黒髪だからと罪を着せられ奴隷にされた『元ギルドの受付嬢』黒髪青年に助けられチート魔法で『冒険者』生活満喫中! その頃、元いたギルドは大混乱!

なつきコイン

文字の大きさ
上 下
32 / 55
第一部 借金奴隷編

第26話 交渉

しおりを挟む
 エンシェントエルフのことで、混乱してしまいましたが、気を取り直して、自己紹介からやり直すことにしました。

「モーデル工房のモーリス・モーデルよ。みた通りエルフなの。よろしくね」
 モーリスがマーサルに流し目を送ります。
「僕はマーサル。冒険者です。それで、こっちが、妹のミハル」
「ミハルです」

「それで、何か作ってもらいたい物があるのかい?」
「クーラーと製氷機です」
「クーラーというのはわからないけど、製氷機は名前からして、氷を作る機械だろ。それは無理だな。
 作ろうとすれば、作れないことはないが、必要な魔力が多過ぎて、使い物にならない」

「クーラーというのは、冷たい空気を出して、部屋を涼しくする機械なのですが……」
「なら、それも駄目だな。ようはそれ、部屋全体を冷蔵庫にするようなものだろう。どれだけ氷が必要だと思う」
「あれ? 冷蔵庫ってあるのか?」

 マーサルが私に確認してきます。
 冷蔵庫はこの国にもあります。ただ、マーサルが知っているものと違いますが。

「あるけど、氷を使って冷やすのよ」
「ああ、成る程」
「納得したか。じゃあお帰り願おう」

 マーサルは冷蔵庫の違いについて納得したようですが、モーリスはそれを、クーラーと製氷機ができないことに納得したと誤解したようです。

「あ、違うんです! 待ってください! 今から説明します」
 慌ててマーサルが説明します。

「実は、風魔法を使って温度を下げる方法を思いついたんです」
「風を当てれば温度が下がるのは普通だが?」
「そうじゃなくて、氷ができるほど温度を下げる方法です」

「風魔法でか? 氷魔法でなく。信じられないな」
「なら、実際にやってみせます。
 ミハル。このカップのお茶を凍らせてみてくれるかい」
「わかったわ。このカップの周りだけ温度を下げればいいわね!」

 私は、やり過ぎないように加減をして、空気を圧縮します。

「何か、熱くなってるけど。なにをしているんだい?」
「空気を圧縮しています。次に、圧縮したままの状態で風を当てて冷やします」

「ちょっと、随分器用なまねしてるね。普通、そんなことできないよ」
「魔力操作SSSですから!」

「スリーエスなのかい。それにしたってこれは……」
「そうしたら、この空気をカップの周りに移動して、圧縮をやめます」

 カップの周りに霜が付き、中のお茶が凍っていきます。
 モーリスさんが確認するように手を出します。

「冷たい!」

 モーリスさんは狐につままれたような顔です。

「風魔法で、空気を動かしているだけなので、魔力量は殆どいりません。
 ですが、魔法だけでやろうとしたら、魔力操作が大変です」
「そりゃあそうだろうね。普通なら、圧縮もできない!」

「ただ、空気を入れる容器を用意すれば、簡単です」
「確かに、容器が有れば私でもできそうだ。これなら、クーラーや製氷機もできるだろう。冷蔵庫も今までの概念を変えるものができるな!」

「こんな感じになると思いますが、お願いできますか?」
 マーサルが予め書いておいた模式図を見せお願いします。

「成る程、パイプを使うのか……うーむ」
 模式図を見て、モーリスさんは呻き声をもらします。

「これ、売り先は決まっているのか?」
「いえ、一ヶ所は自分たちが泊まっている宿に設置する予定ですが、販売先はまだ決まっていません」

「なら、私に販売する権利を売ってくれ!」
「販売する権利ですか?」

「君たちは冒険者だったよな。こういった物の販売には慣れてないだろう。私なら、顔が効く。悪い話ではないと思うが?」
「そうですね。お売りしてもいいですが、いくらで買い取ってくださるのですか?」

「そうか、なら、白金貨一枚でどうだ!」
「販売先は、領主か、貴族のお屋敷ですか? もしかして、王宮ですか? 一体いくらで販売する気です?」

「わかったわ。白金貨十枚。これでどう」
「白金貨十枚……」
 なんと、一気に借金奴隷から解放されます。

「これでも駄目なの? あなたたち、本当に冒険者?」
「今は、冒険者ですよ」
「そういうこと……。わかったわ。即金で白金貨七枚と、売上が出るごとに利益の一割、いえ、二割出すわ。これ以上の譲歩はないわよ!」

 あれ、まごまごしているうちに白金貨十枚から七枚に下げられてしまいました。
 これでは直ぐには借金奴隷から解放されません。
 ですが、利益の二割をもらえるなら、ゆくゆくはその方が儲かることになるのでしょう。

「ミハル。僕はこれでいいと思うけど、どうする?」
「宿に設置する分が無料なら、その条件でいいわ」
「しっかりしてるわね。それじゃあ、それで契約を結ぶわよ!」

「ところで、これ、模造品の心配しなくていいんですか?」
 今更ですが私はモーリスさんに聞いてみます。

「こういう、仕組みを知られたくない場合は、ブラックボクスを使うから大丈夫よ」
「ブラックボクスですか?」
「箱を封印して、開けると中身が壊れるようにするのよ。
 今回の場合のように、販売先がわかっている場合、封印を解いたら、損害賠償を請求する場合もあるわ」

「ああ、そうやって模造ができないようにしているのですね」
「そういうこと」

 結局、冷蔵庫も作ることになり、昼間までかけて詳細を詰めることになりました。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

君がくれた花束(GL)

五菜みやみ
恋愛
コスメ雑誌編集者の伊波結希は、大学生の頃に付き合っていた彼女にこっぴどく振られて以降、仕事に日々を注いで生きて来た。 ある日、同僚が懇意にしている相手であり、結希もプライベートでは仲良くしていた男性が受付嬢に絡んでいる所を目撃する。 知り合いの様子に呆れながらも、受付嬢の女性を助ける結希。 絡まれていた受付嬢の鈴原美菜は、外見中身ともに結希の好みのタイプで、思わず一目惚れをしてしまい──。 恋に臆病なアラサー女子×隠れゲーマー女子 純粋に相手を想う気持ちが紡ぐ、純愛ラブストーリー。

Sランク冒険者の受付嬢

おすし
ファンタジー
王都の中心街にある冒険者ギルド《ラウト・ハーヴ》は、王国最大のギルドで登録冒険者数も依頼数もNo.1と実績のあるギルドだ。 だがそんなギルドには1つの噂があった。それは、『あのギルドにはとてつもなく強い受付嬢』がいる、と。 そんな噂を耳にしてギルドに行けば、受付には1人の綺麗な銀髪をもつ受付嬢がいてー。 「こんにちは、ご用件は何でしょうか?」 その受付嬢は、今日もギルドで静かに仕事をこなしているようです。 これは、最強冒険者でもあるギルドの受付嬢の物語。 ※ほのぼので、日常:バトル=2:1くらいにするつもりです。 ※前のやつの改訂版です ※一章あたり約10話です。文字数は1話につき1500〜2500くらい。

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。

りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。 やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか 勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。 ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。 蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。 そんな生活もううんざりです 今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。 これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

処理中です...