童貞とイタチと缶ポタージュ

居間一葉

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「あったかかった」

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 真っ白に染まった意識が、やがて少しずつ元に戻っていく。
 カラス達も一羽、また一羽と、クスノキへと戻っていく。
 その間にも、僕は二度三度、腰を浮かせて、残滓を吐き出した。
 冷静さを取り戻し始めた頭で、最初に気になったのは、今も股間に押し付けられている固い物の正体だ。
 それを確かめようと、僕が顔をもたげるより先に、イタチがそれを目の前に差し出してきた。
「いっぱい出たじゃん」
 それは、缶ポタージュの空き缶だった。僕は、缶ポタージュの空き缶の中に射精したのだ。
 イタチは僕の目の前で、空き缶を揺らした。ちゃぷちゃぷと粘度の高い水音がする。
 僕は赤面した。つい先ほど、缶ポタージュに口をつけるイタチを見て、思い描いた妄想を思い出したのだ。
 イタチは、寒さで赤くなった鼻先に、空き缶を持っていった。そして、スン、と一嗅ぎした。
「うえっ、臭い」
 イタチはわざと見せつけるように顔をしかめると、僕の恥ずかしい体液が入ったままの空き缶を、そっとベンチの下に置いた。
 次に、トレーナーの中に潜り込んだままだった僕の右手を、優しく服の中から取り出し、そのまま握りしめた。
「ねえ、きもちよかった?」
 イタチの問いかけに、僕は答えた。
「あったかかった」
 イタチの目がぐんと大きく見えた。今までで一番。
 その後、僕たちはもうしばらく、一緒にベンチに座っていた。
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