名門魔術師を騙る詐欺師一族の三男は、ワザと不器用なフリをして狙い通り勘当されハンターになるが、なぜかメイドがついてきてエロエロな生活を送る

なつきコイン

文字の大きさ
上 下
2 / 23

第2話 兄たちとメイド

しおりを挟む
 玄関ホールには二人の兄が、勘当されたボクを待ち受けていた。

「マレック、遂にこの屋敷を追い出されたのか?」
「まあ、お前は不器用でカード魔術もろくにできなかったからな」
「兄さんたちの言うとおりだよ。もう会うこともないだろうけどお元気で」
 ボクのことを虐めてくる兄たちに逆らってもいいことはない。素直に認めて、別れの挨拶をする。これでもう、虐められることはなくなるだろうと思うと清々する。

「お前、出ていくのはいいが、外で魔術の秘密をバラすなよ」
 上の兄であるホルック兄さんが威圧を込めた言葉をかけてくる。

「追い出されたボクが外で本当のことを言っても、誰も信じてくれないよ」
「そうだな。逆に嘘つき呼ばわりされるだけだから、気をつけろよ。ガッハッハッハッ」
 下の兄であるバラック兄さんが無駄なことはするなと、皮肉を込めて可笑しそうに笑った。

 まあ、今までも魔術など嘘ではないかと噂に上ることはあったが、それらは全てアートランク一族によって文字通り封殺されてしまったのだから、ボクも無駄なことをして命を縮めるつもりはない。
 それに、家族のことは好きではないが、陥れようとまでは思っていない。

「それじゃあ、ボクはもう行くよ」
「長生きしたければ自分の言動に気をつけろよ」
 ホルック兄さんは最後まで釘を刺すことを忘れないようだ。

「ミキのことは心配するな。俺様が可愛がってやるからな。ガッハッハッハッ」
「ッ!」

 ミキというのはボクの専属メイドのことだ。勘当されて、今はもう専属だったになってしまったが……。
 バラック兄さんは前からミキを狙っていたが、ボクの専属ということで手が出せなかった。
 だが、ボクが勘当されたこととにより、専属だからという防壁が無くなってしまった。
 使用人がみんなボクのことを蔑むようになるなか、ミキだけは変わらずボクに仕えてくれたのだが、ミキには申し訳ないことをしたことになる。
 だからといって、今更、ボクに何かできるわけもない。なんとか、自力でバラック兄さんの魔の手から逃れてもらいたいものだ。

「ガッハッハッハッ」

 バラック兄さん馬鹿笑いを聴きながら玄関を出ると、そのまま振り返らずに屋敷の門も潜った。
 ここからは自分一人で生きていかなければいけない。そう、決意を新たにしたところで、ボクはボクを呼ぶ声に気がついた。

「マレック坊ちゃん、お待ちください!」
 呼び止められて振り返ると、門を抜け追いかけて来たのはボクの専属メイドを務めていたミキだった。

「ミキ、ボクはもう勘当されて屋敷を追い出されたんだ。坊ちゃんはやめてくれ」
「それではマレック様」

 様もどうかと思うけど、坊ちゃんよりマシか。
「ミキには申し訳ないことになってしまった。すまなかった。頭を下げることしかできないが許してくれ」
「頭を上げてください。謝っていただく必要はありません」

「そうか、すまない。それで、何か用か?」
 まさか見送りのためにわざわざ来たわけではないだろう。

「忘れ物です」
 ミキはボストンバッグを一つ持っていた。
 この短時間に着替えを詰めて持ってきてくれたのだろう。

「ありがとう」
 ボクはお礼を言ってバッグを受け取ろうとしたが、ミキはそれを渡してくれなかった。

「荷物を持つのはメイドの仕事です」
「でも、ミキはもうボクのメイドじゃないだろ」

「いえ、私はずっとマレック様の専属メイドです」
「いや、ボク、勘当されて屋敷を追い出されたんだけど? ミキはアートランク伯爵家に雇われているんだよね?」

「いえ、私はマレック様に雇われている契約になっています。ですからマレック様にお供します」
「え? そんな契約したっけ?」

「こちらがその契約書になります」
 ミキは用意がいいことに、契約書を取り出すとボクの前に広げて見せた。
 そう言われれば、専属メイドが決まった時に契約書を交わしていたな。

 秘密が多い家だから秘密保持のための契約だろうと思い、ろくに中身を確認せずにサインをしたが、広げられた契約書を今更よく読んでみると、雇い主がボクの名前になっている。それに、この契約内容はどうなんだ?

「ミキはこの契約内容に納得しているの?」
「もちろんです。ですから、夜のお勤めもお任せください」
 そういえば、今までも何度もミキから夜のベッドに誘われていたが、冗談だと思っていた。

「もしかして、そういうことに馴れているの?」
「初めてですが、いろいろ勉強しました。お任せください」
 ミキは恥ずかしそうに体をくねらせながら答えた。
 そうか、初めてか……。それに、いろいろ勉強って、どんな勉強だ?

 気にはなるが、ボクと一緒に行けば苦労をかけることになる。だが、屋敷に戻したところでバラック兄さんの餌食になるのは目に見えている。それならボクが美味しくいただいた方が……って、何を考えているんだボクは!

 それより、本当にボクと一緒に行く気なのかちゃんと確認したほうがいい。
「ミキ、契約に縛られる必要はない。例え一緒に行ってくれなくてもボクは咎めはしないよ」
「いえ、契約に関係なく、私はマレック様と一緒にイキたいです」

 ボクのことを見上げるミキの瞳がハートマークになっているような気がするが、それはきっとボクの気の所為だろう。

「わかった、じゃあ一緒に行こう」
「はい。それではどこのホテルにします?」

「いや、まだ日も高いし、とりあえずこの街を出よう」
 バラック兄さんが、ミキがいないことに気づいて追ってこないとも限らない。そうなると厄介だ。早くこの街を離れた方がいい。

「いきなり野外ですか?」
「いや、歩いていくわけでなく、列車を使うつもりだから、野宿をするつもりはないよ」
 魔導列車を使えば明日の夕方までには目的地に着くだろう。車内泊になるが野宿よりはいいだろう。

「列車で痴漢プレイですか!」
「ミキは何を言ってるんだい?」

「え? 勉強の成果についてですが……」
「……。とりあえず、駅まで急ごう。バッグはボクが持つよ」

「大丈夫です。荷物持ちはメイドの仕事ですから。こう見えて、私、力持ちなんですよ」
「そうかい。でも、疲れたら代わるからね。必ず言ってくれよ」

「わかりました。ありがとうございます」
「じゃあ、行こうか」

 こうして魔術の名門伯爵家を勘当されたボクは、ちょっとエッチな専属メイドのミキと一緒に駅への道を急いだのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

俺だけ皆の能力が見えているのか!?特別な魔法の眼を持つ俺は、その力で魔法もスキルも効率よく覚えていき、周りよりもどんどん強くなる!!

クマクマG
ファンタジー
勝手に才能無しの烙印を押されたシェイド・シュヴァイスであったが、落ち込むのも束の間、彼はあることに気が付いた。『俺が見えているのって、人の能力なのか?』  自分の特別な能力に気が付いたシェイドは、どうやれば魔法を覚えやすいのか、どんな練習をすればスキルを覚えやすいのか、彼だけには魔法とスキルの経験値が見えていた。そのため、彼は効率よく魔法もスキルも覚えていき、どんどん周りよりも強くなっていく。  最初は才能無しということで見下されていたシェイドは、そういう奴らを実力で黙らせていく。魔法が大好きなシェイドは魔法を極めんとするも、様々な困難が彼に立ちはだかる。時には挫け、時には悲しみに暮れながらも周囲の助けもあり、魔法を極める道を進んで行く。これはそんなシェイド・シュヴァイスの物語である。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...