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第22話 クラブのキングとハートのクイーン
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ビービービー!
何かの接近を知らせる警報音がテントの中に鳴り響いた。
「チッ! これからが本番だったのに……」
「このタイミングで魔獣ですか!」
「とにかく、すぐに迎え撃たないと」
みんなで慌ててテントを出てモグラオオカミの襲撃に備える。
すぐに襲ってくるかと身構えていたが、現れたのはモグラオオカミではなく二人組の人間だった。
ホッと息を吐くが、油断は禁物である。やって来たのが善良なハンターとは限らないからだ。
「止まれ! ここはあたしたちが先に確保した。他の場所に行ってくれ」
ククリがやって来た二人に声をかける。どうやら先着順に場所を確保できる決まりようだ。
「私たちは別に狩に来たわけじゃないのよ」
「そこのメイドを連れに来ただけだ」
「お前たちは、キングとクイーン!」
やって来た二人組は、バラック兄さんのトランプメンに所属するクラブのキングとハートのクイーンだった。バラック兄さんはまだミキを諦めていなかったようだ。
「あら、マレック、勘当されたのに女の子を四人も侍らせて随分といいご身分ね」
「少しは自分の立場を理解したらどうだ」
「ベ、別に、侍らせているわけじゃない。彼女たちはパーティメンバーだ」
さっきまでの状態を思い起こすと反論しづらいが、別にボクはハーレムを作っているわけじゃない。
「まあ、そんなことはどうでもいいわね」
「どうせお前はここで死ぬのだから」
「死ぬ? どういうことだ!」
「バラック様から目障りだから殺してしまえと命令されたのよ」
「そのメイドを連れていかなければ、そこまでいわれることもなかっただろうに、バカなことをしたもんだ」
兄さんはボクを殺せと命令したのか……。そこまで疎まれていたとは思いもしなかった。
「ミキはボクの専属メイドだ。兄さんには渡さない」
「それでは死になさい!」
クイーンが懐から扇子を取り出すと水弾による一撃を放ってきた。
クイーンが得意とするのは水を使った魔術だ。
ボクは咄嗟にそれを避ける。
「ほうー。あれを避けるか。なら、これはどうだ!」
今度はキングが火炎放射を放ってきた。
キングは魔術で炎を自由に操ることができる。
ボクはそれをマナを込めた剣で斬り捨てる。
「ムッ。剣で防いだだと!」
キングは驚きの表情を隠そうとしなかった。
「なにをやってるの。キング、連続攻撃で仕留めるわよ」
「ああ、そうだな」
キングとクイーンが連携して連続攻撃を仕掛けてくるが、ボクはそれを剣で防いでいく。
とはいうものの、防御するのが手一杯で、とても接近して攻撃できそうにない。
「流石に二対一では辛そうね。手助けしましょうか?」
様子を見ていたアリサが助太刀を申し出てくれた。
「ありがたいんだけど、クラースト子爵令嬢のアリサを巻き込むわけにはいかないよ」
「どうして? マレックは私を助けてくれたじゃない」
「それは、ボクが勘当されていて、アートランクとは関係がないからね。クラーストの関係者と戦っても二つの家の争いにはならないけど、アリサはそうはいかないでしょ」
「二つは対立してるんだから、今更でしょ」
「対立してるからこそ、全面戦争になりかねないだろ」
「それは、そうかもだけど……」
「さっきから喋りながら余裕ね。でも、これならどう!」
クイーンが両手に持った扇子を広げ、シャワーのような水撃を放ってきた。
「クッ!」
ボクはバックステップで三回跳び、それを避ける。
これではとても接近できそうにない。
彼らの魔術のタネは、腕にしている腕輪に似せた魔道具だ。それを使って水や炎を作り出している。あれさえ破壊できれば魔術は使えなくなるのだが……。
このままではジリ貧だ。接近できない以上、離れた場所から攻撃するしかない。一か八か、攻撃魔法である、アリサが奥義だと言っていた斬撃を飛ばす技をやってみよう。
ぶっつけ本番だが、どうにかなるだろう。
剣にマナを込めて、腕輪を目掛けて、剣を振る勢いに合わせて、打ち放つ!
