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第一部 借金奴隷編
第26話 交渉
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エンシェントエルフのことで、混乱してしまいましたが、気を取り直して、自己紹介からやり直すことにしました。
「モーデル工房のモーリス・モーデルよ。みた通りエルフなの。よろしくね」
モーリスがマーサルに流し目を送ります。
「僕はマーサル。冒険者です。それで、こっちが、妹のミハル」
「ミハルです」
「それで、何か作ってもらいたい物があるのかい?」
「クーラーと製氷機です」
「クーラーというのはわからないけど、製氷機は名前からして、氷を作る機械だろ。それは無理だな。
作ろうとすれば、作れないことはないが、必要な魔力が多過ぎて、使い物にならない」
「クーラーというのは、冷たい空気を出して、部屋を涼しくする機械なのですが……」
「なら、それも駄目だな。ようはそれ、部屋全体を冷蔵庫にするようなものだろう。どれだけ氷が必要だと思う」
「あれ? 冷蔵庫ってあるのか?」
マーサルが私に確認してきます。
冷蔵庫はこの国にもあります。ただ、マーサルが知っているものと違いますが。
「あるけど、氷を使って冷やすのよ」
「ああ、成る程」
「納得したか。じゃあお帰り願おう」
マーサルは冷蔵庫の違いについて納得したようですが、モーリスはそれを、クーラーと製氷機ができないことに納得したと誤解したようです。
「あ、違うんです! 待ってください! 今から説明します」
慌ててマーサルが説明します。
「実は、風魔法を使って温度を下げる方法を思いついたんです」
「風を当てれば温度が下がるのは普通だが?」
「そうじゃなくて、氷ができるほど温度を下げる方法です」
「風魔法でか? 氷魔法でなく。信じられないな」
「なら、実際にやってみせます。
ミハル。このカップのお茶を凍らせてみてくれるかい」
「わかったわ。このカップの周りだけ温度を下げればいいわね!」
私は、やり過ぎないように加減をして、空気を圧縮します。
「何か、熱くなってるけど。なにをしているんだい?」
「空気を圧縮しています。次に、圧縮したままの状態で風を当てて冷やします」
「ちょっと、随分器用なまねしてるね。普通、そんなことできないよ」
「魔力操作SSSですから!」
「スリーエスなのかい。それにしたってこれは……」
「そうしたら、この空気をカップの周りに移動して、圧縮をやめます」
カップの周りに霜が付き、中のお茶が凍っていきます。
モーリスさんが確認するように手を出します。
「冷たい!」
モーリスさんは狐につままれたような顔です。
「風魔法で、空気を動かしているだけなので、魔力量は殆どいりません。
ですが、魔法だけでやろうとしたら、魔力操作が大変です」
「そりゃあそうだろうね。普通なら、圧縮もできない!」
「ただ、空気を入れる容器を用意すれば、簡単です」
「確かに、容器が有れば私でもできそうだ。これなら、クーラーや製氷機もできるだろう。冷蔵庫も今までの概念を変えるものができるな!」
「こんな感じになると思いますが、お願いできますか?」
マーサルが予め書いておいた模式図を見せお願いします。
「成る程、パイプを使うのか……うーむ」
模式図を見て、モーリスさんは呻き声をもらします。
「これ、売り先は決まっているのか?」
「いえ、一ヶ所は自分たちが泊まっている宿に設置する予定ですが、販売先はまだ決まっていません」
「なら、私に販売する権利を売ってくれ!」
「販売する権利ですか?」
「君たちは冒険者だったよな。こういった物の販売には慣れてないだろう。私なら、顔が効く。悪い話ではないと思うが?」
「そうですね。お売りしてもいいですが、いくらで買い取ってくださるのですか?」
「そうか、なら、白金貨一枚でどうだ!」
「販売先は、領主か、貴族のお屋敷ですか? もしかして、王宮ですか? 一体いくらで販売する気です?」
「わかったわ。白金貨十枚。これでどう」
「白金貨十枚……」
なんと、一気に借金奴隷から解放されます。
「これでも駄目なの? あなたたち、本当に冒険者?」
「今は、冒険者ですよ」
「そういうこと……。わかったわ。即金で白金貨七枚と、売上が出るごとに利益の一割、いえ、二割出すわ。これ以上の譲歩はないわよ!」
あれ、まごまごしているうちに白金貨十枚から七枚に下げられてしまいました。
これでは直ぐには借金奴隷から解放されません。
ですが、利益の二割をもらえるなら、ゆくゆくはその方が儲かることになるのでしょう。
「ミハル。僕はこれでいいと思うけど、どうする?」
「宿に設置する分が無料なら、その条件でいいわ」
「しっかりしてるわね。それじゃあ、それで契約を結ぶわよ!」
「ところで、これ、模造品の心配しなくていいんですか?」
今更ですが私はモーリスさんに聞いてみます。
「こういう、仕組みを知られたくない場合は、ブラックボクスを使うから大丈夫よ」
「ブラックボクスですか?」
「箱を封印して、開けると中身が壊れるようにするのよ。
今回の場合のように、販売先がわかっている場合、封印を解いたら、損害賠償を請求する場合もあるわ」
「ああ、そうやって模造ができないようにしているのですね」
「そういうこと」
結局、冷蔵庫も作ることになり、昼間までかけて詳細を詰めることになりました。
「モーデル工房のモーリス・モーデルよ。みた通りエルフなの。よろしくね」
モーリスがマーサルに流し目を送ります。
「僕はマーサル。冒険者です。それで、こっちが、妹のミハル」
「ミハルです」
「それで、何か作ってもらいたい物があるのかい?」
「クーラーと製氷機です」
「クーラーというのはわからないけど、製氷機は名前からして、氷を作る機械だろ。それは無理だな。
作ろうとすれば、作れないことはないが、必要な魔力が多過ぎて、使い物にならない」
「クーラーというのは、冷たい空気を出して、部屋を涼しくする機械なのですが……」
「なら、それも駄目だな。ようはそれ、部屋全体を冷蔵庫にするようなものだろう。どれだけ氷が必要だと思う」
「あれ? 冷蔵庫ってあるのか?」
マーサルが私に確認してきます。
冷蔵庫はこの国にもあります。ただ、マーサルが知っているものと違いますが。
「あるけど、氷を使って冷やすのよ」
「ああ、成る程」
「納得したか。じゃあお帰り願おう」
マーサルは冷蔵庫の違いについて納得したようですが、モーリスはそれを、クーラーと製氷機ができないことに納得したと誤解したようです。
「あ、違うんです! 待ってください! 今から説明します」
慌ててマーサルが説明します。
「実は、風魔法を使って温度を下げる方法を思いついたんです」
「風を当てれば温度が下がるのは普通だが?」
「そうじゃなくて、氷ができるほど温度を下げる方法です」
「風魔法でか? 氷魔法でなく。信じられないな」
「なら、実際にやってみせます。
ミハル。このカップのお茶を凍らせてみてくれるかい」
「わかったわ。このカップの周りだけ温度を下げればいいわね!」
私は、やり過ぎないように加減をして、空気を圧縮します。
「何か、熱くなってるけど。なにをしているんだい?」
「空気を圧縮しています。次に、圧縮したままの状態で風を当てて冷やします」
「ちょっと、随分器用なまねしてるね。普通、そんなことできないよ」
「魔力操作SSSですから!」
「スリーエスなのかい。それにしたってこれは……」
「そうしたら、この空気をカップの周りに移動して、圧縮をやめます」
カップの周りに霜が付き、中のお茶が凍っていきます。
モーリスさんが確認するように手を出します。
「冷たい!」
モーリスさんは狐につままれたような顔です。
「風魔法で、空気を動かしているだけなので、魔力量は殆どいりません。
ですが、魔法だけでやろうとしたら、魔力操作が大変です」
「そりゃあそうだろうね。普通なら、圧縮もできない!」
「ただ、空気を入れる容器を用意すれば、簡単です」
「確かに、容器が有れば私でもできそうだ。これなら、クーラーや製氷機もできるだろう。冷蔵庫も今までの概念を変えるものができるな!」
「こんな感じになると思いますが、お願いできますか?」
マーサルが予め書いておいた模式図を見せお願いします。
「成る程、パイプを使うのか……うーむ」
模式図を見て、モーリスさんは呻き声をもらします。
「これ、売り先は決まっているのか?」
「いえ、一ヶ所は自分たちが泊まっている宿に設置する予定ですが、販売先はまだ決まっていません」
「なら、私に販売する権利を売ってくれ!」
「販売する権利ですか?」
「君たちは冒険者だったよな。こういった物の販売には慣れてないだろう。私なら、顔が効く。悪い話ではないと思うが?」
「そうですね。お売りしてもいいですが、いくらで買い取ってくださるのですか?」
「そうか、なら、白金貨一枚でどうだ!」
「販売先は、領主か、貴族のお屋敷ですか? もしかして、王宮ですか? 一体いくらで販売する気です?」
「わかったわ。白金貨十枚。これでどう」
「白金貨十枚……」
なんと、一気に借金奴隷から解放されます。
「これでも駄目なの? あなたたち、本当に冒険者?」
「今は、冒険者ですよ」
「そういうこと……。わかったわ。即金で白金貨七枚と、売上が出るごとに利益の一割、いえ、二割出すわ。これ以上の譲歩はないわよ!」
あれ、まごまごしているうちに白金貨十枚から七枚に下げられてしまいました。
これでは直ぐには借金奴隷から解放されません。
ですが、利益の二割をもらえるなら、ゆくゆくはその方が儲かることになるのでしょう。
「ミハル。僕はこれでいいと思うけど、どうする?」
「宿に設置する分が無料なら、その条件でいいわ」
「しっかりしてるわね。それじゃあ、それで契約を結ぶわよ!」
「ところで、これ、模造品の心配しなくていいんですか?」
今更ですが私はモーリスさんに聞いてみます。
「こういう、仕組みを知られたくない場合は、ブラックボクスを使うから大丈夫よ」
「ブラックボクスですか?」
「箱を封印して、開けると中身が壊れるようにするのよ。
今回の場合のように、販売先がわかっている場合、封印を解いたら、損害賠償を請求する場合もあるわ」
「ああ、そうやって模造ができないようにしているのですね」
「そういうこと」
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