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第18話 拉致
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明日からのことで、ククリも含めてホテルに部屋で打ち合わせをすることになった。
部屋に戻ってまず、ワームの体液で体じゅうベトベトなボクは浴室に向かう。
汚れた服は洗濯袋に放り込み、シャワーを使って綺麗に洗い流してから、石鹸を使って洗おうとしたが、そこで、石鹸置き場に石鹸がないことに気が付いた。
石鹸を取りに戻ろうと振り返るとバスルームの入り口にミキが立っていた。
「マレック様、私がお洗いいたします」
ミキの手には石鹸とスポンジが握られていた。
「いや、自分でやるからそれを貸してくれ」
「屋敷にいた時は、私が洗って差し上げていたではないですか」
確かにそんなこともあったが、それはもっと子供の時の話だ。
今はもう、裸を見られるのは恥ずかしいので、早く石鹸を渡して出て行って欲しいのだが……。
「もう大人だから自分で出来る!」
「確かに、もう子供ではないようですが」
って、どこを見て言ってるんだ!
「ですが、大人は女性に体を洗ってもらえるとなれば喜ぶものですよ」
「それは、ただのエロおやじだろう!」
「そんなことありませんよ。まだまだ、ウブですね」
「いいから、石鹸を渡して出て行ってくれ」
「はいはい、わかりました」
ボクは石鹸を受け取ると、バスルームの扉を閉めて鍵をかけた。
ちょっと残念な気もするがククリも来ているのに変なことはできない。
ククリを待たせているので、さっさと、石鹸で体を洗い、ミキが用意してくれた服に着替えて部屋の戻ると、既にククリがルームサービスで頼んだ酒を飲んでいた。
「お先にやってるよ」
「お先にやってるよ、じゃないよ。まずは仕事の話をしたかったんだけど」
「まだ時間が早いんだから、そんなの後、後」
「はぁー。仕方ないな」
確かにまだ時間は午前中、朝と言っても差し支えない時間だ。
だからこそ、お酒を飲んでいるというのはどうだろうかと思う。
「マレック様も飲まれますか?」
「ボクはいいよ。まだ昼前だし」
流石にボクは朝からお酒を飲む気にはなれない。
「そういえば、ヨナのやつ今日は元気がなかったぞ」
「そうなんだ……」
思わず沈んだ声が出てしまった。ククリはそれを聞き逃さなかった。
「あれ? ヨナと何かあったのか?」
「ヨナちゃんから聞いてないのか?」
「いや、お前に会えないから元気がないのかと思っていたんだが、何があったんだ?」
「簡単に言うと、ヨナちゃんのお母さんを怒らせてしまって、ヨナちゃんに近付くなと言われてしまったんだよ」
「そうか、だからヨナには手を出すなと言っただろうに」
「ヨナちゃんに手なんか出してないよ」
「それなら何で怒らせたんだ?」
「それは……」
「ちょっと待て、何か隣の部屋がうるさくないか?」
理由を説明しようとしたところで、ククリが異変に気付いたて待ったをかけた。
「確かに、普通じゃないね。ちょっと様子を見てくるよ」
隣の部屋にはアリサたちが泊まっている。泥棒でも入ったのでなければいいが、用心に剣は持っていく。
ボクが廊下に出ると、隣の部屋は扉が開いたままになっている。近付いて覗き込むと、部屋の中は荒らされていて、レナさんが倒れていた。
「レナさん、大丈夫ですか?」
「うぅ……。マレック様……。アリサ様が……」
「アリサがどうしたんです?」
「男たちに連れ攫われました」
そう言ってレナさんは窓の方を指差した。
ボクは窓の外を確認すると、男たちが三人でアリサを担いで連れていく様子が目に入った。
今から追えば追いつけるだろう。
「ボクが追いかけます」
それだけ告げるとボクは窓から飛び降りて、誘拐犯たちを追った。
身体強化魔法を使って、瞬く間に追いつき、有無も言わさず男たちを蹴り倒していく。
「アリサ、大丈夫か?」
「ううう、マレック?」
アリサは返事をしたが、すぐに立てる状態ではないようだ。
まずは犯人の男たちを拘束した方がいいだろうか? でも、どうやって――。そう考えていると、肩から大剣を背負った第四の男が現れた。
「おいおい、いきなり蹴り倒すとは、随分だな」
「女性を拉致しようとしたんだ、当然だろ」
「その女は、俺の女だ。邪魔するんじゃねえ!」
どこかで見たことがあると思ったら、昨日声をかけてきた態度が横柄な男だ。あの時もアリサを探していたんだな。
「アリサ、ああ言っているが本当か?」
「ガリウス、あんたの女になった覚えはないわ」
アリサが名前を知っているということは知り合いではあるのだろうが、もしかして、婚約させられそうになったという相手か?
