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穢れた国
擦り合わせ
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大きな部屋にみんなが集まった。
私の他にレオ、アレンディオ王子、サミュエルさん、神官のブランさん、リマとファッジとミアさんだ。
みんなどこか表情が固い。
ちょっと俯き気味に、これからの話に身構えている。
イェオリの面々と初対面になる教授とミアさんが挨拶をして、それをアレンディオ王子達が受けた。
「レオとサキカが随分と世話になったと聞いた。イェオリの王子として礼を言う。」
アレンさんはイェオリの王族なのに随分と腰が低い。
そっか、だからだ。
私は最初に会った王族がアレンさんだったから、これが普通だと思ってしまった。
ヨーシャー王、皇妃、セドリック…。
私が嫌いな王族は、アレンさんと比較してしまっていた事に今更ながら気付かされた。
「さて、今がどうなっているのか、皆の持っている情報を寄せ合いましょうか。」
ブラン神官の声掛けで、話し合いは始まった。
この国でコールと呼ばれている燃料は石炭なんかじゃなくて、禍の結晶だと思われること。
そしてそのコールを作り出しているのが、ミアさん達因子持ちの、文字通り身体を使って作り出されている事。
ミアさんの話を聞いた時、皆が黙り込んだ。その中でリマは耐え切れずに吐き戻した。
思わず駆け寄って、その背中を摩り、綺麗なタオルを当てがった。
「…汚れてしまいます。」
「気にしないで、私は気にしないから。」
「わ、私…なんて酷い事を…。」
リマは泣き出してしまった、それは後悔の涙だった。
坑道の中のトロッコで、レオ達は急ぐあまりにコールを燃やして走るトロッコに乗ったのだそう。
「あれは…もしかしたら…。」
その先を口に乗せる事を私は押し留めた。
「私も船に乗ったわ…。」
だからって慰めにもならない。知らなかったとはいえ、酷い事をしてしまった事実は変わらない。
でも…。
船の動力となるコールから禍の結晶だと思わせるような事を私でさえ微塵も感じ取れてはいなかった。
「禍には3種類あるのではないでしょうか?」
それが教授の考察だった。
私がフィンから聞いた話だと、ペレの力で生み出された禍の結晶は燃やさなくてはならない。
「…そうね、そう思う事でしか私達の罪の呵責は乗り越えられないかもしれないわね。」
…そうかもしれない。そうじゃないかもしれない…。
答えを聞いてしまえば、きっと私も耐え切れない。
「セドリックの兵士があっさりと俺を解放したのも頷ける。」
レオがその時一緒にいたのはバジェット司祭ではない。
おそらく兵士達はそれが誰だか知っていたのだと思う。
また、坑道の中の収容所で行われる事を知っていたら、坑道に入っていく事は避けたいと思ったのかも。
「あの、坑道への入り口に繋がる小屋にはここから追い出された兵士は誰一人入っては来ませんでした。
静かになって、私を探してくれる声が聞こえて、私とミアはあの小屋を出る気になれたのです。」
「…おそらく、ラウール伯爵かと思います。あの収容所の事を知っているのは、ミレペダ公爵とラウール伯爵と…おそらくそれくらいです。
神職にある人に化られそうな品性があったのなら、2人のどちらかです。」
ミアさんが呟いた。
ミアさんもまた良心の呵責に苛まれている。
私と出会う事で、その身を浄化し、苦しい使役から逃れているから。
その使役の中でミアさんは友をひとり死に追いやった。
「あなただけじゃない、必ずみんなを助け出す。それはココにいる者が誓う。」
レオの言葉にアレンディオ王子もサミュエルさんも力強く頷いてくれる。
「私も約束する。必ずあの場所に行くから。」
そう、必ず行かなくてはならない。
きっとそれが私がこの世界に呼び出された本当の目的だから。
私の他にレオ、アレンディオ王子、サミュエルさん、神官のブランさん、リマとファッジとミアさんだ。
みんなどこか表情が固い。
ちょっと俯き気味に、これからの話に身構えている。
イェオリの面々と初対面になる教授とミアさんが挨拶をして、それをアレンディオ王子達が受けた。
「レオとサキカが随分と世話になったと聞いた。イェオリの王子として礼を言う。」
アレンさんはイェオリの王族なのに随分と腰が低い。
そっか、だからだ。
私は最初に会った王族がアレンさんだったから、これが普通だと思ってしまった。
ヨーシャー王、皇妃、セドリック…。
私が嫌いな王族は、アレンさんと比較してしまっていた事に今更ながら気付かされた。
「さて、今がどうなっているのか、皆の持っている情報を寄せ合いましょうか。」
ブラン神官の声掛けで、話し合いは始まった。
この国でコールと呼ばれている燃料は石炭なんかじゃなくて、禍の結晶だと思われること。
そしてそのコールを作り出しているのが、ミアさん達因子持ちの、文字通り身体を使って作り出されている事。
ミアさんの話を聞いた時、皆が黙り込んだ。その中でリマは耐え切れずに吐き戻した。
思わず駆け寄って、その背中を摩り、綺麗なタオルを当てがった。
「…汚れてしまいます。」
「気にしないで、私は気にしないから。」
「わ、私…なんて酷い事を…。」
リマは泣き出してしまった、それは後悔の涙だった。
坑道の中のトロッコで、レオ達は急ぐあまりにコールを燃やして走るトロッコに乗ったのだそう。
「あれは…もしかしたら…。」
その先を口に乗せる事を私は押し留めた。
「私も船に乗ったわ…。」
だからって慰めにもならない。知らなかったとはいえ、酷い事をしてしまった事実は変わらない。
でも…。
船の動力となるコールから禍の結晶だと思わせるような事を私でさえ微塵も感じ取れてはいなかった。
「禍には3種類あるのではないでしょうか?」
それが教授の考察だった。
私がフィンから聞いた話だと、ペレの力で生み出された禍の結晶は燃やさなくてはならない。
「…そうね、そう思う事でしか私達の罪の呵責は乗り越えられないかもしれないわね。」
…そうかもしれない。そうじゃないかもしれない…。
答えを聞いてしまえば、きっと私も耐え切れない。
「セドリックの兵士があっさりと俺を解放したのも頷ける。」
レオがその時一緒にいたのはバジェット司祭ではない。
おそらく兵士達はそれが誰だか知っていたのだと思う。
また、坑道の中の収容所で行われる事を知っていたら、坑道に入っていく事は避けたいと思ったのかも。
「あの、坑道への入り口に繋がる小屋にはここから追い出された兵士は誰一人入っては来ませんでした。
静かになって、私を探してくれる声が聞こえて、私とミアはあの小屋を出る気になれたのです。」
「…おそらく、ラウール伯爵かと思います。あの収容所の事を知っているのは、ミレペダ公爵とラウール伯爵と…おそらくそれくらいです。
神職にある人に化られそうな品性があったのなら、2人のどちらかです。」
ミアさんが呟いた。
ミアさんもまた良心の呵責に苛まれている。
私と出会う事で、その身を浄化し、苦しい使役から逃れているから。
その使役の中でミアさんは友をひとり死に追いやった。
「あなただけじゃない、必ずみんなを助け出す。それはココにいる者が誓う。」
レオの言葉にアレンディオ王子もサミュエルさんも力強く頷いてくれる。
「私も約束する。必ずあの場所に行くから。」
そう、必ず行かなくてはならない。
きっとそれが私がこの世界に呼び出された本当の目的だから。
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