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第23話 魔道具

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 ククリにキングたちが付けていた腕輪について聞かれたが、どう答えたものだろう。ククリが疑問に思っているということは、ただの腕輪でないことはわかっているのだろう。ここは下手に誤魔化さない方がいいか。

「その腕輪は炎と水を生み出す魔道具なんだ」
「これが! 随分と小さいな。魔石はどこに入ってるんだ?」

「魔石は内蔵されてないんだ」
「それじゃあ使えないだろ」

「まあ、そうなんだけどね……」
 魔石を隠し持って、押し当てながら使うのだが、これ以上話すと魔術のタネ明かしになってしまう恐れがある。魔道具だと明かした時点でアウトかもしれないが……。

「ククリさん、魔石は外付けなんですよ」
「ミキ!」
「ああ、なるほど」
 ミキがネタバラシをしてしまったが、ククリはさほど気にした様子もないし大丈夫か。

「それで、これはもう壊れて使えないのか?」
 どうやらククリの関心はそこにあったようだ。使えれば儲けもんだと思っているのだろう。

「ちょっと見せて」
 ボクはククリから腕輪を受け取ると壊れた部分を確認する。

「ああ、これは、コアの部分は大丈夫だけど、魔石から魔力を取り出す所が壊れちゃってるね」
「つまり、魔石があっても動かないってこと?」

「そうなるね」
「それは残念」
 ククリはいかにも残念そうな顔をする。

「ずいぶんと残念そうだね?」
「いやー。その二つの魔道具が有ればお湯が作れるかと思って」

「まあ、それはできるだろうけど」
 水を作って炎で温めればいいから、それはできるだろうけど、それは別にコンロを使えばいいのではないだろうか?

「実はそこに、昔は洞窟風呂があったんだ」
 ククリは坑道の横穴の一つを指差す。

「ここで、お風呂に入れるんですか?」
 不機嫌だったアリサが話に食いついてきた。

「昔は、だよ。今はお湯が枯れてしまっている」
「そうですか、それは残念ですね」

「つまり、この魔道具でお風呂にお湯を張りたかったと」
「そういうこと。どうにか直らないかな? 魔石はあるんだから」
 来る途中に狩ったモグラオオカミの魔石があるから、確かに魔石には困らないだろうが……。

「コアの部分は壊れてないんでしょ。どうにかならないの!」
 ククリだけでなくアリサからも責められてしまう。おまけにミキとレナさんまでこちらを縋るように見つめている。

「そう言われてもな……」
 魔石は有っても魔道具に魔力を取り込めない。だが、コアが無事なのだから、魔石にこだわらず、ボクのマナを直接コアに送り込んだらどうだろう。

「試しにやってみるか」
 ボクは水の魔道具を手に取ると、剣にマナを流す要領で魔道具にマナを流し込んだ。
 するとどうだろう。うまい具合に魔道具が働いて、水が溢れ出てきた。

「やった!」
「凄い、直ったの?」
「でも、魔石は?」
 魔石を使っていないことにククリが気付いて尋ねてきた。

「ボクのマナを直接使ってるんだ」
「魔石はいらないってこと?」
「それって、凄く経済的ってことじゃない?」
 確かに魔石代は掛からなくなるけど、その分ボクのマナが消費される。

「ボクを魔石代わりにしないでくれよ。今回限りだからね」
「ええー! なんで?」

「マナを消費すると凄く疲れるんだよ」
「そうなのか? それなら、無理は言えないけど、今回だけはなんとかお風呂にお湯を入れてくれないか」
「お願いよ」
「後でサービスしますからお願いします」
「マレック様―」

「……わかったよ」
 女性陣に懇願され、仕方がなく今回だけは受け入れることにした。
 その後、スキップをしそうなククリに連れていかれた坑道の先には、割と大きな穴ぼこがあった。これが浴槽なのだろう。
 ボクは両手に魔道具を持って、それにお湯を注いでいく。

 だが、半分ぐらいお湯が溜まったところで、ボクは疲れて続けられなくなった。
「もう無理! マナ切れだよ」
「マナって切れるものなの? 大丈夫?」
 アリサが心配そうに話しかけてきた。

「体力が尽きたと同じ表現だよ。使い続ければ疲れて動けなくなるし、時間が経てば自然に回復する感じだね」
「そうなのね。じゃあ、お湯に浸かってゆっくり休みなさいよ」

「そう言われても、まだお湯が半分だけだぞ」
「それは、みんなで入れば問題ないわ」

「みんなでって……」
 それは確かにお湯の嵩は増えるだろうが、混浴ってこと!

「さあさあ、早く服を脱いで」
「だが……」

「お任せください」
「ちょっと、ミキ!」
 ミキがやって来て、あっという間にボクの服を脱がせてしまった。ボクは慌ててお湯に浸かる。
 お湯は座った状態でヘソの上あたりだ。

「それじゃあ私たちも入りましょう」
「いやあー。また、洞窟風呂に入れるとは」
「なんともいえない佇まいですね」
「マナを使っていただいたマレック様には感謝ですね」

 みんなはおしゃべりをしながら次々に服を脱いでいく。
 ボクは見ているのも申し訳ないので、隅の方で背中を向けて待つことにした。

 しばらくするとみんなが入ってきた。
「マレック、そんな隅にいないで真ん中に来なよ」
「そうですよ、マレック様」

 ククリとミキに腕を引かれ、浴槽の真ん中引きずり出されると四方を囲むようにみんなが立っている。
 座っているボクには、ちょっと、というか、かなり目のやり場に困る。
「みんな、早く座ったら」
「そうですね」
「でも、これ、流石に五人では狭いですね」
「そう? この狭さがいいんじゃない」
「お湯もいっぱいになりましたしね」

 そこそこ広いと思っていた湯船であったが、五人で入るとお互い体は密着状態、誰の足がどこにいっているのかわからない状態だ。誰かの足がボクの股間に当たっている。ちょっと足で扱かないで!
 この背中の感触は、誰かのオッパイか?
 こっちの手に感じるのはお尻かな?
 それに、ボクの足のヌルヌルした感触はなに??

 そんなこんなで、お風呂の中で、ボクがのぼせて気を失うまでには、さほど時間が掛からなかった。

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