「そういうことらしいから、このまま帰ってくれるか?」
「ああ? 何で俺がお前の言うことを聞かなくちゃなんねえんだ。ああ、昨日、メイドと幼女を連れていたボンボンか」
どうやら相手もボクのことを覚えていたようだ。
「どこのお偉いさんの息子か知らないがな、こういう場合、力こそ正義なんだよ。痛い思いをしたくなかったらアリサを置いて、さっさと失せな」
ガリウスは肩から背負っていた大剣を抜いてボクに突きつけた。
「それは、ボクが力で勝てばアリサを好きにしていいということか?」
「カッカッカ。お前が俺に勝てるわけないだろ」
「それはどうかな。やってみなければわからないだろう」
「やってみなくても、わかりきってんだよ!」
ガリウスは話の最中に大剣を振り上げると、ボクの頭上めがけて振り下ろした。
「マレック!」
アリサが絶叫するが、ボクも見す見す斬られるような真似はしない。身体強化魔法を使い素早く避ける。
「危ないな。当たったら死んでたぞ」
「ほー。あれを避けるか。なら、これはどうだ!」
今度は横薙ぎの一閃がくる。ボクはそれをジャンプして避け、ついでに、ガリウスの顔にケリを入れる。
「ゲホ。やりやがったな!」
ガリウスは頭に来て、滅多矢鱈と大剣を振る。ボクはそれをひらりひらりと躱していく。
「ちょこまかと逃げ回りやがって。その腰の剣はお飾りか?」
易い挑発だが、ボクはそれに乗ることにした。腰に差していた剣を抜き正眼に構える。
「剣を抜かせたからには、どうなっても知らないよ」
「ほざけ」
「マレック、ガリウスの剣を正面から受けてはダメよ」
まあ、あの大剣を正面から受けたら、こんな安物の剣は一発で折れそうだものな。だが大丈夫、付与魔法をかければ、安物の剣でも十分にやり合えるはずだ。
「アリサ、心配ない。ガリウス、さあ来い!」
ボクはガリウスに手招きをして挑発する。
「調子に乗るな! 死にやがれ!」
ガリウスは正面から大剣を振り上げて振り下ろす。
ボクはそれを避けもせず。正面から剣で受ける。
ボキッ!
嫌な音がして剣が折れた。
ただ、折れたのはボクの剣でなく、ガリウスの大剣の方だ。
「な、俺のシシオウがぁーー」
あの大剣、大層な名前がついていたようだ。
「あれは、剣に気を纏わせたの?!」
アリサはなぜ相手の剣が折れたか気付いたようだ。
「まだやるか?」
ボクはガリウスに剣を突きつける。
「ぐぐぐぐぐ、参った。アリサはくれてやる」
いや、別にアリサが欲しかったわけでもないのだが。
「これで、私はマレックのものね」
え? いいの!
