4 / 55
第一部 借金奴隷編
第4話 護送
しおりを挟む
ギルドの受付嬢を冤罪でクビになった二日後。
私は、住み慣れたミマスの街から、王都アマルティアに向かって馬車に揺られています。
ミマスの街から王都アマルティアまでは、馬車で二日、徒歩なら四日といったところです。
今回も途中の村で一泊していくことになるでしょう。
これが、観光や買い物のためだったらどれだけ良かったことでしょう。
いや、贅沢は言いません。仕事のためだったとしても今の状況に比べれば百倍マシです。
何故なら、私は檻に入れられ王都に護送されているところだからです。
冒険者ギルドの受付嬢だった私は、横領の容疑をかけられて、ギルドをクビになっただけでなく、その弁済として借金奴隷に落とされ、王都の奴隷商に売られていくことになりました。
もう、気分は市場に売られていく子牛のようです。
勿論、私は横領なんかしていません。
逆に横領の事実を見つけ、ギルドマスターに報告したのに、いつのまにか私が犯人だったことにされてしまいました。
無実を訴えても、誰も味方してくれませんでした。
それも、私が黒髪に黒い瞳だったため、ギルド内で爪弾きにされていたので、仕方ないのかもしれません。
自分で言うのも何ですが、こんな見た目ですが、仕事に関しては優秀で(オリジナル魔法を使っていましたから)、余計に周りからのやっかみを受けていました。
特に同期で入った、同じ受付嬢のマリーさんには、目の敵にされていました。
AランクやBランクのベテランの冒険者は殆どが私の担当でした。私が受付の集計係に昇格したのも気に入らなかったのでしょう。
でもそれは逆恨みというものだと思うのです。
マリーさんに比べてば、私の方が圧倒的に計算が早くて正確なのですから!
新人冒険者なら見た目から、こんな見た目の私でなく、美人なマリーさんの方に行きますが、ベテランになれば、見た目より実利を取るようになるのは、仕方がないことだと思うのです。
それに、ギルドに入ってから既に五年以上経つのに、未だに帳簿をまともにつけられず、どんぶり勘定では駄目だと思うのです!
しかし、普通、五年も経つのに帳簿を付けられないなんてあるでしょうか?
マリーさんの場合、付けられないのではなくて、付けられないふりをしているだけではないかと思うのです。
そして、横領をしていたのはマリーさんではないかと……。
あれ? 気がつくと馬車が王都への街道からそれ、森の奥へ進む小道に入って行きます。
休憩を取るにしても、この森は魔物が出て危険な場所です。
ギルドにもよく魔獣の討伐依頼が来ていました。
「ちょっと。何処に向かっているの?」
私は御者をしていた冒険者に問いかけます。
「……」
返事がありません。
「この先は森の奥よ。魔獣が出て危険よ!」
「……」
完全に無視のようです。
「ねえ。この道プランさんが言った通り森の奥に向かっているみたいよ」
「なんだって? ちょっと確認してくる」
馬車の後に乗って後方の確認をしていた冒険者パーティが、私の話を聞いて疑問に思ったのか、パーティのリーダーの男の子が、私の閉じ込められている檻の脇を抜けて、前方で私を監視していた冒険者に近付き話を始めました。
「ロバートさん。街道から外れたようだけど何処に向かっているのですか?」
「心配するな。これは王都への抜け道なんだ」
「そうなのですか。ですが、魔獣が出て危険ではないのですか?」
「お前たちDランクパーティでは危険かもしれないが、Bランクの俺たちが付いているから大丈夫だ!」
「そうですか……。ならいいのですが……」
私を王都に護送するために態々冒険者が二パーティ、六人も担当していす。
御者をしているのがクラーク、前方で私を監視していた二人がロバートとウド。この柄の悪い男三人組が「ブラッククロウ」というパーティです。
最近Bランクに昇格したばかりのはずです。
ブラッククロウは、マリーさんと懇ろなパーティで、マリーさんが不正をしてBランクに昇格させたとの噂があります。
もう一つのパーティが、後方で監視に当たっていた「暁の明星」という、男の子一人と女の子二人のDランクパーティです。
イケメンの男の子がケリー君、女の子二人はローズとリリー。
最近名を上げている、期待の若手パーティです。
特にケリー君の人気は、若い女の子の間では急上昇中です。
しかし、私一人を護送するのに冒険者六人とは、大袈裟なのもいいところです。
当初はブラッククロウだけの予定でしたが、サブマスが「商品が傷物にされたら困るから」と言い張り、強引に女の子のいる暁の明星を同行させると決めてしまったのです。
確かに、その危険があり、ありがたいことなのですが、商品扱いは酷いのではないかと思うのです。
まあ、売られていく身ですから、商品なのかもしれませんが……。
そんなことより馬車の行き先です!
