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ハマの儀式
レオの父
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3人は早々に館を出ていき、俺は眠っている様に見える神子を見つめていた。
守護者に選ばれた。
なぜ俺なのかわからない。
このところこんなのばっかりだ。
いきなり大層な名前をつけられ、ハマの儀式に参加させられた。
縁のなかった王族や高位貴族の子息達と気安い関係を求められて。
これは俺が望んでいた事とは少し、いや随分と違う。
目の前の神子は幼い少女だ。神々しさはないが、さりとて普通にも見えない。
「神子の守護者となり生きる。」
覚悟も自覚もまだない。あるのは困惑、戸惑い、不安…。
…これから俺はどうなるのだろう。
「レオ」
声がして振り向くと、旅装姿の父がいた。
「…父さん。」
イェオリから要職にあるものが駆けつけるとは聞いていた。
王太子か宰相か…その辺りかと思っていたのに、父も来てくれたのだ。
「父さん…。」
「大丈夫だ。」
真っ直ぐに温かい目でボクを見下ろす父が、幼い頃、失敗をした僕を慰めてくれた時の父と重なって見えた。
だからだろうか、つい抱きついてしまった。
小さい子供の頃を思い出す、父の大きな胸はひと回り小さくて細くて。
だけどものすごく安心できる、大好きで尊敬する父の懐。
ポンポンと頭に掌を乗せて、ギュッと抱きしめてくれた。
「…もう大丈夫。」
こんなことしてる場合じゃない。
しっかりしなければ!
父を隣の部屋へと落ち着かせた。
神子が目覚めるまでは何人も神子の前には出せない。
目覚めた時、最初に神子の目に映るのは「守護者」でなければならない、のだそう。
神子の気配を逃さないように、細く扉は開けておく。
重厚な絨毯に大きな一枚板、色とりどりのクッション。
硬めのクッションを背もたれに父と向かい合って座した。
「大体はデュアルから聞いた、何か俺に出来ることはあるか?」
「色々聞きたい事が。まずは俺の名前。」
「レオ、だ。俺が付けたのは。獅子、という意味だ。」
うん、と頷く。
「レオボルト、じゃなかった。」
「ああ、そうだ。」
「なんでだろう…。」
「可能性があるのは、直系だからかもしれない。」
「興国のレオボルトの直系になるの?」
「ああ、なるな。国を追われた王子が先祖になる。
ブランディール国が滅びた時に、王子は2人いた。
ひとりは例えヨーシャーに屈したとしても国を守る残すべきだ、と一部の民と共に国に残った。
もうひとりの王子は生き抜くために新天地を求める民と共に国を出た。こちらがブランで、国に残った王子がレブロンとなった。しかしレブロンの血筋はヨーシャによって絶えた。」
「父さんもハマの儀式は…?」
「したさ、託宣で果てたけれど。」
そうか、父は儀式には残らなかったのか。
「旅は終わりだろ、父さん。」
「ああ、レオが神子の守護者だからな。在るべき場所を見つけたら旅は終わりだ。
覚悟を決めろ。」
「…覚悟はあるよ、でも自分で選び取りたかったよ。」
「お前は選び取ったんだろ。神子を引き上げたのはお前だ。」
「ただ溺れている女人だと思ったんだ。」
「…そうか。だがそれも神意だろう。」
父は細く開いたドアから神子を見つめる。
「まだ子供だ、助けてやらなくてはならない。
戸惑いや葛藤は神子の方がお前よりも大きく深い物になるだろう。
ブランの血の結束はお前だけではなく、神子も同様に助ける。
おそらく各国の王族や教会が2人を囲い込もうとするだろう、いいか、忘れるな。
ブランを頼れ、ブランは家族としてお前と神子を護るから。」
うん、と頷いた。
「忘れるな、ひとりじゃない。」
うん、と頷いた。
父はもう一度僕の頭を叩いてから、部屋を出て行った。
守護者に選ばれた。
なぜ俺なのかわからない。
このところこんなのばっかりだ。
いきなり大層な名前をつけられ、ハマの儀式に参加させられた。
縁のなかった王族や高位貴族の子息達と気安い関係を求められて。
これは俺が望んでいた事とは少し、いや随分と違う。
目の前の神子は幼い少女だ。神々しさはないが、さりとて普通にも見えない。
「神子の守護者となり生きる。」
覚悟も自覚もまだない。あるのは困惑、戸惑い、不安…。
…これから俺はどうなるのだろう。
「レオ」
声がして振り向くと、旅装姿の父がいた。
「…父さん。」
イェオリから要職にあるものが駆けつけるとは聞いていた。
王太子か宰相か…その辺りかと思っていたのに、父も来てくれたのだ。
「父さん…。」
「大丈夫だ。」
真っ直ぐに温かい目でボクを見下ろす父が、幼い頃、失敗をした僕を慰めてくれた時の父と重なって見えた。
だからだろうか、つい抱きついてしまった。
小さい子供の頃を思い出す、父の大きな胸はひと回り小さくて細くて。
だけどものすごく安心できる、大好きで尊敬する父の懐。
ポンポンと頭に掌を乗せて、ギュッと抱きしめてくれた。
「…もう大丈夫。」
こんなことしてる場合じゃない。
しっかりしなければ!
父を隣の部屋へと落ち着かせた。
神子が目覚めるまでは何人も神子の前には出せない。
目覚めた時、最初に神子の目に映るのは「守護者」でなければならない、のだそう。
神子の気配を逃さないように、細く扉は開けておく。
重厚な絨毯に大きな一枚板、色とりどりのクッション。
硬めのクッションを背もたれに父と向かい合って座した。
「大体はデュアルから聞いた、何か俺に出来ることはあるか?」
「色々聞きたい事が。まずは俺の名前。」
「レオ、だ。俺が付けたのは。獅子、という意味だ。」
うん、と頷く。
「レオボルト、じゃなかった。」
「ああ、そうだ。」
「なんでだろう…。」
「可能性があるのは、直系だからかもしれない。」
「興国のレオボルトの直系になるの?」
「ああ、なるな。国を追われた王子が先祖になる。
ブランディール国が滅びた時に、王子は2人いた。
ひとりは例えヨーシャーに屈したとしても国を守る残すべきだ、と一部の民と共に国に残った。
もうひとりの王子は生き抜くために新天地を求める民と共に国を出た。こちらがブランで、国に残った王子がレブロンとなった。しかしレブロンの血筋はヨーシャによって絶えた。」
「父さんもハマの儀式は…?」
「したさ、託宣で果てたけれど。」
そうか、父は儀式には残らなかったのか。
「旅は終わりだろ、父さん。」
「ああ、レオが神子の守護者だからな。在るべき場所を見つけたら旅は終わりだ。
覚悟を決めろ。」
「…覚悟はあるよ、でも自分で選び取りたかったよ。」
「お前は選び取ったんだろ。神子を引き上げたのはお前だ。」
「ただ溺れている女人だと思ったんだ。」
「…そうか。だがそれも神意だろう。」
父は細く開いたドアから神子を見つめる。
「まだ子供だ、助けてやらなくてはならない。
戸惑いや葛藤は神子の方がお前よりも大きく深い物になるだろう。
ブランの血の結束はお前だけではなく、神子も同様に助ける。
おそらく各国の王族や教会が2人を囲い込もうとするだろう、いいか、忘れるな。
ブランを頼れ、ブランは家族としてお前と神子を護るから。」
うん、と頷いた。
「忘れるな、ひとりじゃない。」
うん、と頷いた。
父はもう一度僕の頭を叩いてから、部屋を出て行った。
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