言ったの?!」
「お嬢様が大事にしている本を見せられて、何語で書かれているか聞かれたの」
「あの、ランドレート大陸語で書かれた本?」
「そう、それ」
「読めもしないだろうに、なぜ、あの本をお嬢様が大事にしているか不思議よね……」
そう、読める筈のない、文字ばかりの本なのに、お嬢様はその本をとても大切にしています。
「読めないからこそだと思うの」
「ああ、中身はイングラスの公爵令嬢を悪者に仕立てた物語ですものね」
そうなのです。まるでお嬢様が悪役令嬢だというように書かれているのです。
「そうなのよ。だからもし、お嬢様がその中身を知ったらショックをうけると思うの。それで、その本が何語で書かれているか聞かれたとき、咄嗟に『私はイングラス語しか読めません』って答えちゃったのよ」
「成る程、読んでほしいと言われても困っちゃうものね」
「そうなのよ」
「でも、どのみち家庭教師のクロード先生に教わることになるから、お嬢様が自分で読まれることになると思うわよ」
「それはそうなんだけど、ランドレート大陸語が読めるようになるには、まだ何年もかかるでしょ。もう少し大きくなれば、受けるショックも今より小さくなるだろうし、それに、その間にあの本のことは興味を無くしてしまうかも知れないわ」
「まあ、その可能性はあるわね。イングラス語は読めるようになったようだし、他の本に興味を持たれるかも知れないしね」
「そうでしょ。でも、凄いと思わない。五歳でもうイングラス語が読めるのよ。闇魔法の適性もお持ちだし、やっぱり、私のお嬢様は天才だわ!」
「サラのお嬢様じゃないでしょ」
「一番お世話をしているのは私だもの、私のお嬢様よ」
「なんですって! たまたま、担当する時間が長いだけじゃない。私だってお嬢様のお世話をしたいわよ。たまには代わってよ」
「嫌ですよ! 私はお嬢様から一生離れません」
「ふーん、一生ね。でもそれは無理よ」
「何でよ! 私の気持ちは揺るがないわ」
「気持ちの問題じゃないのよ。サラも、お嬢様が十二歳になったら王都の学園に通うようになるかもしれないのは知っているでしょ」
「知っているわ。もちろん、王都までついていきますけど、何か?」
「流石にお嬢様でも、ランドレート大陸語が読めないメイドを王都に連れて行くとは言わないと思うわよ」
「――! ユキー、どうしよう」
「ちゃんと私がお嬢様のお世話をするから、サラは心配しなくていいわよ」
「ユキの意地悪!!」
「はぁー」
「どうしたの、サラ? 珍しく、溜息なんかついて」
私が溜息をついていると、同じメイドのユキが心配そうに声をかけてくれました。
「ユキ、どうしよう。私、お嬢様に嘘をついてしまったわ」
「えっ! 嘘って、何を言ったの?!」
「お嬢様が大事にしている本を見せられて、何語で書かれているか聞かれたの」
「あの、ランドレート大陸語で書かれた本?」
「そう、それ」
「読めもしないだろうに、なぜ、あの本をお嬢様が大事にしているか不思議よね……」
そう、読める筈のない、文字ばかりの本なのに、お嬢様はその本をとても大切にしています。
「読めないからこそだと思うの」
「ああ、中身はイングラスの公爵令嬢を悪者に仕立てた物語ですものね」
そうなのです。まるでお嬢様が悪役令嬢だというように書かれているのです。
「そうなのよ。だからもし、お嬢様がその中身を知ったらショックをうけると思うの。それで、その本が何語で書かれているか聞かれたとき、咄嗟に『私はイングラス語しか読めません』って答えちゃったのよ」
「成る程、読んでほしいと言われても困っちゃうものね」
「そうなのよ」
「でも、どのみち家庭教師のクロード先生に教わることになるから、お嬢様が自分で読まれることになると思うわよ」
「それはそうなんだけど、ランドレート大陸語が読めるようになるには、まだ何年もかかるでしょ。もう少し大きくなれば、受けるショックも今より小さくなるだろうし、それに、その間にあの本のことは興味を無くしてしまうかも知れないわ」
「まあ、その可能性はあるわね。イングラス語は読めるようになったようだし、他の本に興味を持たれるかも知れないしね」
「そうでしょ。でも、凄いと思わない。五歳でもうイングラス語が読めるのよ。闇魔法の適性もお持ちだし、やっぱり、私のお嬢様は天才だわ!」
「サラのお嬢様じゃないでしょ」
「一番お世話をしているのは私だもの、私のお嬢様よ」
「なんですって! たまたま、担当する時間が長いだけじゃない。私だってお嬢様のお世話をしたいわよ。たまには代わってよ」
「嫌ですよ! 私はお嬢様から一生離れません」
「ふーん、一生ね。でもそれは無理よ」
「何でよ! 私の気持ちは揺るがないわ」
「気持ちの問題じゃないのよ。サラも、お嬢様が十二歳になったら王都の学園に通うようになるかもしれないのは知っているでしょ」
「知っているわ。もちろん、王都までついていきますけど、何か?」
「流石にお嬢様でも、ランドレート大陸語が読めないメイドを王都に連れて行くとは言わないと思うわよ」
「――! ユキー、どうしよう」
「ちゃんと私がお嬢様のお世話をするから、サラは心配しなくていいわよ」
「ユキの意地悪!!」
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