「斬撃!」
「なにをして――、ぎゃー!!」
クイーンの腕輪が吹き飛び、ついでに腕も斬り裂かれたようで、腕から血が噴き出した。
腕輪だけ狙ったのだが、流石に最初からそんなにうまくはいかないだろう。
まあ、相手はボクを殺そうとしていたんだ。これくらい構わないだろう。
「それ、もう一丁」
「なっ! グァー!!」
今度はキングの腕輪を吹き飛ばす。もちろん腕も切れてしまったが、仕方がない。
「あれは、奥義の斬撃!」
アリサが目を見開いて叫んでいるが、とりあえず、そっちは後だ。
「まだ、やるか? 次は首を狙うけど」
「クッ! 覚えておきなさいよ」
「これで終わりだと思うなよ!」
キングとクイーンは捨て台詞を吐いて逃げていった。
「マレック様、お怪我はありませんか?」
「ミキ、大丈夫だ。怪我はない」
ミキが駆け寄ってきてボクの体の心配をしてくれる。
「怪我がなかったのは何よりね。それより、さっきの攻撃はなに?」
アリサも寄ってきて攻撃魔法について問い詰めてきた。
「あれは、奥義でしょ。いつから使えたの! なんで黙ってたの?」
「いや、あれを使ったのは今回が初めてだから」
「そんなわけないでしょ」
「嘘をついてもしょうがないじゃないか。アリサの話を聞いてできるかもと思ってやってみたらできただけだよ」
「そんな簡単にできたら奥義とはいわないのよ!」
「そういわれてもね……」
案の定、アリサはご立腹のようだが如何ともし難い。どうしたものかと考えているとククリが話しかけてきた。
「マレック、この腕輪は特別なものなのか?」
ククリはキングとクイーンが装着していた、壊れてしまった腕輪を拾ってきたようだ。それを見せながらボクに問いかけてきた。
何かの接近を知らせる警報音がテントの中に鳴り響いた。
「チッ! これからが本番だったのに……」
「このタイミングで魔獣ですか!」
「とにかく、すぐに迎え撃たないと」
みんなで慌ててテントを出てモグラオオカミの襲撃に備える。
すぐに襲ってくるかと身構えていたが、現れたのはモグラオオカミではなく二人組の人間だった。
ホッと息を吐くが、油断は禁物である。やって来たのが善良なハンターとは限らないからだ。
「止まれ! ここはあたしたちが先に確保した。他の場所に行ってくれ」
ククリがやって来た二人に声をかける。どうやら先着順に場所を確保できる決まりようだ。
「私たちは別に狩に来たわけじゃないのよ」
「そこのメイドを連れに来ただけだ」
「お前たちは、キングとクイーン!」
やって来た二人組は、バラック兄さんのトランプメンに所属するクラブのキングとハートのクイーンだった。バラック兄さんはまだミキを諦めていなかったようだ。
「あら、マレック、勘当されたのに女の子を四人も侍らせて随分といいご身分ね」
「少しは自分の立場を理解したらどうだ」
「ベ、別に、侍らせているわけじゃない。彼女たちはパーティメンバーだ」
さっきまでの状態を思い起こすと反論しづらいが、別にボクはハーレムを作っているわけじゃない。
「まあ、そんなことはどうでもいいわね」
「どうせお前はここで死ぬのだから」
「死ぬ? どういうことだ!」
「バラック様から目障りだから殺してしまえと命令されたのよ」
「そのメイドを連れていかなければ、そこまでいわれることもなかっただろうに、バカなことをしたもんだ」
兄さんはボクを殺せと命令したのか……。そこまで疎まれていたとは思いもしなかった。
「ミキはボクの専属メイドだ。兄さんには渡さない」
「それでは死になさい!」
クイーンが懐から扇子を取り出すと水弾による一撃を放ってきた。
クイーンが得意とするのは水を使った魔術だ。
ボクは咄嗟にそれを避ける。
「ほうー。あれを避けるか。なら、これはどうだ!」
