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ハマの儀式
レオの人生
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神子の為に用意されているという部屋は神殿の普段は誰も使わない浮島の中にあり、守護者レオの部屋もそこにある。
クッションを背もたれにして床に座り込んだ。
この部屋には椅子はない。ふかふかのカーペットの上に直に座る。私は黒砂の入った器を眺めたり触ったりしているけれど、何の変化もない。
あれから色々と考えた。
まず、キュイエとかイレイエとかよくわからないものは一旦忘れる事にした。
ナモンさんからも追々でいい、礼央と一緒にいればいつか目覚めると言われたから。
出来たらそれに越した事は無いけれど、出来なかったら…。怖いけど、謝り倒すしか無いよね。
気になる事は他のこと、レオの事だった。
レオは私が目覚めてからずっと一緒にいてくれる。理由はレオが私の「守護者」だから。
もし…。レオが守護者に選ばれなかったらきっと違う人生があったはずで。
高校生だった私が学校に通い、友達や家族と過ごしていた様に。
私の人生は残念だけど変わってしまう。
そこは受け入れた。
だからってレオの人生まで変えてしまってはいけないと思ってしまう。
そして私は私の人生を諦めない。
いつか必ず帰る道を探す。もちろんそれは今じゃ無いだけ。
今やれる事をやり、やれない事は無理はしない、それだけ。
持っていた器をテーブル代わりの板の上に置いて、
「ねえレオ。もし私が下賜されなかったら、あなたはどうしていたの?」
と聞いた。
「…旅に出ていたと思うよ。放浪のブランの家だからね。」
なるべく重くならない様にサラッと聞いたら、レオもサラッと答えてくれた。
「旅?放浪のブラン?」
だらけていた身体をキリッとさせながら起き上がる。
なにそれ、なんか凄く楽しそうな気がするんだけど?
「僕の生家は放浪のブランと呼ばれている。成人したら生まれ育った場所から旅立って、自分の在るべき場所を探して、そこでやりたい事をしながら生きる。」
「もう戻らないって事?」
「うー、ちょっと違う。戻ってくるヤツもいる。それはそこがソイツの居たい場所だから。そこも自由。」
なんかいい。凄くいい!
「じゃあ、私も行きたい!」
体をレオの方に乗り出した。
「残念だけど、僕の旅は終わった。」
「えっ?ここにくる前に終わっちゃったの?」
「違うよ。ここで終わった。僕は守護者になってサキカと共に生きていく。」
そうか、わかった。
あの時のレオの少し困った顔の理由。
「えー、ダメよ。レオが選んだ訳じゃ無いじゃない。」
「僕は…選んだ。サキカを引き上げたのは僕だ。
それに国が許さない。多分神殿も。」
「関係ない!だって、私は放浪のブランに下賜されたんでしょ?そこに意味はある!絶対ある!」
キョトンとするレオを説得する。
「私がイェオリにいるべきなら、アレン王子辺りに下賜されたはず、そうでしょ?
いい?レオ。
私にとってはここは見知らぬ世界なの、知ってるところなんてどこにもないの。
この神殿も、イェオリの国も、レオの家も変わんないの!どこも初めての知らない場所なの。
レオが自分のいるべき場所を探したいのと同じで、私も自分のいるべき場所を探したいわ。うん、イェオリに行くのがいいと思えばきっとそうする。
教会に住むのが正しいと思えばそうするわ。
でも今の私は比べられないの、何にも知らないから。
素敵じゃない、放浪のブラン。
私も自分の在るべき場所を探したい!」
レオは目をパチクリとさせている。
「…だけど。」
「諦めたらそこで終わりなのよ、という事は諦めなければ終わらないの。」
ね、どこかのバスケ部の先生、そうだよね。
「行こうよ、レオ。
私は自分でこの世界を見てみたい!」
クッションを背もたれにして床に座り込んだ。
この部屋には椅子はない。ふかふかのカーペットの上に直に座る。私は黒砂の入った器を眺めたり触ったりしているけれど、何の変化もない。
あれから色々と考えた。
まず、キュイエとかイレイエとかよくわからないものは一旦忘れる事にした。
ナモンさんからも追々でいい、礼央と一緒にいればいつか目覚めると言われたから。
出来たらそれに越した事は無いけれど、出来なかったら…。怖いけど、謝り倒すしか無いよね。
気になる事は他のこと、レオの事だった。
レオは私が目覚めてからずっと一緒にいてくれる。理由はレオが私の「守護者」だから。
もし…。レオが守護者に選ばれなかったらきっと違う人生があったはずで。
高校生だった私が学校に通い、友達や家族と過ごしていた様に。
私の人生は残念だけど変わってしまう。
そこは受け入れた。
だからってレオの人生まで変えてしまってはいけないと思ってしまう。
そして私は私の人生を諦めない。
いつか必ず帰る道を探す。もちろんそれは今じゃ無いだけ。
今やれる事をやり、やれない事は無理はしない、それだけ。
持っていた器をテーブル代わりの板の上に置いて、
「ねえレオ。もし私が下賜されなかったら、あなたはどうしていたの?」
と聞いた。
「…旅に出ていたと思うよ。放浪のブランの家だからね。」
なるべく重くならない様にサラッと聞いたら、レオもサラッと答えてくれた。
「旅?放浪のブラン?」
だらけていた身体をキリッとさせながら起き上がる。
なにそれ、なんか凄く楽しそうな気がするんだけど?
「僕の生家は放浪のブランと呼ばれている。成人したら生まれ育った場所から旅立って、自分の在るべき場所を探して、そこでやりたい事をしながら生きる。」
「もう戻らないって事?」
「うー、ちょっと違う。戻ってくるヤツもいる。それはそこがソイツの居たい場所だから。そこも自由。」
なんかいい。凄くいい!
「じゃあ、私も行きたい!」
体をレオの方に乗り出した。
「残念だけど、僕の旅は終わった。」
「えっ?ここにくる前に終わっちゃったの?」
「違うよ。ここで終わった。僕は守護者になってサキカと共に生きていく。」
そうか、わかった。
あの時のレオの少し困った顔の理由。
「えー、ダメよ。レオが選んだ訳じゃ無いじゃない。」
「僕は…選んだ。サキカを引き上げたのは僕だ。
それに国が許さない。多分神殿も。」
「関係ない!だって、私は放浪のブランに下賜されたんでしょ?そこに意味はある!絶対ある!」
キョトンとするレオを説得する。
「私がイェオリにいるべきなら、アレン王子辺りに下賜されたはず、そうでしょ?
いい?レオ。
私にとってはここは見知らぬ世界なの、知ってるところなんてどこにもないの。
この神殿も、イェオリの国も、レオの家も変わんないの!どこも初めての知らない場所なの。
レオが自分のいるべき場所を探したいのと同じで、私も自分のいるべき場所を探したいわ。うん、イェオリに行くのがいいと思えばきっとそうする。
教会に住むのが正しいと思えばそうするわ。
でも今の私は比べられないの、何にも知らないから。
素敵じゃない、放浪のブラン。
私も自分の在るべき場所を探したい!」
レオは目をパチクリとさせている。
「…だけど。」
「諦めたらそこで終わりなのよ、という事は諦めなければ終わらないの。」
ね、どこかのバスケ部の先生、そうだよね。
「行こうよ、レオ。
私は自分でこの世界を見てみたい!」
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