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ー10ー 生還
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「あれ、まだいたの」
顔に飛び散っていた数的の青い血を拭いながら、お兄さんは言った。
「...」
何も言い返すことができない。情報量が多すぎる。
両断された黄色い身体を呆然と眺めるのでいっぱいいっぱいだった。
「そりゃあ、疑問だよねぇ」
ニコニコと微笑んでいるお兄さんに、カラスがトコトコと寄ってきた。
「おお、ナゴちゃんじゃん、お手柄だったねぇ」
お兄さんがカラスを抱き上げると、カラスはにゃあと鳴いて光り輝き始めた。
二、三秒で光は止んで、お兄さんが抱き抱えていたのはいつの間にかネコになっていた。
「ほらご褒美だよ」
腰のベルトについていた小さな袋から棒状のお菓子を取り出して包装を割いてネコにやると、喜んで食べ始めた。どうやらネコ用のようだ。
「あの」
言葉が漏れ出した。
「佐久間は、無事なんでしょうか」
一拍の間。
「すごいね君、自分の心配よりも先に友達の心配をするかい」
ケラケラと笑い出した。
「俺だったらまずこの化け物が何か、とか俺が誰か、とか聞いちゃうね」
「あ」
「まぁ、その佐久間って子が、こいつが擬態してたらしい男の子のことなら、大丈夫。生きてるよ。ちょっとクラクラしてるから家でぐっすり寝てる」
「そうなんですか」
「そうなんだよ」
「こいつはなんなんですか?」
お兄さんの足元に倒れているバケモノを指差して佐久間は聞いた。
「ああ、こいつ? こいつはね」
お兄さんは笑いながら言った。
「宇宙人」
「え?」
「どう見ても人間じゃないでしょ、明らかに骨格とかヒューティリティでやるにはめんどくさそうじゃん。地球侵略を狙うインベーダー」
「じゃああなたは...?」
「え? あぁ俺? 俺は大丈夫、ニホニアの人間だから」
証拠にホラ、と言ってどこかのアイドルとのツーショットを見せてきた。よくわからないけどここまで自信満々に言うんだから多分人間であることの決定的な証拠になるんだろう。久留米は納得した。
「でさ、ここから大事な話なんだけどさ」
パン、と手を打ってお兄さんは話し始めた。
「この宇宙人どもってさ、まだ国家最高レベルの機密事項なわけね」
「...はい」
「だからさ、君にはこんなこと忘れて社会に戻って欲しいわけね」
「はぁ」
「今日は君をこれでもう帰すけど、絶対誰にも言わないでね」
「はい」
「さっき君の内臓治癒する時に中に毒仕込んだから、誰かにこの宇宙人だったり、俺に関して喋ったら、君は自然に心臓麻痺することになる」
「え...?」
「だから気をつけてね」
「え、ちょっとまってなんで」
「あ、そうそう、ヒューティリティで人の体治すのは応急処置に過ぎなくて、ただ形変えてくっつけてるだけだから、動くとズレちゃうかもしれない。しばらく体育はしないほうがいいよ」
「ちょっとまってちょっとまって」
「ナゴちゃん」
「にゃーご」
カラスが一鳴きすると、目の前のお兄さんやカラス、それに...宇宙人、の体が目の前から消え去った。
久留米は一人、通学路の坂道に、放り出された。
荷物とだけは一緒に。
顔に飛び散っていた数的の青い血を拭いながら、お兄さんは言った。
「...」
何も言い返すことができない。情報量が多すぎる。
両断された黄色い身体を呆然と眺めるのでいっぱいいっぱいだった。
「そりゃあ、疑問だよねぇ」
ニコニコと微笑んでいるお兄さんに、カラスがトコトコと寄ってきた。
「おお、ナゴちゃんじゃん、お手柄だったねぇ」
お兄さんがカラスを抱き上げると、カラスはにゃあと鳴いて光り輝き始めた。
二、三秒で光は止んで、お兄さんが抱き抱えていたのはいつの間にかネコになっていた。
「ほらご褒美だよ」
腰のベルトについていた小さな袋から棒状のお菓子を取り出して包装を割いてネコにやると、喜んで食べ始めた。どうやらネコ用のようだ。
「あの」
言葉が漏れ出した。
「佐久間は、無事なんでしょうか」
一拍の間。
「すごいね君、自分の心配よりも先に友達の心配をするかい」
ケラケラと笑い出した。
「俺だったらまずこの化け物が何か、とか俺が誰か、とか聞いちゃうね」
「あ」
「まぁ、その佐久間って子が、こいつが擬態してたらしい男の子のことなら、大丈夫。生きてるよ。ちょっとクラクラしてるから家でぐっすり寝てる」
「そうなんですか」
「そうなんだよ」
「こいつはなんなんですか?」
お兄さんの足元に倒れているバケモノを指差して佐久間は聞いた。
「ああ、こいつ? こいつはね」
お兄さんは笑いながら言った。
「宇宙人」
「え?」
「どう見ても人間じゃないでしょ、明らかに骨格とかヒューティリティでやるにはめんどくさそうじゃん。地球侵略を狙うインベーダー」
「じゃああなたは...?」
「え? あぁ俺? 俺は大丈夫、ニホニアの人間だから」
証拠にホラ、と言ってどこかのアイドルとのツーショットを見せてきた。よくわからないけどここまで自信満々に言うんだから多分人間であることの決定的な証拠になるんだろう。久留米は納得した。
「でさ、ここから大事な話なんだけどさ」
パン、と手を打ってお兄さんは話し始めた。
「この宇宙人どもってさ、まだ国家最高レベルの機密事項なわけね」
「...はい」
「だからさ、君にはこんなこと忘れて社会に戻って欲しいわけね」
「はぁ」
「今日は君をこれでもう帰すけど、絶対誰にも言わないでね」
「はい」
「さっき君の内臓治癒する時に中に毒仕込んだから、誰かにこの宇宙人だったり、俺に関して喋ったら、君は自然に心臓麻痺することになる」
「え...?」
「だから気をつけてね」
「え、ちょっとまってなんで」
「あ、そうそう、ヒューティリティで人の体治すのは応急処置に過ぎなくて、ただ形変えてくっつけてるだけだから、動くとズレちゃうかもしれない。しばらく体育はしないほうがいいよ」
「ちょっとまってちょっとまって」
「ナゴちゃん」
「にゃーご」
カラスが一鳴きすると、目の前のお兄さんやカラス、それに...宇宙人、の体が目の前から消え去った。
久留米は一人、通学路の坂道に、放り出された。
荷物とだけは一緒に。
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