街角で悪役令嬢役にスカウトされた件 【OKしたけど、異世界でサスペンスだとは聞いてない!】

なつきコイン

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第一幕 悪役公爵令嬢(闇魔法使い8歳)王宮書庫殺人事件

11. 家庭教師

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 お父様に文字を教えてくれる人をつけてくれるようにお願いしたら、家庭教師が来てくれることになった。

「はじめまして、マリーといいます。五歳です。よろしくお願いします」
 初めての授業の日、私は来てくれた先生に丁寧にあいさつをした。

「マリー様ですね。僕はガルモンテ伯爵家の三男で、クロードです。こちらこそよろしくお願いしますね」

 クロード先生は、長い金髪を頭の後ろで無造作に縛っている眼鏡を掛けた青年だった。
 薄汚れた白衣を着せれば似合いそうな感じではあるが、よく見れば、そこそこのイケメンだ。
 三男とはいえ、伯爵家の出身だ。魔法を使えることを考えれば、身だしなみを整えれば結構モテるだろうに、ちょっと残念な感じだ。
 いや、私がモテないだろうと決めつけているだけで、本当はモテているのかもしれない。
 だが、メイドたちからキャアキャア言われることはないので、私の見立てで間違いないだろう。

「マリー様は、文字を覚えたいのと、魔法についても知りたいということでよかったのかな?」
「はい。とにかく、早く文字が読めるようになりたいです」
 おっと、先生がモテようとモテまいと私にはどうでもいい。それより文字だ。

「何か読みたい物があるのかな?」
「はい」

「それなら、それを読みながら教えてもいいのだけれど」
「秘密の本なので、先生にも見せられません」
 台本を他人に見せる訳にはいかない。守秘義務に反することになる。

「秘密の本なのか、じゃあ、仕方ないね。それじゃあ、僕が用意した絵本を一緒に読もうか」
「わかりました」

 クロード先生は、持って来たカバンから絵本を取り出した。

「しかし、あれだね。マリー様は、ハキハキ喋るね」

 しまった。また、やってしまった。
 でも、家族と喋る時と話し方が違ったら、それは、それで変だよね。
 もう、いっそのこと、悪役令嬢口調で喋ってみようか。

「そんなこと、ありませんわ。おーほほほ!」

「……。ああ、そうね。いろいろ、真似したい時期なんだね」

 よくわかりませんが、納得していただいたようなので、良しとしよう。

 そのあと、絵本を読み聞かせしてもらったが、この国の言葉は、ローマ字に近かった。
 これなら、すぐ読めるようになるだろう、と思っていたのだが……。
 部屋に戻って台本を見ると、明らかに、教わった文字と違っていた。

「どういうことよ? 確かプロデューサーは、なんとか大陸語って言っていたはず。私が教わったのは何語なの?」

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