「ちょっと。騙されちゃ駄目よ! こんなところに王都への抜け道なんてないわよ!!」
私は暁の明星の男の子ケリー君に注意します。
「ロバートさん。プランさんはああ言ってますが?」
「チッ。面倒くせぇな。街道からもかなり離れたし、もうここでいいか?」
「どういうことですか?」
「取り敢えず、お前は死んどけ!!」
ロバートが剣を抜き、いきなりケリー君のお腹を突き刺しました。
私は、住み慣れたミマスの街から、王都アマルティアに向かって馬車に揺られています。
ミマスの街から王都アマルティアまでは、馬車で二日、徒歩なら四日といったところです。
今回も途中の村で一泊していくことになるでしょう。
これが、観光や買い物のためだったらどれだけ良かったことでしょう。
いや、贅沢は言いません。仕事のためだったとしても今の状況に比べれば百倍マシです。
何故なら、私は檻に入れられ王都に護送されているところだからです。
冒険者ギルドの受付嬢だった私は、横領の容疑をかけられて、ギルドをクビになっただけでなく、その弁済として借金奴隷に落とされ、王都の奴隷商に売られていくことになりました。
もう、気分は市場に売られていく子牛のようです。
勿論、私は横領なんかしていません。
逆に横領の事実を見つけ、ギルドマスターに報告したのに、いつのまにか私が犯人だったことにされてしまいました。
無実を訴えても、誰も味方してくれませんでした。
それも、私が黒髪に黒い瞳だったため、ギルド内で爪弾きにされていたので、仕方ないのかもしれません。
自分で言うのも何ですが、こんな見た目ですが、仕事に関しては優秀で(オリジナル魔法を使っていましたから)、余計に周りからのやっかみを受けていました。
特に同期で入った、同じ受付嬢のマリーさんには、目の敵にされていました。
AランクやBランクのベテランの冒険者は殆どが私の担当でした。私が受付の集計係に昇格したのも気に入らなかったのでしょう。
でもそれは逆恨みというものだと思うのです。
マリーさんに比べてば、私の方が圧倒的に計算が早くて正確なのですから!
新人冒険者なら見た目から、こんな見た目の私でなく、美人なマリーさんの方に行きますが、ベテランになれば、見た目より実利を取るようになるのは、仕方がないことだと思うのです。
それに、ギルドに入ってから既に五年以上経つのに、未だに帳簿をまともにつけられず、どんぶり勘定では駄目だと思うのです!
しかし、普通、五年も経つのに帳簿を付けられないなんてあるでしょうか?
マリーさんの場合、付けられないのではなくて、付けられないふりをしているだけではないかと思うのです。
そして、横領をしていたのはマリーさんではないかと……。
あれ? 気がつくと馬車が王都への街道からそれ、森の奥へ進む小道に入って行きます。
休憩を取るにしても、この森は魔物が出て危険な場所です。
ギルドにもよく魔獣の討伐依頼が来ていました。
「ちょっと。何処に向かっているの?」
私は御者をしていた冒険者に問いかけます。
「……」
返事がありません。
「この先は森の奥よ。魔獣が出て危険よ!」
「……」
完全に無視のようです。
「ねえ。この道プランさんが言った通り森の奥に向かっているみたいよ」
「なんだって? ちょっと確認してくる」
馬車の後に乗って後方の確認をしていた冒険者パーティが、私の話を聞いて疑問に思ったのか、パーティのリーダーの男の子が、私の閉じ込められている檻の脇を抜けて、前方で私を監視していた冒険者に近付き話を始めました。
「ロバートさん。街道から外れたようだけど何処に向かっているのですか?」
「心配するな。これは王都への抜け道なんだ」
「そうなのですか。ですが、魔獣が出て危険ではないのですか?」
「お前たちDランクパーティでは危険かもしれないが、Bランクの俺たちが付いているから大丈夫だ!」
「そうですか……。ならいいのですが……」
私を王都に護送するために態々冒険者が二パーティ、六人も担当していす。
御者をしているのがクラーク、前方で私を監視していた二人がロバートとウド。この柄の悪い男三人組が「ブラッククロウ」というパーティです。
最近Bランクに昇格したばかりのはずです。
ブラッククロウは、マリーさんと懇ろなパーティで、マリーさんが不正をしてBランクに昇格させたとの噂があります。
もう一つのパーティが、後方で監視に当たっていた「暁の明星」という、男の子一人と女の子二人のDランクパーティです。
イケメンの男の子がケリー君、女の子二人はローズとリリー。
最近名を上げている、期待の若手パーティです。
特にケリー君の人気は、若い女の子の間では急上昇中です。
しかし、私一人を護送するのに冒険者六人とは、大袈裟なのもいいところです。
当初はブラッククロウだけの予定でしたが、サブマスが「商品が傷物にされたら困るから」と言い張り、強引に女の子のいる暁の明星を同行させると決めてしまったのです。
確かに、その危険があり、ありがたいことなのですが、商品扱いは酷いのではないかと思うのです。
まあ、売られていく身ですから、商品なのかもしれませんが……。
そんなことより馬車の行き先です!
「ちょっと。騙されちゃ駄目よ! こんなところに王都への抜け道なんてないわよ!!」
私は暁の明星の男の子ケリー君に注意します。
「ロバートさん。プランさんはああ言ってますが?」
「チッ。面倒くせぇな。街道からもかなり離れたし、もうここでいいか?」
「どういうことですか?」
「取り敢えず、お前は死んどけ!!」
ロバートが剣を抜き、いきなりケリー君のお腹を突き刺しました。
11
お気に入りに追加
272
あなたにおすすめの小説
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
創造主のオレが主人公だとチート過ぎて物語が成り立たないので、脇役(デウスエクスマキナ)に徹することにした。
鏑木ディオス
ファンタジー
オレの名は春埼隆人(はるさきりゅうと)。 どこにでもいるような高校二年生だ。 ある日、本屋からの帰り道、トラックに轢かれそうになったオレは、間一髪のところで異世界の女神たちの手によって「異世界アルファザード」に強制転移させられた。 なんでも、オレにはとてつもない潜在能力が眠ってるようなので、トラックから命を救ってあげた代わりに一緒にこの世界の魔王軍と戦って欲しい…ってことらしい。 で、本格的にオレの潜在能力を調べようとした女神たちだったのだが…。
※この作品は「小説家になろう」さん「カクヨム」さん「ノベルアップ+」さんにも掲載しています。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺わかば
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる