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第一部 借金奴隷編
第4話 護送
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ギルドの受付嬢を冤罪でクビになった二日後。
私は、住み慣れたミマスの街から、王都アマルティアに向かって馬車に揺られています。
ミマスの街から王都アマルティアまでは、馬車で二日、徒歩なら四日といったところです。
今回も途中の村で一泊していくことになるでしょう。
これが、観光や買い物のためだったらどれだけ良かったことでしょう。
いや、贅沢は言いません。仕事のためだったとしても今の状況に比べれば百倍マシです。
何故なら、私は檻に入れられ王都に護送されているところだからです。
冒険者ギルドの受付嬢だった私は、横領の容疑をかけられて、ギルドをクビになっただけでなく、その弁済として借金奴隷に落とされ、王都の奴隷商に売られていくことになりました。
もう、気分は市場に売られていく子牛のようです。
勿論、私は横領なんかしていません。
逆に横領の事実を見つけ、ギルドマスターに報告したのに、いつのまにか私が犯人だったことにされてしまいました。
無実を訴えても、誰も味方してくれませんでした。
それも、私が黒髪に黒い瞳だったため、ギルド内で爪弾きにされていたので、仕方ないのかもしれません。
自分で言うのも何ですが、こんな見た目ですが、仕事に関しては優秀で(オリジナル魔法を使っていましたから)、余計に周りからのやっかみを受けていました。
特に同期で入った、同じ受付嬢のマリーさんには、目の敵にされていました。
AランクやBランクのベテランの冒険者は殆どが私の担当でした。私が受付の集計係に昇格したのも気に入らなかったのでしょう。
でもそれは逆恨みというものだと思うのです。
マリーさんに比べてば、私の方が圧倒的に計算が早くて正確なのですから!
新人冒険者なら見た目から、こんな見た目の私でなく、美人なマリーさんの方に行きますが、ベテランになれば、見た目より実利を取るようになるのは、仕方がないことだと思うのです。
それに、ギルドに入ってから既に五年以上経つのに、未だに帳簿をまともにつけられず、どんぶり勘定では駄目だと思うのです!
しかし、普通、五年も経つのに帳簿を付けられないなんてあるでしょうか?
マリーさんの場合、付けられないのではなくて、付けられないふりをしているだけではないかと思うのです。
そして、横領をしていたのはマリーさんではないかと……。
あれ? 気がつくと馬車が王都への街道からそれ、森の奥へ進む小道に入って行きます。
休憩を取るにしても、この森は魔物が出て危険な場所です。
ギルドにもよく魔獣の討伐依頼が来ていました。
「ちょっと。何処に向かっているの?」
私は御者をしていた冒険者に問いかけます。
「……」
返事がありません。
「この先は森の奥よ。魔獣が出て危険よ!」
「……」
完全に無視のようです。
「ねえ。この道プランさんが言った通り森の奥に向かっているみたいよ」
「なんだって? ちょっと確認してくる」
馬車の後に乗って後方の確認をしていた冒険者パーティが、私の話を聞いて疑問に思ったのか、パーティのリーダーの男の子が、私の閉じ込められている檻の脇を抜けて、前方で私を監視していた冒険者に近付き話を始めました。
「ロバートさん。街道から外れたようだけど何処に向かっているのですか?」
「心配するな。これは王都への抜け道なんだ」
「そうなのですか。ですが、魔獣が出て危険ではないのですか?」
「お前たちDランクパーティでは危険かもしれないが、Bランクの俺たちが付いているから大丈夫だ!」
「そうですか……。ならいいのですが……」
私を王都に護送するために態々冒険者が二パーティ、六人も担当していす。
御者をしているのがクラーク、前方で私を監視していた二人がロバートとウド。この柄の悪い男三人組が「ブラッククロウ」というパーティです。
最近Bランクに昇格したばかりのはずです。
ブラッククロウは、マリーさんと懇ろなパーティで、マリーさんが不正をしてBランクに昇格させたとの噂があります。
もう一つのパーティが、後方で監視に当たっていた「暁の明星」という、男の子一人と女の子二人のDランクパーティです。
イケメンの男の子がケリー君、女の子二人はローズとリリー。
最近名を上げている、期待の若手パーティです。
特にケリー君の人気は、若い女の子の間では急上昇中です。
しかし、私一人を護送するのに冒険者六人とは、大袈裟なのもいいところです。
当初はブラッククロウだけの予定でしたが、サブマスが「商品が傷物にされたら困るから」と言い張り、強引に女の子のいる暁の明星を同行させると決めてしまったのです。
確かに、その危険があり、ありがたいことなのですが、商品扱いは酷いのではないかと思うのです。
まあ、売られていく身ですから、商品なのかもしれませんが……。
そんなことより馬車の行き先です!
