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ハマの儀式
馬車に乗っていざ
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ハマの儀式に参加する事になったのは、アレンディオ殿下とサミュエル様、と俺。
公爵子息のミラルカ様は残らなかった。
なんか散々揉めて何回もやり直しをしたみたいだけど、結局覆る事はなかったそうだ。
俺のも2回やり直しをした。
どうしても信じられなかった俺は、レオ・ブランと書いた紙を聖杯に入れさせてもらったけど結果はやっぱり変わらなかった。
どうやら俺をハマ神としては「レオボルト・ブランディール」にしたいらしい。
そこはもう諦めて受け入れるしかなくなった。
さて。
ハマの儀式に参加するものは一旦その身分を剥がされるのがしきたり。
なので、ただの新成人のひとりと扱われる。
俺はいい。問題はそこじゃない、そう、俺はね。
「レオ、ブランの事を少し教えてくれないか?
ブランの家の出の者に直に会うのは初めてだ。」
声をかけてくれたのはサミュエル様。
サミュエル・セルフェス侯爵子息。セルフェス侯爵よりはセルフェス宰相閣下の方が通りが良い、サミュエルは宰相閣下の後継子息だ。
「俺にも教えてくれよ、レオ。」
と乗っかってくるのがイェオリ国第二王子のアレンディオ殿下。
殿下達と俺は一台の馬車に乗って、ハマーン湖があるハマーン神殿に向かっている。
王子様と宰相子息、しがない男爵子息、しかも「ブラン」の家。
「あっ、あの、アレンディオ殿下。」
「アレンだ、レオ。お互い気楽にしようと頼んだはずだよ。」
気楽にというのは困る、絶対に無理だ。あっ、いや殿下は気楽にしてくれないともっと困る。
困りきって返事ができないでいると、
「アレンだ。レオ。こいつはサミー。」
と畳み掛けられる。
なんでも兄上である王太子殿下の「儀式仲間」との絆はとても強く、ずっと憧れていたから、どんな人が「儀式仲間」になっても、その縁を大切にしようと決めていたらしく…。
…知るか!
って言えないよな。
俺だけじゃない、2人はやり直しの儀式を間近に見た。僕の名前が聖水の中で書き換えられる神秘を目の当たりにした。
そしてこの儀式に臨む気持ちを新たに引き締め直したばかりだ。
「ハマの儀式を親達があんなに重要視する意味がようやく理解できた。」
と口を揃えて言う。
その気持ちはもちろん俺も同じ。
この先ハマに選び取られた者として、3人には特別な期待が向けられる…と思う、と。
だから、2人は俺にも愛称呼びを強要してくる。
イヤ、無理ですって!
初めはレミーと呼ばれそうになったのを、レオで納めてもらった、俺の感覚的には呼び捨てだから。
「ブランの事をと言われましても…。」
生まれた家には縛られず、18歳になれば旅に出て自分が生涯を掛けられる場所や役目をを探す、旅の途中の若者をブランの家は血の濃さに関わらず見守り助ける、それだけだ。
「教会にもブランがいた、やはり知り合いか?」
「そうです。イェオリの貴族には父しかブランはいませんでしたので。」
デュアル神官は自分の在るところを教会に委ねた。イェオリの様々な地域の中で首都の教会に派遣されたのが最初の縁。
「数年毎にイェオリの教会を巡っていまして、たまたまあの場に居合わせました。」
不思議と言われたら不思議な縁。だけど神官の体系的には半々の確率でもある。
ただあの場に知り合いがいたのは俺には心強かった。
馬を休ませている間に身体を解そうと馬車から降りて休んでいた時のこと。
サミュエル様がチラッと目配せをして、顎で合図を送ってきた。
アレンディオ殿下は木の幹に身体を預けて眠っている。
(…何か?)
サミュエル様の近くに寄ると、サミュエル様は少し離れた場所に僕を誘う。
「…諦めてアレンを愛称で呼んでやれよ。」
とサミュエル様は言う。
「…無理です。」
僕は下級貴族で、父はしがない外務補佐官だ。放浪のブランである事を蔑みはしなくても下に見る輩も多いこと…。
「無理は承知で頼んでいる。」
サミュエル様の瞳は真剣だった。
「…アレンは不安なんだ。」
「儀式にですか?」
ただハマーン湖にトプンっと飛び込むだけなのに?
