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第8話 身バレ
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気だるさを感じながら目覚めると、もう朝九時を過ぎているようだ。
大分寝過ごしてしまった。既にベッドには三人の姿はない。
いつもは、アロマキャンドルを使った翌朝にはスッキリ起きられるのだが、列車に乗っているせいだろうか、運動をした後のように体がだるい。
それにしても、すごい夢を見てしまった。まさに天にも昇る思いだった。
あれはアロマキャンドルの効果だったのだろうか、それとも女性と一緒の部屋に寝ていたせいだろうか、よりにもよって一緒に寝ている三人と激しく求め合う夢を見てしまうなんて、この後、どんな顔をして出て行けばいいのだろう……。
「マレック様、お目覚めですか。朝食をご用意しますのでこちらにお越しください」
「お、おはよう、ミキ、今行くよ」
寝室の扉を開けてミキが声をかけてきた。ボクの見た夢の内容などミキが知るはずもないのだが、なんだか気恥ずかしい。しかし、当然ミキはいつもどおりだ。
一人で恥ずかしがっていても変に思われる。ボクは手早く支度を済ませると、アリサたちがくつろいでいる部屋に移動した。
「おはよう、アリサ」
「お、おはよう」
ボクが挨拶をすると、アリサはなぜか挨拶を返してくれたものの、目を合わせようとはせず、顔を背けてしまった。何だろう、何か気に障るようなことをしただろうか?
「マレック様、おはようございます」
「おはよう、レナさん」
レナさんは昨日と変わりなく挨拶してくれたが、心なし顔が赤い気がするが気のせいか?
まさか、二人ともボクが見た夢の内容を知っているわけではないよな……。
そんなこと、普通に考えればあり得ないのだが、だけど、もしボクが寝言で何か喋っていたら、一緒に寝ていたのだからどんな夢を見ているのか知られてしまってもおかしくない。
四人で乱交している夢を見ていたことを知られているなら、恥ずかしくて、とてもではないがここにいられない。
幸い、アリサたちから聞いてくることはなかったので、ここは素知らぬふりをするしかない。
ボクはミキが用意した朝食を平らげると、何事もなかったようにソファにくつろいで本を読むことにした。
だが、夢のことが気になって本の内容が頭に入って来ない。
気まずい雰囲気のままお昼近くなった時、意を決したようにアリサが話しかけてきた。
「昨夜はどうだった?」
「ど、どうって……」
「気持ちよかった?」
「え! えーと……」
これは夢のことがバレていると思って間違いないだろう。正直に話した方がいいよな。
「……気持ちよかったです」
「そう、私もよ。フフフ」
「え?」
アリサもボクと同じようなエッチな夢を見たということだろうか? それとも単に気持ちがいい夢を見たというだけだろうか?
「ところで、それは何を読んでいるの?」
「これは魔導書……」
「魔導書! マレックはインチキ魔術師の関係者なの!」
しまった。夢のことで動揺していて身バレを警戒しなければいけないのを忘れていた。
「関係者だったというのが正しいかな」
「関係者だった! マレック、マレック……。まさか、アートランク伯爵の三男じゃないでしょうね!」
「……」
そのとおりだが、ボクは答えることができなかった。
「否定しないということは、そうなのね! なぜ私を騙したの」
「騙したわけじゃないんだ。勘当されて家名を名乗らないように言われているんだ」
「勘当ね、勘当された人がなぜ魔術の本を持っているの、そういう物は門外不出でしょ。それとも盗んできたとでもいうの。それはそれで、許すことができないわ」
「いや、ちゃんと許可を取って貰ってきた。この本は、魔術の本でなく、マナを使った魔法の本なんだ」
「どちらにしろ、インチキな本には違いないでしょけど、あなたの言うことは信じられないわ」
「この魔導書はインチキじゃないんだ。マナというのは多分、アリサのいう『気』と同じものだと思うんだよね」
「そんなインチキと一緒にしないで! 見損なったわ。折角教えてあげたのに、恩を仇で返すようなことを言うのね!」
「いや、別に悪気があって言ってるわけではないんだ。何だったら、実際に使っているところを見てくれないか」
「その必要はないわ。『気』はそう簡単に使えるようになるものではないもの。魔術の練習をサボっていると噂のあなたが使えるとは思えないし」
一族以外にもその噂が広がっていたとは、思いもよらなかった。
「どうせ、練習を真面目にしないから勘当されたんでしょ」
勘当されるのが作戦だったとはいえ、確かにそのとおりなので何も言い返せない。
「私の大切なものをあげたのに、騙すなんて最低よ」
やはり『気』の話は、秘伝のようなものだったのだろう。教えてもらったのはまずかったかもしれない。
ボクが答えに困っていると、アリサは怒って寝室に閉じ篭ってしまった。
お昼になっても出てくる様子はなく、昼食も寝室で取ったようだ。
そのまま、列車は定刻通り鉱山都市サードに到着したが、それでもアリサは寝室から出てこず、レナさんに謝罪を伝えてボクとミキは先に列車を降りることにした。
アリサもハンターをやると言っていたから、現場で鉢合わせする可能性はある。その時、いったい、ボクはどういった態度をとるべきだろうか……。
大分寝過ごしてしまった。既にベッドには三人の姿はない。
いつもは、アロマキャンドルを使った翌朝にはスッキリ起きられるのだが、列車に乗っているせいだろうか、運動をした後のように体がだるい。
それにしても、すごい夢を見てしまった。まさに天にも昇る思いだった。
あれはアロマキャンドルの効果だったのだろうか、それとも女性と一緒の部屋に寝ていたせいだろうか、よりにもよって一緒に寝ている三人と激しく求め合う夢を見てしまうなんて、この後、どんな顔をして出て行けばいいのだろう……。
「マレック様、お目覚めですか。朝食をご用意しますのでこちらにお越しください」
「お、おはよう、ミキ、今行くよ」
寝室の扉を開けてミキが声をかけてきた。ボクの見た夢の内容などミキが知るはずもないのだが、なんだか気恥ずかしい。しかし、当然ミキはいつもどおりだ。
一人で恥ずかしがっていても変に思われる。ボクは手早く支度を済ませると、アリサたちがくつろいでいる部屋に移動した。
「おはよう、アリサ」
「お、おはよう」
ボクが挨拶をすると、アリサはなぜか挨拶を返してくれたものの、目を合わせようとはせず、顔を背けてしまった。何だろう、何か気に障るようなことをしただろうか?
「マレック様、おはようございます」
「おはよう、レナさん」
レナさんは昨日と変わりなく挨拶してくれたが、心なし顔が赤い気がするが気のせいか?
まさか、二人ともボクが見た夢の内容を知っているわけではないよな……。
そんなこと、普通に考えればあり得ないのだが、だけど、もしボクが寝言で何か喋っていたら、一緒に寝ていたのだからどんな夢を見ているのか知られてしまってもおかしくない。
四人で乱交している夢を見ていたことを知られているなら、恥ずかしくて、とてもではないがここにいられない。
幸い、アリサたちから聞いてくることはなかったので、ここは素知らぬふりをするしかない。
ボクはミキが用意した朝食を平らげると、何事もなかったようにソファにくつろいで本を読むことにした。
だが、夢のことが気になって本の内容が頭に入って来ない。
気まずい雰囲気のままお昼近くなった時、意を決したようにアリサが話しかけてきた。
「昨夜はどうだった?」
「ど、どうって……」
「気持ちよかった?」
「え! えーと……」
これは夢のことがバレていると思って間違いないだろう。正直に話した方がいいよな。
「……気持ちよかったです」
「そう、私もよ。フフフ」
「え?」
アリサもボクと同じようなエッチな夢を見たということだろうか? それとも単に気持ちがいい夢を見たというだけだろうか?
「ところで、それは何を読んでいるの?」
「これは魔導書……」
「魔導書! マレックはインチキ魔術師の関係者なの!」
しまった。夢のことで動揺していて身バレを警戒しなければいけないのを忘れていた。
「関係者だったというのが正しいかな」
「関係者だった! マレック、マレック……。まさか、アートランク伯爵の三男じゃないでしょうね!」
「……」
そのとおりだが、ボクは答えることができなかった。
「否定しないということは、そうなのね! なぜ私を騙したの」
「騙したわけじゃないんだ。勘当されて家名を名乗らないように言われているんだ」
「勘当ね、勘当された人がなぜ魔術の本を持っているの、そういう物は門外不出でしょ。それとも盗んできたとでもいうの。それはそれで、許すことができないわ」
「いや、ちゃんと許可を取って貰ってきた。この本は、魔術の本でなく、マナを使った魔法の本なんだ」
「どちらにしろ、インチキな本には違いないでしょけど、あなたの言うことは信じられないわ」
「この魔導書はインチキじゃないんだ。マナというのは多分、アリサのいう『気』と同じものだと思うんだよね」
「そんなインチキと一緒にしないで! 見損なったわ。折角教えてあげたのに、恩を仇で返すようなことを言うのね!」
「いや、別に悪気があって言ってるわけではないんだ。何だったら、実際に使っているところを見てくれないか」
「その必要はないわ。『気』はそう簡単に使えるようになるものではないもの。魔術の練習をサボっていると噂のあなたが使えるとは思えないし」
一族以外にもその噂が広がっていたとは、思いもよらなかった。
「どうせ、練習を真面目にしないから勘当されたんでしょ」
勘当されるのが作戦だったとはいえ、確かにそのとおりなので何も言い返せない。
「私の大切なものをあげたのに、騙すなんて最低よ」
やはり『気』の話は、秘伝のようなものだったのだろう。教えてもらったのはまずかったかもしれない。
ボクが答えに困っていると、アリサは怒って寝室に閉じ篭ってしまった。
お昼になっても出てくる様子はなく、昼食も寝室で取ったようだ。
そのまま、列車は定刻通り鉱山都市サードに到着したが、それでもアリサは寝室から出てこず、レナさんに謝罪を伝えてボクとミキは先に列車を降りることにした。
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