亡国の王子に下賜された神子

枝豆

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祠の村

フロー村 後日談

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カイルは父に旅には出ないと告げた。
理由はきちんと話した。

父の仕事を尊敬していること。
農業を極めたいと思っていること。
愛する人がいること。
自分を必要としてくれる人がいる事。

必要としてくれる人は、フローレンスだけではなく、耕作に手が足りない伯爵だけでなく、ブランディールに嫁ぐはずだったロサ姫の鎮魂の義務が、ブランの末裔である自分にはあると思うから、と。

「ここに在るべき理由があるのに、旅に出る意味はない!
どうしてもというならば、農閑期に帝都見物にでも行ってくるよ、愛するフローレンスと共に新婚旅行に行くのは悪くない。」

頑なだった父は折れた。


父の心を動かしたのは、息子の、父への尊敬か、愛する人と共に在りたいと願う心か、ブランの末裔だという自覚を持った為か。

ただ父は思い出していた。
流浪の旅を終わらせたのは、濃い緑の畑の中で見た、今横にいる愛する人の笑顔だった事を。

ただ農閑期に旅に行く事は約束させた。
でないと今のブランのしきたりに反く事になってしまう。
神子賜りを受けたレオが神子と2人で仲睦まじく旅をしているのだから、これくらいの抜け道は「家族」には許してもらおうと願って。




長年「ユレの祠」とされてきたロサ姫の墓は年一回だった儀式が年4回に増やされた。
扉こそ施錠されてはいるが、鉄柵の門扉は常に開かれている。

フロー村に留め置かれる事になったロサ姫がこの村を故郷だと思ってもらえるように、今日も村人達は収穫された野菜を持って、ロサ姫のお墓を訪れる。
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