上 下
1 / 11

ー1ー この世界がいかに狂っているか

しおりを挟む
 見た目というものの価値がなくなってから、家は全てが四角になった。「不細工」「イケメン」「美少女」そんな言葉も無くなった。「地球は青かった」という名言が語り継がれることも無くなった。
 そんなものは変動するからである。

 20XX年。とある日本の大学研究チームが世界にもたらした技術はノーベル賞を受賞した。
 物質をーー世界を構成する原子、その表現上の構造を変化させる特殊技術の名は「ヒューティリティ」。簡単に言おう。性質は変化させないまま、触った時の質感・表面上の構造・そして何より見た目。これらをノーリスクで変形することが可能になったのだ。この発見では初め、無機物・単体の物質のみの変形にしか適応できなかった。この発見が主に使われたのが金属加工業界である。金属のマグカップなのにプラスチックのように透き通っている、そんな摩訶不思議な商品が100円均一ショップで売られるようになったりした。
 この技術ヒューティリティが有機物にも流用できると判明したのは最初の発見から15年後。
 使のはさらに27年後からである。この瞬間、世界から見た目という概念は消失した。形質を変化させることはできないとはいえ、同じパーツならばいくらでも変形することができてしまうからである。一言で言えば「整形いらず」。当初、生物倫理的に...などと騒がれていたこの技術だが、年月が経つにつれて徐々にその声は小さくなっていった。街ゆく人の顔は皆テレビで、スマホでよく見る尊顔へと変化していった。見た目という概念がなくなった今、人のことを顔やスタイルで選ぶことはなくなり、内面で判断するようになった。この頃には物価というものは機能しなくなり、第三次世界大戦が勃発。旧世界は新世界に代わりつつあったが、皮肉にも旧世界の悲願であった「人の内面を見たコミュニケーション」が成立したのである。

 そして現在。ヒューテリティの改良は進められ、より自由度は高まる。
 ヒューティリティはマナーへ。エチケットとなった。
 ヒューティリティは道具へ。体にチップを埋め込むことで自分の体ならば自由にヒューティリティを起こせるようになった。触ることで時間をかけてヒューティリティを他の物にも施すことができるようになった。

 これは革命か。
 これは退化か。

 中学校の学校の授業のうち、道徳が占める割合は年々微増加傾向にある。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

Gender Transform Cream

廣瀬純一
SF
性転換するクリームを塗って性転換する話

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

侵略された街-隆

salmon mama
SF
「1000年に一人の隆だ。すげえ!!」 「俺も隆だが、俺は18年に一人の隆だ。」 「ああ、ちなみに俺は986年に一人の隆だよ。」 「僕はともき。20分に一人のともきだよ。」

処理中です...