46 / 152
祠の村
霧に襲われる
しおりを挟む
築山の、柵の入り口に立った。
周りは真っ暗な霧に覆われて見える。
カイルさんが鍵を使って南京錠を外した。
ギィーと軋む音と共に柵の扉が開かれる。
「…大丈夫?」
レオが心配して聞いてきたから、うん、と答えた。
大丈夫かは本当はわからないけれど、そう言うしかないじゃない?
寒い冬の夜に熱いお風呂に入った時のように、ピリピリしたものが身体を刺してくる。
レオと気休めに手を繋いで、一歩足を踏み出した。
暗く静かな参道を4人で歩くと、重く冷たい空気に包まれる。
ただ、私の身体の中には吸収出来ない。
まだ私には大気から禍を集める事は出来ないのかもしれない。
「あれが祠です。」
目の前に小さな建物が見えた。
白い壁に赤茶の屋根。屋根は素焼きの瓦みたいに見える。小さな陶器の板を少しずつずらして重ねられている。
そして大きな金属の観音扉。やはり扉には南京錠が嵌められている。
異様にみえるのが、金属の蔦飾りだ。
祠に巻き付けられたように幾重にも蔦の飾りが施されている。
カイルがまた違う鍵を使って扉の南京錠を外した。
「…開けますよ。」
ギュッとレオと繋いだ手に力を込めた。
開けた瞬間、ブワッと黒い霧の塊が私を襲ってきた。
飲み込まれる!
そう思ってつい顔を背けたとき、私の意識は無くなったらしい。
…サキカ!
レオの声が遠くから聞こえた。
寒い…。ううん、温かい。
う?やっぱり寒い…。
目が覚めたとき、私はほぼ裸の下着姿でレオに抱き込まれていた。
ポカポカと温かい。
…ああ、副作用が出ちゃったんだな、と思った。
そしてそれはそれだけの禍があそこにあったという事。
レオはまだ眠っている。透けるように白い頬、長いまつ毛。眠っている姿は芸術的に美しい。
ここ、どこだろう?
レオを起こさないように周りを見回した。
天井は白く塗られた桟が格子状に組まれて、四角に区切られた場所には花の絵が描いてある。白い壁に白い家具。
全体的に白、そしてカーテンやクッションはピンクの小花柄。
ふふ、可愛い。
おそらくだけど、若い女の子の為の部屋だと思う。
フロー様のお屋敷?確かお嬢さんがいらしたような…?
あの美魔女様も驚いたかもしれない。
好きになれないと言っていたから、何か感じていたものがあったのだろう、図らずもそれを証明してしまった。
…今何時ごろなんだろう。随分と長く眠ってしまったのかもしれない。
…喉乾いたな。
レオを起こさないように気をつけてそっとベッドから抜け出そうとしたけれど、失敗したらしい。
「う…ああサキカ、目が覚めたか?」
「おはよう。」
ふふ、とレオが微笑む。
「多分まだ朝じゃない。」
カーテンの向こう側は明るい。たぶん夕方。
2~3時間ほど眠ったようだ。
「前に比べると短い…の?」
「違う、過去最高だと思う。丸1日だ。」
「そ、そんなに!?」
そりゃ喉も乾くはず。
レオが起きて水差しからコップに水を移して渡してくれる。
レオはパンツしか履いていないからほぼ裸で、二の腕や腹筋の筋肉をつい見てしまう。
目のやり場に困って、掛け布団の中に慌てて頭まで潜る。
「…何か着たい。」
わたしだって似たような格好だ。多分ショーツとスリップ姿。この世界にブラジャーに当たるような物はなく、スリップの胸の部分が二重になっていて、アンダーバストで切り替えがある。ノンワイヤーのブラスリップが正しい言い方かもしれない。
気絶した時に誰かが上に着ていたドレスを脱がしたらしいので、それがレオではなくリマだと良いなぁ、と願うだけだ。
レオがガウンを手渡してくれた。
布団の中でもぞもぞとそれを着込んでから起きる。
レオからコップを受け取って、ごくごくと飲んだ。
「はあーっ、少し落ち着いた。」
副作用が起きたという事は私の器がまた大きくなったのだろうか。
「ねえ、どのくらいの石を出したの?」
「…それが全く出しではいないんだ。」
結晶してない?
という事は私の中に溶け込んだのだろうか。
私の身体はそんなにはダメージは残っては無さそうだ。
「ねえ、ここはどこ?」
「カイルの家だ。」
「…カイル?ウソでしょう?こんなに可愛いのに…。」
「いいや、カイルの家だよ。ただカイルの趣味じゃないだけ。
…カイルは渋っていたよ、ここに僕達を連れてくるのを。教授が押し切ったんだけど…。まあ起きたら、色々わかるよ。」
どうしてかわからないけれど、レオはニヤニヤと笑っている。
周りは真っ暗な霧に覆われて見える。
カイルさんが鍵を使って南京錠を外した。
ギィーと軋む音と共に柵の扉が開かれる。
「…大丈夫?」
レオが心配して聞いてきたから、うん、と答えた。
大丈夫かは本当はわからないけれど、そう言うしかないじゃない?
