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双子の街
合流
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仕方なく御者さんの手を借りて倒れていた妊婦さんを馬車に乗せた。
「だから言ったのに!どうするんですか?」
リマは怒るけど、だって仕方がなかったじゃない。
「見捨てるなんて出来なかったんだもん。」
咲香には信じられない事だった。
倒れている妊婦を通りすがりの旅人に託して行ってしまった。
それもひとり2人じゃない。
その上自分まで…。
貧乏くじと言われようとなんと言われようと、人としてそれは出来ないと思っちゃったんだから、仕方ないじゃない!!
「リマだって…。あの感じで行っちゃうの?」
「行く訳ないじゃないですか!?こう見えて神殿で暮らしていた身ですよ!!
でも…困りましたね。」
リマが妊婦さんを心配そうに見つめている。
リマが優しくて困っている人を放り出すような人じゃないことにホッとした。
そして…。
「…どうしましょう。」
「ね、どうしよう…。
そうだわ、とりあえずブランさんに会って、ファッジを拾って…。事情を話したらどうにかしてもらえるかも。
それとも一緒に街を出て、レオと合流して浄化してから別れるか…。」
兎にも角にも急ぎましょう、と馬車を走らせた。
ブランさんの家は直ぐにわかった。
ファッジが家の前に出て立ってくれていたから。
「ファッジ!」
馬車から手を振ると、ファッジもまた嬉しそうに手を振りかえしてくれた。
「良かった、街を分けられたと聞いたから心配だったんだ。」
「え?もう知ってるの?」
ファッジは私たちがどちらに行くのかはわからないはずで、しかも揃って南に行く手筈だった。
アクシデントで北に入ったみたいなのに、ファッジが予め知ってそうな雰囲気で話すのが不思議だと思った。
でも、それよりも。
「あのね、さっき街で…。」
倒れた妊婦さんを保護した事を伝えて、一刻も早くレオと合流して浄化をしなくちゃ、と伝える。
「では中に運び入れましょう。」
「それでいいの?」
大丈夫ですよ、とファッジが請け負ってくれた。
「良かったわ。」
ファッジが妊婦さんを抱き抱えて、家に入る。
「そのドアを開けて、階段を上がってください。」
ファッジの指示に従って、1階の事務所を抜けて、階段を上がる。
店舗兼住宅なのね…、モダンなお家だわ、キョロキョロと不躾に内装を見ながら進むと。
「サキカ!良かった!!」
出迎えてくれたのは、嬉しそうにこちらを見詰めるレオと、その後ろに立っていた教授だった。
「レオ!?どうして!?」
レオ達がどうしてここにいるのかがわからない。
一瞬私は慌てかけた。
なんで?どうして?聞きたいことが溢れてきたけれど、やらなきゃならない事を思い出して。
でもそれは後回しにしなきゃ!
「レオ、お願い。この人を浄化したいの。」
今度はレオ達が慌てたのがわかる。
「えっ?この人を?っというか、この人は誰?」
「いいから!後で!!」
ブランさんらしいこの家のご主人っぽいお爺さんの方がよっぽど落ち着いていた。
「サリー?また?」
とかなんとか喋ってる。
「お知り合い?」
「宿屋の娘さんです。」
あー、そうか。
旅人の私達だから宿屋に行くのだろう、とか思っちゃったんだ。
「禍を集めちゃってるの、浄化してあげたいの。」
なんで少し目を離すとサキカはこうなるんだ?とレオは呆れるけど、
「だってみちゃったんだもの。それにはこの人だけじゃないのよ!他にもたくさんいたんだから!」
他にもたくさん?と教授やジョージアさんが驚いた声をあげる。
「後で話すから!浄化が先!!」
叫ぶようにみんなを説得させて、とりあえず妊婦さんをソファーに寝かせて、手を握る。
スルスルと身体に禍の熱い塊が入ってくるのがわかる。
見た目よりは濃そうだ。だけどそんなに驚くほどでもない。
レオに首を触ってもらって、熱い塊の渦をひんやりとする首にぶつけるように当てて…。
カッと熱くなった身体は、スーッと冷めていった。
「よし、終わった。」
顔色も戻っているし、きっともう大丈夫。
「湯あたりみたい、って言われていたんです。すみませんが少し休ませてあげられますか?」
挨拶も無視して勝手な事をしたとこを謝りながら、更にお願いを重ねる。
第一印象はきっと最悪だろう。
ご主人は笑顔でそれを受け入れてくれた。
とても優しそうなお爺さんだった。
「妊婦で…倒れるほどに禍を集めてしまうのか…。」
この先が心配だな、とレオが呟き、
「やはりそうなのね…この子未婚なんですよ。困ったわ、先が思いやられる。」
とナタリアさんが告げた。
…どういうこと?
訳がわからなくて教授に見た。
教授は頷いて私にもわかるように説明してくれる。
「妊娠して禍を集めやすくなったという事は、このお腹の中の子供は因子持ちの可能性がある。おそらく父親は貴族だ。」
「神の息吹の因子?」
「ああ、他に可能性があるのは、治癒…かな。」
「それが困った事になるの?」
「神の息吹の因子持ちは教会に庇護される。庇護といえば聞こえは良いが、監視されて管理されるとも言える。
おそらく…父親の事はハッキリさせなくてはならなくなる。
養育する義務が父親にもある。相手が貴族なら…子を奪われる事になるかもしれない。」
…なにそれ。意味不明。
「だから言ったのに!どうするんですか?」
リマは怒るけど、だって仕方がなかったじゃない。
「見捨てるなんて出来なかったんだもん。」
咲香には信じられない事だった。
倒れている妊婦を通りすがりの旅人に託して行ってしまった。
それもひとり2人じゃない。
その上自分まで…。
貧乏くじと言われようとなんと言われようと、人としてそれは出来ないと思っちゃったんだから、仕方ないじゃない!!
