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運命の出会い

もう誰も愛することはないと思っていたのに…

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 豊かな緑と青い海に囲まれた「グリーンピアト」は、東西南北4つのの領土に別れていて、中心にグリーンピアトがあり、そこに大きく建ちそびえるグリーンピアト城がある。

 古代の洋風なお城の雰囲気と、まるで妖精でも住んでいるかと思えるほどの森林に囲まれ、広い庭には年中バラの花が咲いている。

 小高い丘の上に建ちそびえるグリーンピアト城は、最上階からは港まで見ることができ夜になると満面の星空も見ることができとてもロマンチストでもある。

 お城には100人以上の兵士と、銃の使える銃士隊員が50人以上いる。
 使用人も100人以上はいて、国王様には長年お城に使える執事が着いていて身の回りのお世話やスケジュール調整などをしてくれている。

 コック長はグリーンピアト一番の腕前で、毎日美味しい料理を作ってくれている。

 大勢の人に囲まれているグリーンピアト城は、今日も楽しい笑い声が響き渡り賑わっている。




「今日もみんな、楽しそうですね」

 穏やかな笑みを浮かべ、窓の外から外を見ているのは国王ジュニアール。

 軽やかなブロンドのショートヘヤーがサラサラしていて、切れ長の目が一見クールに見えるがとても物腰が低く言葉使いも丁寧で外見と内面のギャップがたまらなく魅力的である。
 スラっとした長身で、190cm以上はあり、世間でいうクールなイケメンタイプの国王様。
 ブルー系のスーツに黒い革靴姿が、とっても似合っている。

 
「国王様。そろそろお時間でございます」

 ビシッとした黒いスーツ姿で、姿勢正しく丁寧にお辞儀をした白髪の混じった男性。
 この男性は長年お城に使える執事のブックルといい、もう60代になるが、国王様のボディーガードとも呼ばれるくらいで武術の達人でもある。
 彫りの深い上品な顔立ちに、気の優しそうな目をしているがその目の奥では人の心の奥まで読み取っているとも言われているほど直感の鋭い男性である。


 
 
 ブックルと共に部屋を出てきたジュニアール。
 
 中央に綺麗な赤いじゅうたんが敷いてある、長い廊下をジュニアールが歩いてくると。


「お父様、おはようございます」
 
 可愛い声で現れたのは、10歳くらいの女の子。
 
 この女の子はジュニアールの子供で名前をミディスと言う。
 ジュニアールに似た顔立ちであるが、目は大きくパッチリしている。

 フリフリの可愛いピンクのワンピースに、オシャレな黒い靴。
 ちょっと不思議な雰囲気がする女の子である。


「ミディス、おはよう」
「お父様、今から病院に行くの? 」

「ええ、そうですよ」
「そうなんだ。…あのね…」

 ちょっと傍に来てと、ミディスはジュニアールに手招きをした。

 ん? と、ジュニアールはミディスに耳を近づけた。

「お父様。今日はね、運命の出会いが待っているよ。ちゃんと、ハートに素直になってね」

 運命の出会い?
 ジュニアールは一瞬キョンとなったが、すぐさま笑いを浮かべた。

「面白い話ですね。本当だったら、嬉しいです」

 内心、そんな事がるはずがないと思いながらジュニアールは笑ってミディスの話を聞き流していた。


 もう誰も愛することなどない。
 ジュニアールはそう決めていた。


 その理由は… …。


 今から12年前。
 ジュニアールは魂から惹かれる恋をした。

 その相手は音楽家のメイシスと言う女性だった。
 グリーンピアトで一番の実力を誇るピアニストであるメイシスは、数多くの音楽祭に出場して最優秀賞を受賞していた。

 幼い頃に両親を亡くして自分の力で生きてきたメイシス。
 両親とも音楽家で、母はバイオリニストで父はピアニスト、2人共グリーンピアトで名の通る音楽家だったが、母はメイシスが15歳の時に事故死、父はメイシスが18歳の時に病死している。

 両親が残してくれた遺産で、メイシスは音楽大学を首席で卒業して、それからずっと一人で音楽教室を開きつつましく生きてきた。
 将来は結婚は望まず、音楽家として沢山の弟子を育ててゆく事だけを考えていたメイシス。

 ブラウンの柔らかい髪が肩まで届き、パチリした大きな目が魅力的で、女性にしてはスラっとした長身で170cmはあったメイシス。
 上品な雰囲気がとても魅力的で、異性からはかなりモテていたが誰とも交際することはなかった。


 メイシスの奏でる音色は、人々の心を癒し、気持ちがとても楽なると言われていた。
 そんなメイシスに一目ぼれをしたジュニアール。



 メイシスとジュニアールが初めて会ったのは、音楽祭の時だった。
 最優秀賞を受賞したメイシスに、皇子だったジュニアールがトロフィーを渡した時。
 目と目が合った瞬間に2人共ドキッとなり、胸がキュンとなった。

 
 言葉では言い表すことが出来ない気持ちが込みあがってきたが、皇子と平民では身分が違いすぎる2人…。

 
 ジュニアールは何度もメイシスを忘れようとしたが、それが出来ず何度も求婚を申し込みしたが、身分が違うと断られてばかりだった。



 だが求婚から3年後。

 ジュニアールの熱い想いに負け、メイシスはやっと結婚を承諾してくれたのだ。


 ジュニアール26歳、メイシス24歳の時だった。


 2人の結婚は国中が祝福してくれて、平民と王族の結婚で絆が深まったと言われるくらいだった。
 
 2年後には第一皇女のミディスが産まれ、家族も増え幸せいっぱいだった。


 だが…。
 メイシスは音楽祭を見るために、外出した時に一人で歩いているときに事故に遭いそのまま「脳死」となり帰らぬ人になってしまった。

 脳死であるメイシスは一生意識が戻ることはないと、医師から宣告された事から、ドナー登録をしていた為メイシスの内臓や心臓などは必要な人に提供されることになりそのまま埋葬されてしまった。

 臓器があれば奇跡的に目を覚ます可能性もないわけではないと期待もされたが、ジュニアールもメイシスが望んだ通りにして下さいと言った。


 産まれて間もないミディスは、何も知らずに無邪気なまま眠っていた。

 分かるようになり事故死したことを知らされても、ミディスはとても冷静で「大丈夫だよ。お母さんに、また会えるから」とジュニアールに言ったようだ。

 
 メイシスを不慮の事故で亡くし、ジュニアールは二度と誰かを愛することはない結婚する事もないと決めた。


 

 メイシスが事故で亡くなりもう10年経過しようとしている。
 
 ミディスももうすぐ10歳になる。


 
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