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「あったかくして」
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僕たちは手を繋いだまま、その場で会話をした。
いや、会話というより、僕が一方的に喋っただけだ。イタチが、「何か話して」と僕に頼んできたのだ。
気の利いた話など、僕は当然持ち合わせていない。今日この数時間に起きたことを、思いつくままに語った。
ギョロ目という小デブのこと。主任のサボり癖。夜のサンバ。屋台のおでんに集まる団子虫。その小便事情。缶ポタージュを選んだ理由。
イタチは所々で「それで?」と相槌を打った。そして、それぞれの話題の最後は必ず「ばかじゃん」で締めくくった。
僕が喋る。イタチが相槌を打つ。また僕が喋る。「ばかじゃん」とイタチが笑う。いつからか僕も一緒に笑えるようになった。
話題が尽きかけていた。僕たちはしばらく沈黙した。
オリオン座の話でもしようかと、僕が口を開きかけた時だった。
「寒いね」
イタチはそういうと、上半身を僕に寄りかからせた。
「手が、寒い」
そして、その両手を、僕のコートのボタンの間から、中へと潜り込ませてきた。イタチの小さくて冷たい手が、コートとシャツの間で、僕の胸の下辺りと、臍の下辺りに、それぞれ押し付けられ、その場でもぞもぞと動いた。
「あったかくして」
イタチは頭を僕の肩に乗せて、僕を見上げて言いながら、胸の下に当てていた手で、僕のシャツのボタンを一つ外した。そして、そのままその中へと手を滑り込ませてきた。ほんの一瞬の出来事で、僕は最初、何をされているのか分からなかった。
僕ははっとして、腰を浮かせた。イタチのもう片方の手が、僕のズボンのファスナーを摘まんだのだ。
僕は面食らった。イタチが何をしようとしているのか、おおよその予想はついた。無意識に、左手でコートの上から、股間を押さえた。イタチの小さな手が、ズボン越しではあるが、僕の粗末なものに密着した。イタチは目を丸くして、瞬きさせた。
僕は赤面した。まさか、こんな展開になるとは。
イタチは何のつもりなのだろうか。缶ポタージュのお礼として、そういうことをしてあげる、ということだとしたら、まずいことになったと思った。対価を伴う性的サービス、それは売春だ。営業の許可なく売春を行えば、売春防止法違反である。
「だ、だめ、法律が」
「ばかじゃん」
僕の法律論はイタチに一撃でKOされた。緩んだ僕の手の下で、イタチの指がファスナーを下ろした。
いや、会話というより、僕が一方的に喋っただけだ。イタチが、「何か話して」と僕に頼んできたのだ。
気の利いた話など、僕は当然持ち合わせていない。今日この数時間に起きたことを、思いつくままに語った。
ギョロ目という小デブのこと。主任のサボり癖。夜のサンバ。屋台のおでんに集まる団子虫。その小便事情。缶ポタージュを選んだ理由。
イタチは所々で「それで?」と相槌を打った。そして、それぞれの話題の最後は必ず「ばかじゃん」で締めくくった。
僕が喋る。イタチが相槌を打つ。また僕が喋る。「ばかじゃん」とイタチが笑う。いつからか僕も一緒に笑えるようになった。
話題が尽きかけていた。僕たちはしばらく沈黙した。
オリオン座の話でもしようかと、僕が口を開きかけた時だった。
「寒いね」
イタチはそういうと、上半身を僕に寄りかからせた。
「手が、寒い」
そして、その両手を、僕のコートのボタンの間から、中へと潜り込ませてきた。イタチの小さくて冷たい手が、コートとシャツの間で、僕の胸の下辺りと、臍の下辺りに、それぞれ押し付けられ、その場でもぞもぞと動いた。
「あったかくして」
イタチは頭を僕の肩に乗せて、僕を見上げて言いながら、胸の下に当てていた手で、僕のシャツのボタンを一つ外した。そして、そのままその中へと手を滑り込ませてきた。ほんの一瞬の出来事で、僕は最初、何をされているのか分からなかった。
僕ははっとして、腰を浮かせた。イタチのもう片方の手が、僕のズボンのファスナーを摘まんだのだ。
僕は面食らった。イタチが何をしようとしているのか、おおよその予想はついた。無意識に、左手でコートの上から、股間を押さえた。イタチの小さな手が、ズボン越しではあるが、僕の粗末なものに密着した。イタチは目を丸くして、瞬きさせた。
僕は赤面した。まさか、こんな展開になるとは。
イタチは何のつもりなのだろうか。缶ポタージュのお礼として、そういうことをしてあげる、ということだとしたら、まずいことになったと思った。対価を伴う性的サービス、それは売春だ。営業の許可なく売春を行えば、売春防止法違反である。
「だ、だめ、法律が」
「ばかじゃん」
僕の法律論はイタチに一撃でKOされた。緩んだ僕の手の下で、イタチの指がファスナーを下ろした。
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