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運命の出会い

マスクの女性は運命の人?

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 国立総合病院。
 国一番の医師が集まる総合病院は、東西南北から大勢の患者様が集まって来る。

 院長であるクラウドルは、現在45歳という若さで未だに独身。
 腕利きの心臓外科医で、今まで数多くの患者の命を救って来た経験がある。
 そのため王室専属医師としても指名されており、急病の時はお城に行って診察する事もある。

 生真面目そうな顔立ちに、インテリーなメガネをかけて、キリリッとした顔立ちをしているが、患者にはとても優しく好感度も高い。

 背が高くスラっとしていて包容力もあり女性からもモテモテだが、誰とも交際しようとしないクラウドル。


 
 そんなクラウドルに会いに来たジュニアール。


 病院の応接室にやって来たジュニアールとブックル。
 
 白衣姿のクラウドルと、その後ろに立っている一人の女性が同席している。

 背が高めで推定175cmはありそうな大柄な女医。
 白衣に紺色のスラックス姿に、白いスニーカーはどこにでもいる女医師の姿である。
 しかし…

 右手に白い手袋をはめ、顔には大きめのマスクをつけて右目には眼帯をあてている痛々しい姿。
 見える左目は鋭い切れ長の目で、不意に見られるとちょっと怖そうにも見える。
 髪は綺麗なブロンドの髪で、顔が隠れる感じのボブヘヤー。


「国王様、お待ちしておりました」


 向かい側に座ったクラウドルに、ジュニアールは上品なお辞儀をした。

「いえ、こちらこそ。長年引っ張ってしまい申し訳ございません。限界を感じましたので、娘の為にも自手術を受ける事を決意しました」
「それは何よりです。今回は、私が国王様の担当医として執刀させて頂きます」

「そうですか」

 ふと、ジュニアールはクラウドルの傍に立っている女医に目をやった。

 痛々しい姿の女医を見ると、笑っていたジュニアールの目がハッと見開いた。
 そしてじッと女医を見つめた…。

 クラウドルが手術の説明をしているのも、ジュニアールの耳には入っていないようだ。
 じっと女医を見つめたまま一瞬も目を離さないまま見つめているジュニアール。

 女医はそんなジュニアールと目を合わさないように、愛想のない目つきで視線を反らしていた。


「以上でございます。宜しいでしょうか? 国王様」


 クラウドルが声をかけるが、ジュニアールは聞こえていないのかじっと女医を見つめたままだった。

「国王様? どうかなさいましたか? 」

 
 ハッと我に返り、クラウドルの声に気づいたジュニアールはゆっくりと視線をクラウドルに向け直した。

「いえ、何でもありません」


 そう言って、ジュニアールはそっと立ち上がった。

 そのまま歩き出したジュニアールは、ゆっくりとクラウドルの傍に居る女医の下へ歩み寄って行った。


「初めまして、ジュニアールと申します」

 傍に来たジュニアールを、女医はムスっとして見上げた。

「貴女のお名前を、教えて頂けますか? 」

 尋ねられると女医は、無言のまま自分の名札を指さした。

 名札には「セシレーヌ」と書いてあった。
 担当は心臓外科と書いてある。


「セシレーヌさんですね? とても素敵なお名前で、貴女にピッタリです」

 そう言われると、女医セシレーヌはシレっと視線を反らした。


「セシレーヌ、相手は国王様だぞ。その態度は無礼すぎる。ちゃんと声を出して、答えなさい」

 クラウドルにそう言われると、セシレーヌはムスっとして俯いた。

「大丈夫ですよ、ちゃんとセシレーヌさんのお声は私には聞こえておりますから」

 はぁ? 
 ちょっと目を座らせたセシレーヌ。

「セシレーヌさん。貴女も心臓外科医で安心しました。どうか、私の手術を担当して下さい」


 え? 
 驚いたクラウドルはそっと立ち上がった。


「国王様、何を言われるのですか? 執刀は私が致します。この手術には、国王様のお命がかかっております。セシレーヌはまだ未熟なので、私の助手として一緒に入ってもらうだけです」

「未熟? いいえ、そんな事はありません。セシレーヌさんに、今までどれだけの人が助けられてきたか。皆さん、とても喜んでおられます」

 そう言って、ジュニアールはそっとセシレーヌの右手をとった。
 ハッとしたセシレーヌが振り払おうとすると、ギュッと握りしめてきたジュニアール。


「セシレーヌさん、貴女が担当してくれないのであれば。私は手術は受けません」

 ギュッと手を握ってセシレーヌを見つめるジュニアールの目はとても真剣で、それでいて愛しさに溢れていた。


「…好きにしたら? …どうなっても、責任はもたないから。…」


 ボソッと答えたセシレーヌの声は、見かけよりも綺麗な声だった。

 その声を聞くとジュニアールは、胸がキュンと鳴り喜びを感じた。


「構いませんよ。私は、貴女を信じています。何も恐れていません」

 
 あっそ。
 素っ気なく視線を反らしたセシレーヌ。


 クラウドルは驚きすぎて、何も言えなくなってしまった。



 離れて見ていたブックルは、意外と冷静な目で見ていた。






 結局、手術はセシレーヌが執刀する事になった。

 
 病院に来た時はちょっと重たい表情だったジュニアールだが、話を終えて帰る時はとてもイキイキとしていた。
 

 まるで、恋をした乙女のような目をしてニコニコしているジュニアールを見てブックルはどこか嬉しそうだった。





 
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