「マレック様ぁー。警備隊を連れてきましたぁー」
ちょうどいいタイミングでミキが警備隊を連れて来てくれたようだ。
戻るのが遅かったから、様子を見に行ってレナさんに話を聞いたのだろう。
後は警備隊に任せてホテルの部屋に戻ろうとしたら、事情聴取があるからと、すぐには帰してもらえなかった。
結局部屋に戻れたのは夜になってからだった。
その間ククリは、好き放題、ルームサービスで飲み食いしていたのであった。
部屋に戻ってまず、ワームの体液で体じゅうベトベトなボクは浴室に向かう。
汚れた服は洗濯袋に放り込み、シャワーを使って綺麗に洗い流してから、石鹸を使って洗おうとしたが、そこで、石鹸置き場に石鹸がないことに気が付いた。
石鹸を取りに戻ろうと振り返るとバスルームの入り口にミキが立っていた。
「マレック様、私がお洗いいたします」
ミキの手には石鹸とスポンジが握られていた。
「いや、自分でやるからそれを貸してくれ」
「屋敷にいた時は、私が洗って差し上げていたではないですか」
確かにそんなこともあったが、それはもっと子供の時の話だ。
今はもう、裸を見られるのは恥ずかしいので、早く石鹸を渡して出て行って欲しいのだが……。
「もう大人だから自分で出来る!」
「確かに、もう子供ではないようですが」
って、どこを見て言ってるんだ!
「ですが、大人は女性に体を洗ってもらえるとなれば喜ぶものですよ」
「それは、ただのエロおやじだろう!」
「そんなことありませんよ。まだまだ、ウブですね」
「いいから、石鹸を渡して出て行ってくれ」
「はいはい、わかりました」
ボクは石鹸を受け取ると、バスルームの扉を閉めて鍵をかけた。
ちょっと残念な気もするがククリも来ているのに変なことはできない。
ククリを待たせているので、さっさと、石鹸で体を洗い、ミキが用意してくれた服に着替えて部屋の戻ると、既にククリがルームサービスで頼んだ酒を飲んでいた。
「お先にやってるよ」
「お先にやってるよ、じゃないよ。まずは仕事の話をしたかったんだけど」
「まだ時間が早いんだから、そんなの後、後」
「はぁー。仕方ないな」
確かにまだ時間は午前中、朝と言っても差し支えない時間だ。
だからこそ、お酒を飲んでいるというのはどうだろうかと思う。
「マレック様も飲まれますか?」
「ボクはいいよ。まだ昼前だし」
流石にボクは朝からお酒を飲む気にはなれない。
「そういえば、ヨナのやつ今日は元気がなかったぞ」
「そうなんだ……」
思わず沈んだ声が出てしまった。ククリはそれを聞き逃さなかった。
「あれ? ヨナと何かあったのか?」
「ヨナちゃんから聞いてないのか?」
「いや、お前に会えないから元気がないのかと思っていたんだが、何があったんだ?」
「簡単に言うと、ヨナちゃんのお母さんを怒らせてしまって、ヨナちゃんに近付くなと言われてしまったんだよ」
「そうか、だからヨナには手を出すなと言っただろうに」
「ヨナちゃんに手なんか出してないよ」
「それなら何で怒らせたんだ?」
「それは……」
「ちょっと待て、何か隣の部屋がうるさくないか?」
理由を説明しようとしたところで、ククリが異変に気付いたて待ったをかけた。
「確かに、普通じゃないね。ちょっと様子を見てくるよ」
隣の部屋にはアリサたちが泊まっている。泥棒でも入ったのでなければいいが、用心に剣は持っていく。
ボクが廊下に出ると、隣の部屋は扉が開いたままになっている。近付いて覗き込むと、部屋の中は荒らされていて、レナさんが倒れていた。
「レナさん、大丈夫ですか?」
「うぅ……。マレック様……。アリサ様が……」
「アリサがどうしたんです?」
「男たちに連れ攫われました」
そう言ってレナさんは窓の方を指差した。
ボクは窓の外を確認すると、男たちが三人でアリサを担いで連れていく様子が目に入った。
今から追えば追いつけるだろう。
「ボクが追いかけます」
それだけ告げるとボクは窓から飛び降りて、誘拐犯たちを追った。
身体強化魔法を使って、瞬く間に追いつき、有無も言わさず男たちを蹴り倒していく。
「アリサ、大丈夫か?」
「ううう、マレック?」
アリサは返事をしたが、すぐに立てる状態ではないようだ。
まずは犯人の男たちを拘束した方がいいだろうか? でも、どうやって――。そう考えていると、肩から大剣を背負った第四の男が現れた。
「おいおい、いきなり蹴り倒すとは、随分だな」
「女性を拉致しようとしたんだ、当然だろ」
「その女は、俺の女だ。邪魔するんじゃねえ!」
どこかで見たことがあると思ったら、昨日声をかけてきた態度が横柄な男だ。あの時もアリサを探していたんだな。
「アリサ、ああ言っているが本当か?」
「ガリウス、あんたの女になった覚えはないわ」
アリサが名前を知っているということは知り合いではあるのだろうが、もしかして、婚約させられそうになったという相手か?