「リマだって…。あの感じで行っちゃうの?」
「行く訳ないじゃないですか!?こう見えて神殿で暮らしていた身ですよ!!
でも…困りましたね。」
リマが妊婦さんを心配そうに見つめている。
リマが優しくて困っている人を放り出すような人じゃないことにホッとした。
そして…。
「…どうしましょう。」
「ね、どうしよう…。
そうだわ、とりあえずブランさんに会って、ファッジを拾って…。事情を話したらどうにかしてもらえるかも。
それとも一緒に街を出て、レオと合流して浄化してから別れるか…。」
兎にも角にも急ぎましょう、と馬車を走らせた。
ブランさんの家は直ぐにわかった。
ファッジが家の前に出て立ってくれていたから。
「ファッジ!」
馬車から手を振ると、ファッジもまた嬉しそうに手を振りかえしてくれた。
「良かった、街を分けられたと聞いたから心配だったんだ。」
「え?もう知ってるの?」
ファッジは私たちがどちらに行くのかはわからないはずで、しかも揃って南に行く手筈だった。
アクシデントで北に入ったみたいなのに、ファッジが予め知ってそうな雰囲気で話すのが不思議だと思った。
でも、それよりも。
「あのね、さっき街で…。」
倒れた妊婦さんを保護した事を伝えて、一刻も早くレオと合流して浄化をしなくちゃ、と伝える。
「では中に運び入れましょう。」
「それでいいの?」
大丈夫ですよ、とファッジが請け負ってくれた。
「良かったわ。」
ファッジが妊婦さんを抱き抱えて、家に入る。
「そのドアを開けて、階段を上がってください。」
ファッジの指示に従って、1階の事務所を抜けて、階段を上がる。
店舗兼住宅なのね…、モダンなお家だわ、キョロキョロと不躾に内装を見ながら進むと。
「サキカ!良かった!!」
出迎えてくれたのは、嬉しそうにこちらを見詰めるレオと、その後ろに立っていた教授だった。
「レオ!?どうして!?」
レオ達がどうしてここにいるのかがわからない。
一瞬私は慌てかけた。
なんで?どうして?聞きたいことが溢れてきたけれど、やらなきゃならない事を思い出して。
でもそれは後回しにしなきゃ!
「レオ、お願い。この人を浄化したいの。」
今度はレオ達が慌てたのがわかる。
「えっ?この人を?っというか、この人は誰?」
「いいから!後で!!」
ブランさんらしいこの家のご主人っぽいお爺さんの方がよっぽど落ち着いていた。
「サリー?また?」
とかなんとか喋ってる。
「お知り合い?」
「宿屋の娘さんです。」
あー、そうか。
旅人の私達だから宿屋に行くのだろう、とか思っちゃったんだ。
「禍を集めちゃってるの、浄化してあげたいの。」
なんで少し目を離すとサキカはこうなるんだ?とレオは呆れるけど、
「だってみちゃったんだもの。それにはこの人だけじゃないのよ!他にもたくさんいたんだから!」
他にもたくさん?と教授やジョージアさんが驚いた声をあげる。
「後で話すから!浄化が先!!」
叫ぶようにみんなを説得させて、とりあえず妊婦さんをソファーに寝かせて、手を握る。
スルスルと身体に禍の熱い塊が入ってくるのがわかる。
見た目よりは濃そうだ。だけどそんなに驚くほどでもない。
レオに首を触ってもらって、熱い塊の渦をひんやりとする首にぶつけるように当てて…。
カッと熱くなった身体は、スーッと冷めていった。
「よし、終わった。」
顔色も戻っているし、きっともう大丈夫。
「湯あたりみたい、って言われていたんです。すみませんが少し休ませてあげられますか?」
挨拶も無視して勝手な事をしたとこを謝りながら、更にお願いを重ねる。
第一印象はきっと最悪だろう。
ご主人は笑顔でそれを受け入れてくれた。
とても優しそうなお爺さんだった。
「妊婦で…倒れるほどに禍を集めてしまうのか…。」
この先が心配だな、とレオが呟き、
「やはりそうなのね…この子未婚なんですよ。困ったわ、先が思いやられる。」
とナタリアさんが告げた。
…どういうこと?
訳がわからなくて教授に見た。
教授は頷いて私にもわかるように説明してくれる。
「妊娠して禍を集めやすくなったという事は、このお腹の中の子供は因子持ちの可能性がある。おそらく父親は貴族だ。」
「神の息吹の因子?」
「ああ、他に可能性があるのは、治癒…かな。」
「それが困った事になるの?」
「神の息吹の因子持ちは教会に庇護される。庇護といえば聞こえは良いが、監視されて管理されるとも言える。
おそらく…父親の事はハッキリさせなくてはならなくなる。
養育する義務が父親にもある。相手が貴族なら…子を奪われる事になるかもしれない。」
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