「殿下は泳げないんですか?」
「…そう言う事じゃない。」
サミュエル様が呆れた声をあげた。
公爵子息のミラルカ様は残らなかった。
なんか散々揉めて何回もやり直しをしたみたいだけど、結局覆る事はなかったそうだ。
俺のも2回やり直しをした。
どうしても信じられなかった俺は、レオ・ブランと書いた紙を聖杯に入れさせてもらったけど結果はやっぱり変わらなかった。
どうやら俺をハマ神としては「レオボルト・ブランディール」にしたいらしい。
そこはもう諦めて受け入れるしかなくなった。
さて。
ハマの儀式に参加するものは一旦その身分を剥がされるのがしきたり。
なので、ただの新成人のひとりと扱われる。
俺はいい。問題はそこじゃない、そう、俺はね。
「レオ、ブランの事を少し教えてくれないか?
ブランの家の出の者に直に会うのは初めてだ。」
声をかけてくれたのはサミュエル様。
サミュエル・セルフェス侯爵子息。セルフェス侯爵よりはセルフェス宰相閣下の方が通りが良い、サミュエルは宰相閣下の後継子息だ。
「俺にも教えてくれよ、レオ。」
と乗っかってくるのがイェオリ国第二王子のアレンディオ殿下。
殿下達と俺は一台の馬車に乗って、ハマーン湖があるハマーン神殿に向かっている。
王子様と宰相子息、しがない男爵子息、しかも「ブラン」の家。
「あっ、あの、アレンディオ殿下。」
「アレンだ、レオ。お互い気楽にしようと頼んだはずだよ。」
気楽にというのは困る、絶対に無理だ。あっ、いや殿下は気楽にしてくれないともっと困る。
困りきって返事ができないでいると、
「アレンだ。レオ。こいつはサミー。」
と畳み掛けられる。
なんでも兄上である王太子殿下の「儀式仲間」との絆はとても強く、ずっと憧れていたから、どんな人が「儀式仲間」になっても、その縁を大切にしようと決めていたらしく…。
…知るか!
って言えないよな。
俺だけじゃない、2人はやり直しの儀式を間近に見た。僕の名前が聖水の中で書き換えられる神秘を目の当たりにした。
そしてこの儀式に臨む気持ちを新たに引き締め直したばかりだ。
「ハマの儀式を親達があんなに重要視する意味がようやく理解できた。」
と口を揃えて言う。
その気持ちはもちろん俺も同じ。
この先ハマに選び取られた者として、3人には特別な期待が向けられる…と思う、と。
だから、2人は俺にも愛称呼びを強要してくる。
イヤ、無理ですって!
初めはレミーと呼ばれそうになったのを、レオで納めてもらった、俺の感覚的には呼び捨てだから。
「ブランの事をと言われましても…。」
生まれた家には縛られず、18歳になれば旅に出て自分が生涯を掛けられる場所や役目をを探す、旅の途中の若者をブランの家は血の濃さに関わらず見守り助ける、それだけだ。
「教会にもブランがいた、やはり知り合いか?」
「そうです。イェオリの貴族には父しかブランはいませんでしたので。」
デュアル神官は自分の在るところを教会に委ねた。イェオリの様々な地域の中で首都の教会に派遣されたのが最初の縁。
「数年毎にイェオリの教会を巡っていまして、たまたまあの場に居合わせました。」
不思議と言われたら不思議な縁。だけど神官の体系的には半々の確率でもある。
ただあの場に知り合いがいたのは俺には心強かった。
馬を休ませている間に身体を解そうと馬車から降りて休んでいた時のこと。
サミュエル様がチラッと目配せをして、顎で合図を送ってきた。
アレンディオ殿下は木の幹に身体を預けて眠っている。
(…何か?)
サミュエル様の近くに寄ると、サミュエル様は少し離れた場所に僕を誘う。
「…諦めてアレンを愛称で呼んでやれよ。」
とサミュエル様は言う。
「…無理です。」
僕は下級貴族で、父はしがない外務補佐官だ。放浪のブランである事を蔑みはしなくても下に見る輩も多いこと…。
「無理は承知で頼んでいる。」
サミュエル様の瞳は真剣だった。
「…アレンは不安なんだ。」
「儀式にですか?」
ただハマーン湖にトプンっと飛び込むだけなのに?
「殿下は泳げないんですか?」
「…そう言う事じゃない。」
サミュエル様が呆れた声をあげた。
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