「ちょっと。騙されちゃ駄目よ! こんなところに王都への抜け道なんてないわよ!!」
私は暁の明星の男の子ケリー君に注意します。
「ロバートさん。プランさんはああ言ってますが?」
「チッ。面倒くせぇな。街道からもかなり離れたし、もうここでいいか?」
「どういうことですか?」
「取り敢えず、お前は死んどけ!!」
ロバートが剣を抜き、いきなりケリー君のお腹を突き刺しました。
私は、住み慣れたミマスの街から、王都アマルティアに向かって馬車に揺られています。
ミマスの街から王都アマルティアまでは、馬車で二日、徒歩なら四日といったところです。
今回も途中の村で一泊していくことになるでしょう。
これが、観光や買い物のためだったらどれだけ良かったことでしょう。
いや、贅沢は言いません。仕事のためだったとしても今の状況に比べれば百倍マシです。
何故なら、私は檻に入れられ王都に護送されているところだからです。
冒険者ギルドの受付嬢だった私は、横領の容疑をかけられて、ギルドをクビになっただけでなく、その弁済として借金奴隷に落とされ、王都の奴隷商に売られていくことになりました。
もう、気分は市場に売られていく子牛のようです。
勿論、私は横領なんかしていません。
逆に横領の事実を見つけ、ギルドマスターに報告したのに、いつのまにか私が犯人だったことにされてしまいました。
無実を訴えても、誰も味方してくれませんでした。
それも、私が黒髪に黒い瞳だったため、ギルド内で爪弾きにされていたので、仕方ないのかもしれません。
自分で言うのも何ですが、こんな見た目ですが、仕事に関しては優秀で(オリジナル魔法を使っていましたから)、余計に周りからのやっかみを受けていました。
特に同期で入った、同じ受付嬢のマリーさんには、目の敵にされていました。
AランクやBランクのベテランの冒険者は殆どが私の担当でした。私が受付の集計係に昇格したのも気に入らなかったのでしょう。
でもそれは逆恨みというものだと思うのです。
マリーさんに比べてば、私の方が圧倒的に計算が早くて正確なのですから!
新人冒険者なら見た目から、こんな見た目の私でなく、美人なマリーさんの方に行きますが、ベテランになれば、見た目より実利を取るようになるのは、仕方がないことだと思うのです。
それに、ギルドに入ってから既に五年以上経つのに、未だに帳簿をまともにつけられず、どんぶり勘定では駄目だと思うのです!
しかし、普通、五年も経つのに帳簿を付けられないなんてあるでしょうか?
マリーさんの場合、付けられないのではなくて、付けられないふりをしているだけではないかと思うのです。
そして、横領をしていたのはマリーさんではないかと……。
あれ? 気がつくと馬車が王都への街道からそれ、森の奥へ進む小道に入って行きます。
休憩を取るにしても、この森は魔物が出て危険な場所です。
ギルドにもよく魔獣の討伐依頼が来ていました。
「ちょっと。何処に向かっているの?」
私は御者をしていた冒険者に問いかけます。
「……」
返事がありません。
「この先は森の奥よ。魔獣が出て危険よ!」
「……」
完全に無視のようです。
「ねえ。この道プランさんが言った通り森の奥に向かっているみたいよ」
「なんだって? ちょっと確認してくる」
馬車の後に乗って後方の確認をしていた冒険者パーティが、私の話を聞いて疑問に思ったのか、パーティのリーダーの男の子が、私の閉じ込められている檻の脇を抜けて、前方で私を監視していた冒険者に近付き話を始めました。
「ロバートさん。街道から外れたようだけど何処に向かっているのですか?」
「心配するな。これは王都への抜け道なんだ」
「そうなのですか。ですが、魔獣が出て危険ではないのですか?」
「お前たちDランクパーティでは危険かもしれないが、Bランクの俺たちが付いているから大丈夫だ!」
「そうですか……。ならいいのですが……」
私を王都に護送するために態々冒険者が二パーティ、六人も担当していす。
御者をしているのがクラーク、前方で私を監視していた二人がロバートとウド。この柄の悪い男三人組が「ブラッククロウ」というパーティです。
最近Bランクに昇格したばかりのはずです。
ブラッククロウは、マリーさんと懇ろなパーティで、マリーさんが不正をしてBランクに昇格させたとの噂があります。
もう一つのパーティが、後方で監視に当たっていた「暁の明星」という、男の子一人と女の子二人のDランクパーティです。
イケメンの男の子がケリー君、女の子二人はローズとリリー。
最近名を上げている、期待の若手パーティです。
特にケリー君の人気は、若い女の子の間では急上昇中です。
しかし、私一人を護送するのに冒険者六人とは、大袈裟なのもいいところです。
当初はブラッククロウだけの予定でしたが、サブマスが「商品が傷物にされたら困るから」と言い張り、強引に女の子のいる暁の明星を同行させると決めてしまったのです。
確かに、その危険があり、ありがたいことなのですが、商品扱いは酷いのではないかと思うのです。
まあ、売られていく身ですから、商品なのかもしれませんが……。
そんなことより馬車の行き先です!
「ちょっと。騙されちゃ駄目よ! こんなところに王都への抜け道なんてないわよ!!」
私は暁の明星の男の子ケリー君に注意します。
「ロバートさん。プランさんはああ言ってますが?」
「チッ。面倒くせぇな。街道からもかなり離れたし、もうここでいいか?」
「どういうことですか?」
「取り敢えず、お前は死んどけ!!」
ロバートが剣を抜き、いきなりケリー君のお腹を突き刺しました。
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