15 / 55
第一部 借金奴隷編
舞台裏3 女神
しおりを挟む
「誰よ!! 異界との境界に穴を開けたのは! 人が落ちてきちゃったじゃない!」
プランタニエがギルドで無実の罪を着せられている頃、この世界の管理官、女神アリエスは困り果てていた。
異界との境界に穴が開き、男が一人こちらの世界に落ちてきてしまったのだ。
たとえ女神であっても、異界から落ちてきたものを戻すことはできない。
そんなわけで、この男はこのまま地上に下ろすしかないのだが……。
「一応、地上に下ろしても害がないか確認しておきましょうか」
女神アリエスは男の詳細を調べた。
「これは、なんてことだ! この男、神の左目の眷属じゃないか! それで黒髪なのか。
てことは、落ちてきたのは、偶然じゃなく、召喚されたのか?
いや、待て、そうなるとこの世界に神の左目がいることになる……。
そんな、神の左目が転生しているなんて聞かされていないぞ!」
降って湧いたような事態に女神アリエスは慌てふためいた。
「これは確認が必要だな」
それでも、直ぐに気を取り直して女神アリエスは、神界の転生管理官に連絡を取った。
「リゲルか。お前! 私の世界に神の左目を転生させてないだろうな!」
「何のことかな?」
「とぼけるな! 神の左目の眷属が異界から召喚されて来た。つまり、私の世界に神の左目がいるということだろう」
「眷属を召喚したの?
アリエスの世界なら魔法の仕組みが他と違うから、神の左目でも魔法が使えないだろうと思ったけど、考えが甘かったか……」
実は、ギルドで追い詰められたプランタニエが、助けを求めて無意識に召喚していたのだ。
「やはり、転生させたのだな。なぜ報告しなかった!」
「それが、最初は神の左目だと気付かなくて……」
「誰よりも強力な魔力を持っている神の左目に、気付かないわけないだろう」
「いや、本当に神の左目だとは気づかなくてさ……。逆に、この魔力は危険だと判断して、魔法の仕組みが他とは違うアリエスの世界に転生させたんだ」
「それなら、わかった時点で報告すればいいだろう!」
「そんな、間違って転生させました。なんて報告したら、シリウスみたいに左遷されちゃうよ」
シリウスは、以前同じような失敗をして降格させられた先輩女神である。
「今からじゃあ左遷では済まないな!」
「そんなー」
「神の左目が転生しているなら、こちらはこちらでやれることをやる。じゃあな!」
女神アリエスは一方的に連絡を切った。それだけ、頭にきていた。
ホウレンソウ。報告、連絡、相談、これ大事。
「やれることをやる。といったものの、下手に干渉すると藪蛇になりかねないからな。触らぬ神に祟りなしともいうし、このまま静観が一番かな?
ただな。下手に事故や事件で死なれても責任問題になりかねないからな。
サポート役を付けたいところなのだが……。
そうだ、この眷属をこの世界の魔法が使えるよう強化しておこう。他にも必要な能力を与えて、これで神の左目を完璧にサポートできるだろう!」
女神アリエスは、チートと呼ぶにふさわしい能力を男に与え地上に下ろした。
「それにしても黒髪か……」
この世界で黒は特別な意味を持つ。
何ものにも染まらない強さの象徴。最高神を示す色なのである。
「わかっているだろうが、一応、聖女には伝えておくか。ホウレンソウは大事だからな」
『クロカミノケンゾクガチジョウニアラワレタ、テダシヲシテハイケナイ』
「後は、神の左目が、何事の問題を起こさずに、天寿を全うして、この世界を去ってくれるのを祈るだけか……」
一方、一方的に連絡を切られた女神リゲルはというと。
「もうー、まだ話さなければならないことがあったのにー」
実は、女神リゲルは神の左目がアリエスの世界で亡くなって、自分の所に戻ってこないように、アリエスの世界で、無限に近い寿命を持つ、神話上の存在として設定されていた、古代エルフに転生させていたのである。
「まあ、向こうが勝手に切ったんだし、もういいか」
女神リゲルは、改めて女神アリエスに連絡を取ることはしなかった。
このことにより、女神アリエスは、神の左目が古代エルフであることを、知ることができなかった。
ホウレンソウの大切さを、まだわかっていない女神リゲルであった。
プランタニエがギルドで無実の罪を着せられている頃、この世界の管理官、女神アリエスは困り果てていた。
異界との境界に穴が開き、男が一人こちらの世界に落ちてきてしまったのだ。
たとえ女神であっても、異界から落ちてきたものを戻すことはできない。
そんなわけで、この男はこのまま地上に下ろすしかないのだが……。
「一応、地上に下ろしても害がないか確認しておきましょうか」
女神アリエスは男の詳細を調べた。
「これは、なんてことだ! この男、神の左目の眷属じゃないか! それで黒髪なのか。
てことは、落ちてきたのは、偶然じゃなく、召喚されたのか?
いや、待て、そうなるとこの世界に神の左目がいることになる……。
そんな、神の左目が転生しているなんて聞かされていないぞ!」
降って湧いたような事態に女神アリエスは慌てふためいた。
「これは確認が必要だな」
それでも、直ぐに気を取り直して女神アリエスは、神界の転生管理官に連絡を取った。
「リゲルか。お前! 私の世界に神の左目を転生させてないだろうな!」
「何のことかな?」
「とぼけるな! 神の左目の眷属が異界から召喚されて来た。つまり、私の世界に神の左目がいるということだろう」
「眷属を召喚したの?
アリエスの世界なら魔法の仕組みが他と違うから、神の左目でも魔法が使えないだろうと思ったけど、考えが甘かったか……」
実は、ギルドで追い詰められたプランタニエが、助けを求めて無意識に召喚していたのだ。
「やはり、転生させたのだな。なぜ報告しなかった!」
「それが、最初は神の左目だと気付かなくて……」
「誰よりも強力な魔力を持っている神の左目に、気付かないわけないだろう」
「いや、本当に神の左目だとは気づかなくてさ……。逆に、この魔力は危険だと判断して、魔法の仕組みが他とは違うアリエスの世界に転生させたんだ」
「それなら、わかった時点で報告すればいいだろう!」
「そんな、間違って転生させました。なんて報告したら、シリウスみたいに左遷されちゃうよ」
シリウスは、以前同じような失敗をして降格させられた先輩女神である。
「今からじゃあ左遷では済まないな!」
「そんなー」
「神の左目が転生しているなら、こちらはこちらでやれることをやる。じゃあな!」
女神アリエスは一方的に連絡を切った。それだけ、頭にきていた。
ホウレンソウ。報告、連絡、相談、これ大事。
「やれることをやる。といったものの、下手に干渉すると藪蛇になりかねないからな。触らぬ神に祟りなしともいうし、このまま静観が一番かな?
ただな。下手に事故や事件で死なれても責任問題になりかねないからな。
サポート役を付けたいところなのだが……。
そうだ、この眷属をこの世界の魔法が使えるよう強化しておこう。他にも必要な能力を与えて、これで神の左目を完璧にサポートできるだろう!」
女神アリエスは、チートと呼ぶにふさわしい能力を男に与え地上に下ろした。
「それにしても黒髪か……」
この世界で黒は特別な意味を持つ。
何ものにも染まらない強さの象徴。最高神を示す色なのである。
「わかっているだろうが、一応、聖女には伝えておくか。ホウレンソウは大事だからな」
『クロカミノケンゾクガチジョウニアラワレタ、テダシヲシテハイケナイ』
「後は、神の左目が、何事の問題を起こさずに、天寿を全うして、この世界を去ってくれるのを祈るだけか……」
一方、一方的に連絡を切られた女神リゲルはというと。
「もうー、まだ話さなければならないことがあったのにー」
実は、女神リゲルは神の左目がアリエスの世界で亡くなって、自分の所に戻ってこないように、アリエスの世界で、無限に近い寿命を持つ、神話上の存在として設定されていた、古代エルフに転生させていたのである。
「まあ、向こうが勝手に切ったんだし、もういいか」
女神リゲルは、改めて女神アリエスに連絡を取ることはしなかった。
このことにより、女神アリエスは、神の左目が古代エルフであることを、知ることができなかった。
ホウレンソウの大切さを、まだわかっていない女神リゲルであった。
12
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。
3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。
そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!!
こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!!
感想やご意見楽しみにしております!
尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる