SHAPES スガタカタチの変動性

宇路野 朧

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ー3ー 有用性

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「お前誰だ...?」
 隣の席に座っている、見知らぬ顔の人に話しかける。
「誰でもいいだろ」
 声も知らない。
 しかし周りは全くといっていいほどそいつには触れない。
 そこにはそこはかとなく不穏な空気が流れていた。




「なんてね、冗談だよ冗談」
 不穏な空気なんか流れていなかった。
「で誰だよ」
「席替えしてないんだからわかるだろ」
「確かに」
 記憶が正しければ隣の席は近藤。メガネをかけた男子だったはずだ...昨日までは。
「また顔変えたん?」
「その通り、メガネめんどくさくなっちゃった」
「顔変えるスパン短すぎじゃね」
「まぁまぁ、物持ちが悪い方で。そういう君は顔変えなさすぎじゃない?」
「なんか別に変える必要もないかなって」
「ま、それはそう。実際顔なんてどうでもいいしね。でも久留米はヒューティリティ上手だから顔作るのも得意そうだね。俺なんかシャーペンを自転車に変えるなんてできないよ」
「不器用なお前にしてはそこそこ顔綺麗に作ったのなぁ。あと逆だぜ、自転車をシャーペンに変えてるの」
「どっちもどっちじゃん。俺だったら戻すのなんか絶対無理だな」

 これは、日常である。
 久しぶりに会う友人ならば、待ち合わせの条件はこと細やかに指定しなければならない。顔が変わっている可能性が非常に高く、外見では判断できないからである。そういう場合にはなんと声をかけるか。髪を切ったねぇ、ではなく、顔変えたねぇ、である。髪なんざほんとにいかようにもできるので(ヒューティリティが下手くそな奴は一本一本変形させなければいけないので少し手間だが)、切ったり変えたりしてもいちいち会話に上がることはない。
 というより、髪を切ることがない。ヒューティリティが世に出回ってから価値観は変わり、外見というものの価値はゼロになった。盛っても盛らなくても他人からの評価は変わらないからこそ、先ほどの会話の「外見なんてどうでもいい」は本当にどうでもいいのである。

「おい」
 一閃。おでこに痛みが走る。またかよ。
 どうやら先生がチョークを飛ばしたらしい。
「朝礼中なんだよ話聞け」
 この教師は大学卒業したてながらうちのクラスの担任である。毒舌と生徒との距離が近いのが相まってみんなからは慕われている。
「さっきといいさ、うちの学校の先生はみんな法律守んねーよな」
 クスッと周りで笑いが起きる。
「なんかいったか」
「先生、実はチョークって投げる物ではないんですよ」
「なんかいったか」
「なんでもありません」
「よし、先生の話は聞くように」
 ベルがなった。キーンコーンカーンコーン。
「じゃあこれで朝礼終わり! 一時間目の体育には遅れないように。日直、号令」
「気をつけー、礼」
「「「ありがとうございました」」」
 教室は騒音につつまれる。
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