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この町をご紹介します
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小さな滝のある山の奥の、ちょっとひらけた谷の中に、とある小さな町があります。
この町に住む人は、みんな、自分のお仕事が大好きで、いつも一生懸命に働きます。
だから、この町の人が作る物は、どれも最高の仕上がりです。
少し紹介いたしましょう。
この町にはパン屋さんが一軒だけあります。
パン屋のおじさんとおばさんは、一年中、一日も欠かさず、お日様よりも早く起きて、パンを作っています。
パンはどうやって作るか、皆さんはご存知ですか。
まず、小麦の実を、石臼という道具ですりつぶして、粉にします。これが小麦粉です。
この小麦粉に、酵母というパンをふくらませてくれる微生物をまぜて、ゆっくり寝かせます。
酵母がじゅうぶんに増えたら、オーブンに入れて、ていねいにじっくり焼き上げます。
これでようやくパンができあがります。どれも大変な仕事です。
この町のパン屋のおじさんは、とてもきちょうめんで器用なので、作るパンは最高に美味しいのです。
特に、特製のサンドイッチの味ときたら、たまりません。
食パンの耳をきれいに落として、フカフカの白く柔らかいところだけを使い、しんせんでパリッとしたレタスと、香ばしくジューシィなソーセージをはさんであります。
ひとくちかじると、まず、フカフカの食パンからふわっと小麦のいい匂いがします。そのあと、みずみずしいレタスが、パリッ、と千切れます。最後に、ソーセージから肉汁がじゅわあっ、とあふれ出て、口いっぱいに広がります。
ああ、説明していたらお腹が空いてきました。
ちょっとサンドイッチを食べに行ってきてもいいでしょうか。
すみません。すぐ戻ります。
失礼いたしました。サンドイッチをいただいてきました。
いつもどおり最高に美味しかったです。
さて、次は、町に一軒だけある、喫茶店を紹介いたしましょう。
この喫茶店は、町の中ではわりかし新しいお店です。
おしゃれな髪の長いきれいなお姉さんが、この町に引っ越してきて、作ったお店です。
喫茶店というのは、美味しいお茶やコーヒーをいれて、飲ませてくれるお店です。
美味しいお茶やコーヒーをいれるのに、何が一番大切か、皆さんはご存知ですか。
それはきれいな水です。きれいな水がなければ、美味しいお茶やコーヒーはできません。
この町は山の中にあります。その山には小さな滝があります。
この滝の水は、夏でもとても冷たく、最高にきれいで、透き通っています。
お姉さんは、この水を気に入って、この町で喫茶店を始めたのです。
この喫茶店のおすすめは、ハーブティです。
お姉さんが育てたハーブを、何種類も、その時のお客さんの体調や気分にあわせて、ブレンドして作ります。
ミント、カモミール、ラベンダー、ルイボス、ローズマリー、レモングラスなど、ハーブの種類は大変さまざまです。
それらの効果と割合をすべて正確に覚えなくては、美味しいハーブティは作れません。
お姉さんの作るハーブティは、まるで魔法のように、気分をリラックスさせてくれます。
ああ、説明していたらハーブティをいただきたくなってきました。
ちょっとハーブティを飲みに行ってきてもいいでしょうか。
たびたびすみません。すぐ戻ります。
失礼いたしました。ハーブティをいただいてきました。
いつもどおり最高に素敵な香りでした。
リラックスしすぎて、ちょっと眠たくなってきましたので、お店の紹介は次で最後にしますね。
最後にご紹介するのは、この町の大工の親方と、そのお弟子さん達です。
大工の親方は、なんとこの道60年、今年で80歳になる、おじいちゃんです。
ですが、今でも元気いっぱい。背中もビシッと、この町で一番まっすぐです。
この町にある家やたて物は、全部、この大工の親方と、そのお弟子さん達がたてたものです。
たて物をたてる時に、何が一番肝心か、皆さんはご存知ですか。
それは、木をまっすぐ切ることです。
まっすぐ切れていない木でたてた、たて物は、床が平らではありません。
床が平らでないと、たて物は少しずつかたむいて、最後はひとりでにくずれてしまうこともあるのです。
背筋が曲がっていたり、腕の力が弱かったりすると、木はまっすぐ切れません。
大工の親方は、背筋がまっすぐです。そして、80歳になった今でも、この町一番の力持ちです。
当然、そのお弟子さん達も、みんな、筋肉ムキムキのマッチョ・ガイです。
ですから、親方たちのたてた、たて物はみんな、親方たちと同じように頼もしくて、がっちりしています。
ちなみに、親方たちは、たて物のほかに、テーブルやイスやベッドも作ってくれます。
私も、親方たちに作ってもらったベッドでいつも寝ています。
このベッドに寝そべると、元気な親方と筋肉ムキムキのお弟子さん達に守ってもらっているようで、安心して眠れるのです。
ああ、説明していたらますます眠たくなってきました。
