名門魔術師を騙る詐欺師一族の三男は、ワザと不器用なフリをして狙い通り勘当されハンターになるが、なぜかメイドがついてきてエロエロな生活を送る

なつきコイン

文字の大きさ
上 下
3 / 23

第3話 リング

しおりを挟む
 魔術の名門アートランク伯爵家を勘当され屋敷を追い出されたボクは、メイドのミキと一緒に駅に向かった。本当ならこれからは一人でやっていくはずだったが、ミキが付いて来てくれたのは嬉しい誤算である。
 バラック兄さんが、ミキを連れ戻すために追って来ないとも限らないので急いだこともあり、駅には三十分とかからずに到着した。

「マレック様、駅に着きましたが、列車に乗るにはお金がかかるのですが……」
「ミキ、流石にボクでもそれくらいのことは知っているよ。だからほら、屋敷から少しコインをちょろまかしてきた」
 ボクはポケットから数枚の金貨を取り出して見せた。

「はぁー。まあ、こんなことだろうと思っていました」
 ミキは額に手をやると呆れたようにため息をついた。

「何か問題でも?」
「マレック様は買い物をされたことがないでしょうからご存じないのも仕方ございませんが、現在、コインは買い物などには使われておりません。屋敷にあったのは、魔術に使用するための物です」

「へー。このコインは魔術専用だったんだ。そうか、このコインは買い物に使えないのか……。て、ことは、今のボクは一文無し!」
「そういうことになりますね。と、いうか、現在買い物にコインは使われていないと申し上げましたが、それはそのコインに限ったことではありません。全てのコインが使われていないのです」

「え? それじゃあ、どうやって支払いをしてるんだい?」
「今は、お金の支払いにはこのリングを使用しています」
 そう言って、ミキは左腕を差し出し、そこにしている腕輪を右手で指し示した。

「それ一つでは困らないか?」
「ああ、このリングを渡すのではなく、リングでお店の機械に触れると自動で口座からお金が引き落とされる仕組みです」

「そんなことになっているのか! だが、困ったな。ボク、リングも口座も持ってないよ」
「口座は私の口座を使えばいいとしても、これからは、リングは持っていた方がいいかもしれませんね」

「ミキの口座を使うということは、ミキのお金だよね。そんなわけにはいかないよ」
「ですが、マレック様は一文無しですよね?」
 そうだった。自分でお金を稼ぐまではミキに頼るしかない。

「すみません。暫くお金を貸しておいてください。自分で稼げるようになったら返しますので」
「マレック様はそんなこと気にする必要はないんですよ。私が一生養って差し上げますから」

 それじゃあ完全にヒモじゃないか。
「できるだけ早く返すから」
「急がなくてもいいのに……。とりあえず、あそこのリングショップでマレック様のリングを用意しましょう」

「駅の中にそんな店まであるのか!」
 駅の中には土産物屋と立ち食いスタンドがあるくらいかと思っていたが、よく見ると色々な店が営業していた。

 ボクたちは先程目についたリングショップに入った。

「身につけるものですから、いろいろなデザインの物が売られているんですよ」
 店内には腕輪だけでなく、指輪やペンダントも並べられていた。あれもリングなのか?

「用途に合わせて、一人で複数個持っているのが普通です」
 まあ、女性なら服装に合わせてリングのデザインも変えたいだろう。

「そうなのか。それなら、ミキも他に持っているのではないのか?」
「はい、持っていますが」

「それならわざわざ買わなくても、それでいいぞ」
「あー。残念ながら、他人のリングは使えないんです。生体認証機能がありますから」

 つまり、盗んでも使えないということか。
「そんな機能まであるのか! なかなか高性能だな」

「マレック様、こちらの指輪などどうでしょう。先程気にされていたようですが」
「ああ、それもリングなのか気になっていたんだ」
 ミキはショーケースに並べられた指輪を勧めてきた。

「機能的にはこちらの指輪も、腕輪と変わりませんね」
「そうか、なら指輪の方が邪魔にならないかな?」

「指輪でよろしいのですか? でしたらこのペアの指輪がよろしいかと」
「二つも要らないぞ」

「一つは私用です。セットで買うとお安くなりますし」
「ミキはその指輪が欲しかったのか? それなら、それで構わないが」

「ありがとうございます」
「うん、いや、まあ」
 お礼を言われても、支払いをするのはミキなので、なんとも情けない状態だ。

「すみません。このペアの指輪をください」
「はーい。少々お待ちください」

 ミキが店員に声をかけ、ショーケースから指輪を出してもらった。
「こちらは、決まった相手がいらっしゃる方向けの商品ですが、よろしいですか?」
「決まった相手?」
「マレック様、私はマレック様の専属ですから、決まった相手ですよ」

「そうか。なら、問題ないな」
「それでは生体認証と口座の登録を行いますのでこちらにお越しください」

 ボクたちは別室に連れて行かれると、そこで登録作業が行われた。

 途中、口座登録の際に店員が「二つともミキ様の口座につけてよろしいのですね?」と言っていたが、ヒモのところが強調されていたように感じたのは、多分ボクの被害妄想だろう。

 そんなことを考えているうちに登録は終わったようだ。

「はい、これで終了です。ここで嵌めていかれますか?」
「はい、嵌めていきます」
 なくさないように指輪は常に嵌めて置いた方がいいだろう。それに、列車に乗るときに早速リングとして使うことになるはずだ。

「え! ここでハメるのですか?」
 ミキが何故か驚いた様子だ。

「何かまずかったか?」
「いえ、少し恥ずかしくて……」
 ミキはチラチラと店員の方を見ている。

 指輪を嵌めるということは、人に見られると恥ずかしいことなのだろうか?
 でもまあ、ミキが恥ずかしいと言うのなら仕方がない。

「少し席を外してもらっていいだろうか」
「わかりました。終わりましたらお声がけください」
 ボクは店員にお願いしてミキと二人だけにしてもらう。

「それでは嵌めるとするか」
「では少々お待ちください」

 なぜかミキが服を脱ぎ出した。

「ミキ! 何をしているんだ?」
「え? ハメるなら脱いだ方がいいかと……」

「いや、服を脱ぐ必要はないだろう」
「あっ。着衣のままがお好みでしたか?」

「指に嵌めるだけなのに着衣も何も関係ないだろう」
「ああ、指ハメですから。ならどうぞ」

 ミキはボクの手首を掴むと、もう片方の手でスカートをたくし上げ、その中にボクの手を誘い込もうとした。

「ちょちょ、ちょっと! 何するの?」
「指ハメされるのではないのですか?」

 ボクは必死に腕を引こうとしているが、ミキの力が強く引き戻すことができない。
 ミキが力持ちというのは本当のことだったようだ。

「指に指輪を嵌めるだけだから!」
「えー! それだけですか?!」

「当然だろう」
「そうですか。まあ、こんな所ではゆっくりできませんものね」

 ミクはやっとボクの手首を離してくれた。

「それではお願いします」
 なぜかミキが左手をボクの前に突き出した。

「えーと、これは?」
「薬指に嵌めてください」

「ああ、指輪をボクが嵌めればいいのか。薬指ね」
 ボクはミキ用の指輪を手に取ると、彼女の左手の薬指にそれを嵌めた。

「ありがとうございます。大切にします」
 ミキは涙を浮かべながら微笑んだ。
 そこまで嬉しいものだろうか?

「それじゃあ、マレック様には私が……」
 ミキはボク用の指輪を手に取ると、もう片方の手でボクの左手を取った。そして、やはり薬指に指輪を嵌めたのだった。

 指輪を嵌めただけなのに、なんだか凄く気恥ずかしい。店員に外に出てもらっていてよかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...