今度はキングが火炎放射を放ってきた。
キングは魔術で炎を自由に操ることができる。
ボクはそれをマナを込めた剣で斬り捨てる。
「ムッ。剣で防いだだと!」
キングは驚きの表情を隠そうとしなかった。
「なにをやってるの。キング、連続攻撃で仕留めるわよ」
「ああ、そうだな」
キングとクイーンが連携して連続攻撃を仕掛けてくるが、ボクはそれを剣で防いでいく。
とはいうものの、防御するのが手一杯で、とても接近して攻撃できそうにない。
「流石に二対一では辛そうね。手助けしましょうか?」
様子を見ていたアリサが助太刀を申し出てくれた。
「ありがたいんだけど、クラースト子爵令嬢のアリサを巻き込むわけにはいかないよ」
「どうして? マレックは私を助けてくれたじゃない」
「それは、ボクが勘当されていて、アートランクとは関係がないからね。クラーストの関係者と戦っても二つの家の争いにはならないけど、アリサはそうはいかないでしょ」
「二つは対立してるんだから、今更でしょ」
「対立してるからこそ、全面戦争になりかねないだろ」
「それは、そうかもだけど……」
「さっきから喋りながら余裕ね。でも、これならどう!」
クイーンが両手に持った扇子を広げ、シャワーのような水撃を放ってきた。
「クッ!」
ボクはバックステップで三回跳び、それを避ける。
これではとても接近できそうにない。
彼らの魔術のタネは、腕にしている腕輪に似せた魔道具だ。それを使って水や炎を作り出している。あれさえ破壊できれば魔術は使えなくなるのだが……。
このままではジリ貧だ。接近できない以上、離れた場所から攻撃するしかない。一か八か、攻撃魔法である、アリサが奥義だと言っていた斬撃を飛ばす技をやってみよう。
ぶっつけ本番だが、どうにかなるだろう。
剣にマナを込めて、腕輪を目掛けて、剣を振る勢いに合わせて、打ち放つ!
「斬撃!」
「なにをして――、ぎゃー!!」
クイーンの腕輪が吹き飛び、ついでに腕も斬り裂かれたようで、腕から血が噴き出した。
腕輪だけ狙ったのだが、流石に最初からそんなにうまくはいかないだろう。
まあ、相手はボクを殺そうとしていたんだ。これくらい構わないだろう。
「それ、もう一丁」
「なっ! グァー!!」
今度はキングの腕輪を吹き飛ばす。もちろん腕も切れてしまったが、仕方がない。
「あれは、奥義の斬撃!」
アリサが目を見開いて叫んでいるが、とりあえず、そっちは後だ。
「まだ、やるか? 次は首を狙うけど」
「クッ! 覚えておきなさいよ」
「これで終わりだと思うなよ!」
キングとクイーンは捨て台詞を吐いて逃げていった。
「マレック様、お怪我はありませんか?」
「ミキ、大丈夫だ。怪我はない」
ミキが駆け寄ってきてボクの体の心配をしてくれる。
「怪我がなかったのは何よりね。それより、さっきの攻撃はなに?」
アリサも寄ってきて攻撃魔法について問い詰めてきた。
「あれは、奥義でしょ。いつから使えたの! なんで黙ってたの?」
「いや、あれを使ったのは今回が初めてだから」
「そんなわけないでしょ」
「嘘をついてもしょうがないじゃないか。アリサの話を聞いてできるかもと思ってやってみたらできただけだよ」
「そんな簡単にできたら奥義とはいわないのよ!」
「そういわれてもね……」
案の定、アリサはご立腹のようだが如何ともし難い。どうしたものかと考えているとククリが話しかけてきた。
「マレック、この腕輪は特別なものなのか?」
ククリはキングとクイーンが装着していた、壊れてしまった腕輪を拾ってきたようだ。それを見せながらボクに問いかけてきた。
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