続きはまた明日にしてよいでしょうか。
何度もすみません。今日のところは、おやすみなさい。
この町に住む人は、みんな、自分のお仕事が大好きで、いつも一生懸命に働きます。
だから、この町の人が作る物は、どれも最高の仕上がりです。
少し紹介いたしましょう。
この町にはパン屋さんが一軒だけあります。
パン屋のおじさんとおばさんは、一年中、一日も欠かさず、お日様よりも早く起きて、パンを作っています。
パンはどうやって作るか、皆さんはご存知ですか。
まず、小麦の実を、石臼という道具ですりつぶして、粉にします。これが小麦粉です。
この小麦粉に、酵母というパンをふくらませてくれる微生物をまぜて、ゆっくり寝かせます。
酵母がじゅうぶんに増えたら、オーブンに入れて、ていねいにじっくり焼き上げます。
これでようやくパンができあがります。どれも大変な仕事です。
この町のパン屋のおじさんは、とてもきちょうめんで器用なので、作るパンは最高に美味しいのです。
特に、特製のサンドイッチの味ときたら、たまりません。
食パンの耳をきれいに落として、フカフカの白く柔らかいところだけを使い、しんせんでパリッとしたレタスと、香ばしくジューシィなソーセージをはさんであります。
ひとくちかじると、まず、フカフカの食パンからふわっと小麦のいい匂いがします。そのあと、みずみずしいレタスが、パリッ、と千切れます。最後に、ソーセージから肉汁がじゅわあっ、とあふれ出て、口いっぱいに広がります。
ああ、説明していたらお腹が空いてきました。
ちょっとサンドイッチを食べに行ってきてもいいでしょうか。
すみません。すぐ戻ります。
失礼いたしました。サンドイッチをいただいてきました。
いつもどおり最高に美味しかったです。
さて、次は、町に一軒だけある、喫茶店を紹介いたしましょう。
この喫茶店は、町の中ではわりかし新しいお店です。
おしゃれな髪の長いきれいなお姉さんが、この町に引っ越してきて、作ったお店です。
喫茶店というのは、美味しいお茶やコーヒーをいれて、飲ませてくれるお店です。
美味しいお茶やコーヒーをいれるのに、何が一番大切か、皆さんはご存知ですか。
それはきれいな水です。きれいな水がなければ、美味しいお茶やコーヒーはできません。
この町は山の中にあります。その山には小さな滝があります。
この滝の水は、夏でもとても冷たく、最高にきれいで、透き通っています。
お姉さんは、この水を気に入って、この町で喫茶店を始めたのです。
この喫茶店のおすすめは、ハーブティです。
お姉さんが育てたハーブを、何種類も、その時のお客さんの体調や気分にあわせて、ブレンドして作ります。
ミント、カモミール、ラベンダー、ルイボス、ローズマリー、レモングラスなど、ハーブの種類は大変さまざまです。
それらの効果と割合をすべて正確に覚えなくては、美味しいハーブティは作れません。
お姉さんの作るハーブティは、まるで魔法のように、気分をリラックスさせてくれます。
ああ、説明していたらハーブティをいただきたくなってきました。
ちょっとハーブティを飲みに行ってきてもいいでしょうか。
たびたびすみません。すぐ戻ります。
失礼いたしました。ハーブティをいただいてきました。
いつもどおり最高に素敵な香りでした。
リラックスしすぎて、ちょっと眠たくなってきましたので、お店の紹介は次で最後にしますね。
最後にご紹介するのは、この町の大工の親方と、そのお弟子さん達です。
大工の親方は、なんとこの道60年、今年で80歳になる、おじいちゃんです。
ですが、今でも元気いっぱい。背中もビシッと、この町で一番まっすぐです。
この町にある家やたて物は、全部、この大工の親方と、そのお弟子さん達がたてたものです。
たて物をたてる時に、何が一番肝心か、皆さんはご存知ですか。
それは、木をまっすぐ切ることです。
まっすぐ切れていない木でたてた、たて物は、床が平らではありません。
床が平らでないと、たて物は少しずつかたむいて、最後はひとりでにくずれてしまうこともあるのです。
背筋が曲がっていたり、腕の力が弱かったりすると、木はまっすぐ切れません。
大工の親方は、背筋がまっすぐです。そして、80歳になった今でも、この町一番の力持ちです。
当然、そのお弟子さん達も、みんな、筋肉ムキムキのマッチョ・ガイです。
ですから、親方たちのたてた、たて物はみんな、親方たちと同じように頼もしくて、がっちりしています。
ちなみに、親方たちは、たて物のほかに、テーブルやイスやベッドも作ってくれます。
私も、親方たちに作ってもらったベッドでいつも寝ています。
このベッドに寝そべると、元気な親方と筋肉ムキムキのお弟子さん達に守ってもらっているようで、安心して眠れるのです。
ああ、説明していたらますます眠たくなってきました。
続きはまた明日にしてよいでしょうか。
何度もすみません。今日のところは、おやすみなさい。
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