街角で悪役令嬢役にスカウトされた件 【OKしたけど、異世界でサスペンスだとは聞いてない！】

第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い８歳)王宮書庫殺人事件

12. これって何語？

　家庭教師のクロード先生から文字を教わったが、それは台本に書かれている文字とは違ったようだ。
　私は、メイドを呼んでクロード先生から借りた絵本が何語で書かれているか聞いてみることにした。
　呼び鈴を鳴らすとすぐにメイドのサラがやって来た。

「御用でしょうかお嬢様」
「ねえ、この絵本、何語で書かれているのかしら？」

　私は、クロード先生から借りた絵本をサラに見せる。

「この絵本ですか？　イングラス語ですね」

「イングラス語が、この国で普通に使われている言葉ということでいいのよね？」
「お嬢様、国ということであれば、イングラス語は標準語ではありません。ただ、ここイングラス島ではイングラス語が一般に使われています」

「え？　そうなの？」
　同じ国の中で、場所によって使われている言葉が違うのか。それはまた厄介な。
　それにしても、ここは島だったのか。地理も教えてもらう必要がありそうだ。

「それじゃあ、これが、何語かわかる？」
　私は、思い切って、台本の表紙をサラに見せた。
　台本は、いつも部屋に置いたままだ、部屋の掃除などもしているサラに表紙を見せるくらいは問題がないだろう。

「それは……。すみません、私はイングラス語しか読めません」

　これで、私がクロード先生から教わったのは、この台本で使われている文字とは違うことが確定した。
　なんでプロデューサーは、私が普段使うのと違う言葉で書かれた台本を寄越すかなー。
　なんか、もう、意地悪されている気分だ。

「悪いけど、紙とペンを用意してもらえるかしら？」
「文字の練習をされるのですか？」

「まあ、そんなところよ」
「畏まりました。すぐに用意いたします」

　サラは部屋を出ていくと、紙とペンを持って、すぐに戻ってきた。

「こちらをどうぞ」
「ありがとう。もう、下がっていいわ」

　私は、サラを下がらせると、テーブルの上に用意された紙に、台本の表紙の文字を見たまま写し取っていった。

　次にクロード先生が来た時、私はその紙を先生に見せて何語であるか確認することにした。
　まさか、クロード先生も読めないなってことはないわよね？