「そういうことらしいから、このまま帰ってくれるか?」
「ああ? 何で俺がお前の言うことを聞かなくちゃなんねえんだ。ああ、昨日、メイドと幼女を連れていたボンボンか」
どうやら相手もボクのことを覚えていたようだ。
「どこのお偉いさんの息子か知らないがな、こういう場合、力こそ正義なんだよ。痛い思いをしたくなかったらアリサを置いて、さっさと失せな」
ガリウスは肩から背負っていた大剣を抜いてボクに突きつけた。
「それは、ボクが力で勝てばアリサを好きにしていいということか?」
「カッカッカ。お前が俺に勝てるわけないだろ」
「それはどうかな。やってみなければわからないだろう」
「やってみなくても、わかりきってんだよ!」
ガリウスは話の最中に大剣を振り上げると、ボクの頭上めがけて振り下ろした。
「マレック!」
アリサが絶叫するが、ボクも見す見す斬られるような真似はしない。身体強化魔法を使い素早く避ける。
「危ないな。当たったら死んでたぞ」
「ほー。あれを避けるか。なら、これはどうだ!」
今度は横薙ぎの一閃がくる。ボクはそれをジャンプして避け、ついでに、ガリウスの顔にケリを入れる。
「ゲホ。やりやがったな!」
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易い挑発だが、ボクはそれに乗ることにした。腰に差していた剣を抜き正眼に構える。
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ボクはガリウスに手招きをして挑発する。
「調子に乗るな! 死にやがれ!」
ガリウスは正面から大剣を振り上げて振り下ろす。
ボクはそれを避けもせず。正面から剣で受ける。
ボキッ!
嫌な音がして剣が折れた。
ただ、折れたのはボクの剣でなく、ガリウスの大剣の方だ。
「な、俺のシシオウがぁーー」
あの大剣、大層な名前がついていたようだ。
「あれは、剣に気を纏わせたの?!」
アリサはなぜ相手の剣が折れたか気付いたようだ。
「まだやるか?」
ボクはガリウスに剣を突きつける。
「ぐぐぐぐぐ、参った。アリサはくれてやる」
いや、別にアリサが欲しかったわけでもないのだが。
「これで、私はマレックのものね」
え? いいの!
「マレック様ぁー。警備隊を連れてきましたぁー」
ちょうどいいタイミングでミキが警備隊を連れて来てくれたようだ。
戻るのが遅かったから、様子を見に行ってレナさんに話を聞いたのだろう。
後は警備隊に任せてホテルの部屋に戻ろうとしたら、事情聴取があるからと、すぐには帰してもらえなかった。
結局部屋に戻れたのは夜になってからだった。
その間ククリは、好き放題、ルームサービスで飲み食いしていたのであった。
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