亡国の王子に下賜された神子

枝豆

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ハマの儀式

穢れを祓う

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んで、私が何でこの世界に呼ばれたのかと言うと。

「世界の穢れを祓って秩序をもたらす。」
だそうだ。

意味不明。
「どうやって?」
キョトン顔をしているに違いない私に対して、ナモン神官長は真面目に
「神子様には神子の因子があります。」
と、言う。
ナモン神官長の言葉の意味がますますわからなくなった。

レオが苦笑する。
「アレンを呼びませんか?」
とナモン神官長に言って、
「そうしましょう。見てもらった方が早そうだ。」
とナモン神官長が呆れたように応じた。

急に呼び出されたアレンさんはイェオリ国のキラキラ王子様だった。
「神子の因子について説明して欲しい」
というレオのお願いに、あっさりといいよ、と答えてくれる。

「因子というのは親から遺伝することが多い、強く出る方が主因、弱く出る方が副因。
俺はおそらく父から主因として「神の息吹」という因子を受け継いだ。」

アレン王子はレオと私の前に水を張った器と銀色の容器に入った黒砂が置いた。

「これは禍の結晶、これを水に入れる。」
コーヒーに砂糖を入れるかのような手つきでアレンさんは水に黒砂を溶かした。

その瞬間、器の水は真っ黒になって、ブクブクと泡立ったように見えた。
「えっ、何これ。気持ち悪い…。」
吐き出した言葉にアレンさんは満足そうな笑みを浮かべた。

「禍を溶かした水に不穏なものを感じるのであれば、サキカ様は神の因子を持っている証になります。実はレオやナモン神官長には黒砂が無くなったようにしか見えていない。」

あっ、そうなの?
こんなにわかりやすいのに見えてないの?

「では次にいく。」
その黒い水にアレンさんが指を入れた。
すると指の周りから水が透明に戻っていく。アレンさんがくるくると指で水をかき混ぜるとすっかり透明に戻った。

「わかる?」
と聞かれて、うんと答えた。
「これが神の息吹という因子を持つ、キュイエ、吸収という能力になる。」

おお、わかった。
スキルだ。因子ってスキルなんだ!
「スキルって事?」
「うーん、ちょっと違う。」
「…違うの?」

生き物全てが禍を吸い込める。ただ意識して吸い込めるのが神の息吹の因子を持つ人。
吸い込んでおける量も違う。

私から…、とナモン神官長が口を挟んだ。
「神子の世界の言葉ですと、濾過だそうです。」
「あぁ、わかりました。」

自分の体をフィルターにして、汚れを濾過出来る。
因子を持たない人はそのまま取り込んでしまう、そう理解して差し支え無さそうだ。

「俺は禍を身体の内に入れて貯める、器もそんなに大きくない。いつか溢れると思うし、溢れたら死ぬ。」

えっ!?
アレン様死んじゃうの?
「じゃあ、私に説明するために、命を縮めた?」
「ううん、違う。ここから更に段階がある。」

「握ってみて。」
アレンが私に手を差し出したので、言われた通りに握った。

「何か感じる?」
「…何も。」
「さっきの黒砂をイメージして。俺の身体に溶けている黒砂を探すイメージ。」 

…わからない。

「レオ、サキカの…首触ってみて。」
うん、とレオの指が首にピタリと付けられた。

…ドクン!…ドクン!
レオに触られたとこにもうひとつ心臓があるみたいに、脈を感じる。

すると。何かがスッと身体の中を流れていく。
正座して立ち上がった時にいきなり血が巡る、そんな感じで。

するとアレン様が手を握りしめている場所からも何かが入ってくる。
入ってきた何かは身体を巡っていく。

「…何これ。」
「何か入ってきたでしょ?俺は出ていくのを感じた。」

アレンさんが私の手を離した。
入ってきた何かは身体の中をグルグルとうねって、レオが触っている首の所で消えた。

「俺の身体に溜まっていた禍がサキカの身体に吸収キュイエされた。あ、サキカは死なないから大丈夫。器も大きいハズだし。
こうやって禍を吸収出来るのが神の息吹の因子を持つ人が出来ること。

で、これを身体から取り出して黒砂の形にする結晶ドュシエが出来る人がいる。
サキカも出来るはずだけど、今はまだ無理かも。まだ器に溜まっていないからね。
でもこれが出来るのが神の息吹の人って事。」

「神の息吹と神子は違うの?」
「うん、違う。神子だけがこの禍を消し去る昇華イレイエする事が出来る。」
「消し去る?どうやって?」
「わからないよ。それが出来た人は既に逝去されているから。」

…そっか。

とりあえず指で黒砂を突いてみた。
うん、何も起きない。

「…無理そう。」
「まあ、そのうち出来るようになる。焦らなくて大丈夫。」

アレンはそう請け負ってくれたけれど、そんな事が出来る気は全くしなかった。
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