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穢れた国
新たな発見
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こんな身体になってひとつわかった事がある。
筋肉痛が少しずつ和らいでいくように、私の左足は徐々に動くようになっていった。
「まだらのうちは自然に禍は抜けていくのね。」
少しずつ元の肌の色に戻りつつある。
足首や膝は思うようには曲がらないけれど、なんとか立てるようにはなった。
お陰で教授に抱き上げられなくても、ベッドと車椅子の間を行き来出来るようになった。
腕だけはちっとも変わらない。
この国の車椅子は、押してもらわないと動けない車椅子で、セルフでタイヤを回すことは出来ない。まあ、片手だし、出来ても無理かな。
教授が車椅子を押して、外が眺められるバルコニーへ連れて行ってくれる。
湖に面したこのお屋敷、私がいる部屋のバルコニーからは大きなセブール湖の青々とした湖面と、白い岩肌の山脈を眺める事が出来る。
バルコニーを支える柱は湖の中にある。
それはあの遊園地のプールの飛び込み台を彷彿させた。
…身体が動くなら飛び込みたい。
そして泳いでこの屋敷を出て行くんだ。
…何回もそんな夢のような話を教授としてた。
「動けるようになったら、試したいですよね。」
半分は無理だと思ってるんだとは思うけど、教授は私の夢を打ち砕くような、危ないからダメ!みたいなことは言わないでいてくれる。
「本当に、綺麗な景色。」
澄んだ空気を胸一杯に吸い込んで、動く右手と右足を大きく伸ばした。
「…綺麗ですか?」
「はい、綺麗です。」
禍らしきものを見ることも感じることもない。
禍に塗れているというセブール湖はハマーン神殿にも負けないくらい、清浄な場所だった。
「ここに来るまでの間、禍を見たのはあの昇降機のあたりだけですよね。」
「ええ、教授。そうです。あの辺りだけが物凄く黒い霧に包まれてましたね。」
レオと合流する事が出来たら、最初にあの場所に行かないと!
そう思っているのに、一向にレオは見つからない。
「ねえ、ただ待ってても見つけては貰えないんじゃないかしら?」
「…そうですね。私もそう思います。」
うーん、どうしようかなぁ。
教会はもう頼れない場所になったしなぁ。
「お城は?」
「うーん、お勧めは出来ませんね。」
私を囲い込みたいラグーの王族。セドリックのお父さんだし…。
「ねえ、セドリックは?」
「…本気で言ってますか?」
「本気だけど。」
王様とミレペダ公爵が私とレオとを引き合わせたくないのなら、王様とミレペダ公爵は敵。
その王様とミレペダ公爵に幽閉されているセドリックは敵の敵。
「…なるほど。」
ウンウン、と教授が考え出した。
その時部屋に来客が告げられた。
「また、かしら?」
「ええ、そのようですね。」
毎日のように神の息吹の因子を持つ人が、ミレペダ公爵から送り込まれてくる。
子鹿か子猫のように怯えて震えながら、恐る恐る私の手を取って。
「出来ません。」
とホッとしたように呟いて、帰っていく。
あれ?あの人は?
前に来て、出来ないと帰っていった人の1人だった。
「あ、あの。神子様だと伺いました。」
そうだけど、今は役立たずよ、と笑ってみせると、
「神子様なら、きっと私より器は大きい…ハズですよね。
あ、あの…。試してみたい事があります。」
試してみたい事?
「一旦、私の禍を吸ってもらえませんか?」
筋肉痛が少しずつ和らいでいくように、私の左足は徐々に動くようになっていった。
「まだらのうちは自然に禍は抜けていくのね。」
少しずつ元の肌の色に戻りつつある。
足首や膝は思うようには曲がらないけれど、なんとか立てるようにはなった。
お陰で教授に抱き上げられなくても、ベッドと車椅子の間を行き来出来るようになった。
腕だけはちっとも変わらない。
この国の車椅子は、押してもらわないと動けない車椅子で、セルフでタイヤを回すことは出来ない。まあ、片手だし、出来ても無理かな。
教授が車椅子を押して、外が眺められるバルコニーへ連れて行ってくれる。
湖に面したこのお屋敷、私がいる部屋のバルコニーからは大きなセブール湖の青々とした湖面と、白い岩肌の山脈を眺める事が出来る。
バルコニーを支える柱は湖の中にある。
それはあの遊園地のプールの飛び込み台を彷彿させた。
…身体が動くなら飛び込みたい。
そして泳いでこの屋敷を出て行くんだ。
…何回もそんな夢のような話を教授としてた。
「動けるようになったら、試したいですよね。」
半分は無理だと思ってるんだとは思うけど、教授は私の夢を打ち砕くような、危ないからダメ!みたいなことは言わないでいてくれる。
「本当に、綺麗な景色。」
澄んだ空気を胸一杯に吸い込んで、動く右手と右足を大きく伸ばした。
「…綺麗ですか?」
「はい、綺麗です。」
禍らしきものを見ることも感じることもない。
禍に塗れているというセブール湖はハマーン神殿にも負けないくらい、清浄な場所だった。
「ここに来るまでの間、禍を見たのはあの昇降機のあたりだけですよね。」
「ええ、教授。そうです。あの辺りだけが物凄く黒い霧に包まれてましたね。」
レオと合流する事が出来たら、最初にあの場所に行かないと!
そう思っているのに、一向にレオは見つからない。
「ねえ、ただ待ってても見つけては貰えないんじゃないかしら?」
「…そうですね。私もそう思います。」
うーん、どうしようかなぁ。
教会はもう頼れない場所になったしなぁ。
「お城は?」
「うーん、お勧めは出来ませんね。」
私を囲い込みたいラグーの王族。セドリックのお父さんだし…。
「ねえ、セドリックは?」
「…本気で言ってますか?」
「本気だけど。」
王様とミレペダ公爵が私とレオとを引き合わせたくないのなら、王様とミレペダ公爵は敵。
その王様とミレペダ公爵に幽閉されているセドリックは敵の敵。
「…なるほど。」
ウンウン、と教授が考え出した。
その時部屋に来客が告げられた。
「また、かしら?」
「ええ、そのようですね。」
毎日のように神の息吹の因子を持つ人が、ミレペダ公爵から送り込まれてくる。
子鹿か子猫のように怯えて震えながら、恐る恐る私の手を取って。
「出来ません。」
とホッとしたように呟いて、帰っていく。
あれ?あの人は?
前に来て、出来ないと帰っていった人の1人だった。
「あ、あの。神子様だと伺いました。」
そうだけど、今は役立たずよ、と笑ってみせると、
「神子様なら、きっと私より器は大きい…ハズですよね。
あ、あの…。試してみたい事があります。」
試してみたい事?
「一旦、私の禍を吸ってもらえませんか?」
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