寒い冬の夜に熱いお風呂に入った時のように、ピリピリしたものが身体を刺してくる。
レオと気休めに手を繋いで、一歩足を踏み出した。
暗く静かな参道を4人で歩くと、重く冷たい空気に包まれる。
ただ、私の身体の中には吸収出来ない。
まだ私には大気から禍を集める事は出来ないのかもしれない。
「あれが祠です。」
目の前に小さな建物が見えた。
白い壁に赤茶の屋根。屋根は素焼きの瓦みたいに見える。小さな陶器の板を少しずつずらして重ねられている。
そして大きな金属の観音扉。やはり扉には南京錠が嵌められている。
異様にみえるのが、金属の蔦飾りだ。
祠に巻き付けられたように幾重にも蔦の飾りが施されている。
カイルがまた違う鍵を使って扉の南京錠を外した。
「…開けますよ。」
ギュッとレオと繋いだ手に力を込めた。
開けた瞬間、ブワッと黒い霧の塊が私を襲ってきた。
飲み込まれる!
そう思ってつい顔を背けたとき、私の意識は無くなったらしい。
…サキカ!
レオの声が遠くから聞こえた。
寒い…。ううん、温かい。
う?やっぱり寒い…。
目が覚めたとき、私はほぼ裸の下着姿でレオに抱き込まれていた。
ポカポカと温かい。
…ああ、副作用が出ちゃったんだな、と思った。
そしてそれはそれだけの禍があそこにあったという事。
レオはまだ眠っている。透けるように白い頬、長いまつ毛。眠っている姿は芸術的に美しい。
ここ、どこだろう?
レオを起こさないように周りを見回した。
天井は白く塗られた桟が格子状に組まれて、四角に区切られた場所には花の絵が描いてある。白い壁に白い家具。
全体的に白、そしてカーテンやクッションはピンクの小花柄。
ふふ、可愛い。
おそらくだけど、若い女の子の為の部屋だと思う。
フロー様のお屋敷?確かお嬢さんがいらしたような…?
あの美魔女様も驚いたかもしれない。
好きになれないと言っていたから、何か感じていたものがあったのだろう、図らずもそれを証明してしまった。
…今何時ごろなんだろう。随分と長く眠ってしまったのかもしれない。
…喉乾いたな。
レオを起こさないように気をつけてそっとベッドから抜け出そうとしたけれど、失敗したらしい。
「う…ああサキカ、目が覚めたか?」
「おはよう。」
ふふ、とレオが微笑む。
「多分まだ朝じゃない。」
カーテンの向こう側は明るい。たぶん夕方。
2~3時間ほど眠ったようだ。
「前に比べると短い…の?」
「違う、過去最高だと思う。丸1日だ。」
「そ、そんなに!?」
そりゃ喉も乾くはず。
レオが起きて水差しからコップに水を移して渡してくれる。
レオはパンツしか履いていないからほぼ裸で、二の腕や腹筋の筋肉をつい見てしまう。
目のやり場に困って、掛け布団の中に慌てて頭まで潜る。
「…何か着たい。」
わたしだって似たような格好だ。多分ショーツとスリップ姿。この世界にブラジャーに当たるような物はなく、スリップの胸の部分が二重になっていて、アンダーバストで切り替えがある。ノンワイヤーのブラスリップが正しい言い方かもしれない。
気絶した時に誰かが上に着ていたドレスを脱がしたらしいので、それがレオではなくリマだと良いなぁ、と願うだけだ。
レオがガウンを手渡してくれた。
布団の中でもぞもぞとそれを着込んでから起きる。
レオからコップを受け取って、ごくごくと飲んだ。
「はあーっ、少し落ち着いた。」
副作用が起きたという事は私の器がまた大きくなったのだろうか。
「ねえ、どのくらいの石を出したの?」
「…それが全く出しではいないんだ。」
結晶してない?
という事は私の中に溶け込んだのだろうか。
私の身体はそんなにはダメージは残っては無さそうだ。
「ねえ、ここはどこ?」
「カイルの家だ。」
「…カイル?ウソでしょう?こんなに可愛いのに…。」
「いいや、カイルの家だよ。ただカイルの趣味じゃないだけ。
…カイルは渋っていたよ、ここに僕達を連れてくるのを。教授が押し切ったんだけど…。まあ起きたら、色々わかるよ。」
どうしてかわからないけれど、レオはニヤニヤと笑っている。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる