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祠の村
本来の旅の姿
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それから私達は2週間ほどのんびりとフロー村で過ごした。
美魔女様はあの朽ちた蔓を直すのだという。
その飾りが出来るまでの間、私達はここに残ることを決めた。
時期はとうもろこしの収穫期。
レオとファッジはカイル様の畑仕事を手伝い、私とリマはフローレンス様とお喋りをして過ごした。
…フローレンス様のお喋りを聞いていた。
レオに取ってこれが本来の旅の姿だと思う。
その地で暮らす人の生活を知り、経験を積む。
いつか在るべき場所にたどり着いたとき、それはきっとレオの中の糧となり芽吹くと良いな。
この世界でリマに続き2人目の友となったフローレンス様はやっぱりカイルさんの事が大好きだった。
「旅立ってしまえばきっとカイルはここへは戻って来ない気がしてしまって…。」
あの手この手でなんとかこの村に留まってもらえるように、また旅立っても帰ってきて貰える様に、家を建てたり食事を作ったりしていたそうだ。
「…良いなぁ、ラブラブで。」
どう見ても2人は想い合っている。
ただカイルさんは決定的な一言は言ってはくれないとフローレンス様は哀しげに俯いて…。
「だって。ブランの旅立ちを邪魔する者はブランを敵に回しちゃうでしょう?
想いがあるからこそ、フローレンス様を理由には出来ないんじゃなくて?」
そういうと真っ赤になって俯いてしまうのが本当に可愛らしい。
レオもなんだか生き生きとしているように思う。
「いい経験になったと思う。下級とはいえ貴族だった俺にはこのように大地と触れ合う経験は貴重だった。」
となんだか楽しそう。
「私もね、夏休みには良くお祖父ちゃんを手伝っていたの。私もやりたいくらいだわ。」
やりたかったのに流石に止められたのは私が「神子」だからだ。
仕方なかったとはいえバラさなければ良かったと後悔している。
「カイルにちゃんと心の内を父上に曝け出すように勧めた。
カイルはここに引き止められるのではなく、自分の意思でここに残るのだということをわかってもらう必要がある。」
そうね、思い合う2人を割くことがいい事だとは思えない。
放浪するしかなかったブランの者に安住の地が出来た、それだけの話にしてあげたい。
飾りが出来上がって、祠を綺麗に直した。
生い茂っていた雑草も綺麗に刈り取り、伸び放題だった木の剪定もした。
鬱蒼とした森に陽の光が辺り、空気は清浄になった。
「私、ここが好きになれそうです。」
とフローレンス様は言う。
このお墓を護る事がここの領主の使命、この地で流行病を患い、嫁ぐ事が出来なかったロサ姫へのせめてもの償いにしたい。
「もうきっとロサ姫の魂はここにはいない気がするけれど。」
そういうとそれでもいいとフローレンス様は言う。
「帰る場所があるだけでもきっと心が安らぐと思うから。いつでもここに帰ってきてくださればいいと思いますわ。」
怖くて震えていたフローレンス様じゃなくなっている。
レオと手を繋いで、ロサ姫の棺桶に手を触れた。
禍は少しも感じなかった。
私達は晴れ晴れとした気持ちでフローの村を旅立った。
美魔女様はあの朽ちた蔓を直すのだという。
その飾りが出来るまでの間、私達はここに残ることを決めた。
時期はとうもろこしの収穫期。
レオとファッジはカイル様の畑仕事を手伝い、私とリマはフローレンス様とお喋りをして過ごした。
…フローレンス様のお喋りを聞いていた。
レオに取ってこれが本来の旅の姿だと思う。
その地で暮らす人の生活を知り、経験を積む。
いつか在るべき場所にたどり着いたとき、それはきっとレオの中の糧となり芽吹くと良いな。
この世界でリマに続き2人目の友となったフローレンス様はやっぱりカイルさんの事が大好きだった。
「旅立ってしまえばきっとカイルはここへは戻って来ない気がしてしまって…。」
あの手この手でなんとかこの村に留まってもらえるように、また旅立っても帰ってきて貰える様に、家を建てたり食事を作ったりしていたそうだ。
「…良いなぁ、ラブラブで。」
どう見ても2人は想い合っている。
ただカイルさんは決定的な一言は言ってはくれないとフローレンス様は哀しげに俯いて…。
「だって。ブランの旅立ちを邪魔する者はブランを敵に回しちゃうでしょう?
想いがあるからこそ、フローレンス様を理由には出来ないんじゃなくて?」
そういうと真っ赤になって俯いてしまうのが本当に可愛らしい。
レオもなんだか生き生きとしているように思う。
「いい経験になったと思う。下級とはいえ貴族だった俺にはこのように大地と触れ合う経験は貴重だった。」
となんだか楽しそう。
「私もね、夏休みには良くお祖父ちゃんを手伝っていたの。私もやりたいくらいだわ。」
やりたかったのに流石に止められたのは私が「神子」だからだ。
仕方なかったとはいえバラさなければ良かったと後悔している。
「カイルにちゃんと心の内を父上に曝け出すように勧めた。
カイルはここに引き止められるのではなく、自分の意思でここに残るのだということをわかってもらう必要がある。」
そうね、思い合う2人を割くことがいい事だとは思えない。
放浪するしかなかったブランの者に安住の地が出来た、それだけの話にしてあげたい。
飾りが出来上がって、祠を綺麗に直した。
生い茂っていた雑草も綺麗に刈り取り、伸び放題だった木の剪定もした。
鬱蒼とした森に陽の光が辺り、空気は清浄になった。
「私、ここが好きになれそうです。」
とフローレンス様は言う。
このお墓を護る事がここの領主の使命、この地で流行病を患い、嫁ぐ事が出来なかったロサ姫へのせめてもの償いにしたい。
「もうきっとロサ姫の魂はここにはいない気がするけれど。」
そういうとそれでもいいとフローレンス様は言う。
「帰る場所があるだけでもきっと心が安らぐと思うから。いつでもここに帰ってきてくださればいいと思いますわ。」
怖くて震えていたフローレンス様じゃなくなっている。
レオと手を繋いで、ロサ姫の棺桶に手を触れた。
禍は少しも感じなかった。
私達は晴れ晴れとした気持ちでフローの村を旅立った。
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