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バレンタインデイ
好きだった人のバレンタイン
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非モテ陰キャの俺だけど、バレンタインは0じゃない。
母ちゃんと北斗の母ちゃんのおかみさんからの2個は確定してる。
「ハイ、仁志。」
「あ、ありがとう。」
絵里がくれたのは「友チョコ」のひとつ。
絵里の片手にはまだ同じものがたくさん詰まった紙袋がある。
でも十分。
クラスメイトからチョコを貰ったのは人生で初。
菜々子も花音も、翠ちゃんも。
あの優でさえ手作りチョコを配り歩いてる。
すげーな俺。
多分一生分のチョコを貰った。
「仁志ー!これ、これも仁志にあげる!」
昼休みに不貞腐れた絵里が持ってきたのは明らかにさっきのとは違うヤツ。
どう見ても本命の、富田へのチョコ。
「富田のだろう、要らねーよ。」
「富田にも要らないって言われた。
チョコあんまり好きじゃないって言うの!」
ったくあのバカ!!
何してくれやがる。
「ちゃんと渡せって。」
どうせあれだろう?
「欲しかったらあげてもいい。」
みたいな渡し方したんだろう?
んで、あの冨田のことだから、
「別に欲しくはないけど、くれるなら貰ってやるし…。」
みたいに返したんだろう。
ったく面倒くせーなぁー、おい!
そんな話をしていたら、悠太か北斗辺りに諭されたんだろう、富田がむすっとした顔でこっちに歩いてくるのが見えた。
「ちょっと貸して。」
俺は絵里の手からチョコの入った袋を取り上げた。
それを見た富田があわてて走ってこっちにやって来る。
…ったく素直じゃねーなぁ。
「返せ!」
「なんで?俺がもう貰った。」
「いいから、返せ!」
手を伸ばして取り返そうとするから、身体で抱え込む。
もちろん袋を潰したりなんかしないように!
富田とのチョコ争奪合戦の火蓋が切って落された。
「お前要らないんだろう?良いじゃん俺が貰う。」
「そんな事言ってない!俺のだ!良いから返せ!」
チョコを抱えて走り出す。それを冨田が追いかけて来る。
だからそんなお前の鬼の形相見たことねーよ。
ゲームセットは絵里からきちんと告げられる。
「仁志、返して。」
膨れっ面だった絵里は少し笑ってて、真っ赤になって手を出してくる。
…ったく面倒くせえなぁ。
チョコくらいちゃんと渡してちゃんと受け取りやがれ!
「ほら。じゃあな。」
絵里に袋を返して立ち去る…訳ないじゃん。
富田を追いかけて北斗と悠太が来たのが見えてたんだから。
壁の隙間に隠れて、トーテムボールのように片方の顔だけ出して。
「写真は…。」
「それは流石に…不味くない?」
カシャ
絵里が俯きながら袋を渡して、それを富田が大切そうに受け取った瞬間、シャッター音がした。
下を見るとしっかり北斗がスマホを翳してる。
「消せ!今すぐ消せ!」
今度は北斗とスマホの取り合いゲームが始まった。
母ちゃんと北斗の母ちゃんのおかみさんからの2個は確定してる。
「ハイ、仁志。」
「あ、ありがとう。」
絵里がくれたのは「友チョコ」のひとつ。
絵里の片手にはまだ同じものがたくさん詰まった紙袋がある。
でも十分。
クラスメイトからチョコを貰ったのは人生で初。
菜々子も花音も、翠ちゃんも。
あの優でさえ手作りチョコを配り歩いてる。
すげーな俺。
多分一生分のチョコを貰った。
「仁志ー!これ、これも仁志にあげる!」
昼休みに不貞腐れた絵里が持ってきたのは明らかにさっきのとは違うヤツ。
どう見ても本命の、富田へのチョコ。
「富田のだろう、要らねーよ。」
「富田にも要らないって言われた。
チョコあんまり好きじゃないって言うの!」
ったくあのバカ!!
何してくれやがる。
「ちゃんと渡せって。」
どうせあれだろう?
「欲しかったらあげてもいい。」
みたいな渡し方したんだろう?
んで、あの冨田のことだから、
「別に欲しくはないけど、くれるなら貰ってやるし…。」
みたいに返したんだろう。
ったく面倒くせーなぁー、おい!
そんな話をしていたら、悠太か北斗辺りに諭されたんだろう、富田がむすっとした顔でこっちに歩いてくるのが見えた。
「ちょっと貸して。」
俺は絵里の手からチョコの入った袋を取り上げた。
それを見た富田があわてて走ってこっちにやって来る。
…ったく素直じゃねーなぁ。
「返せ!」
「なんで?俺がもう貰った。」
「いいから、返せ!」
手を伸ばして取り返そうとするから、身体で抱え込む。
もちろん袋を潰したりなんかしないように!
富田とのチョコ争奪合戦の火蓋が切って落された。
「お前要らないんだろう?良いじゃん俺が貰う。」
「そんな事言ってない!俺のだ!良いから返せ!」
チョコを抱えて走り出す。それを冨田が追いかけて来る。
だからそんなお前の鬼の形相見たことねーよ。
ゲームセットは絵里からきちんと告げられる。
「仁志、返して。」
膨れっ面だった絵里は少し笑ってて、真っ赤になって手を出してくる。
…ったく面倒くせえなぁ。
チョコくらいちゃんと渡してちゃんと受け取りやがれ!
「ほら。じゃあな。」
絵里に袋を返して立ち去る…訳ないじゃん。
富田を追いかけて北斗と悠太が来たのが見えてたんだから。
壁の隙間に隠れて、トーテムボールのように片方の顔だけ出して。
「写真は…。」
「それは流石に…不味くない?」
カシャ
絵里が俯きながら袋を渡して、それを富田が大切そうに受け取った瞬間、シャッター音がした。
下を見るとしっかり北斗がスマホを翳してる。
「消せ!今すぐ消せ!」
今度は北斗とスマホの取り合いゲームが始まった。
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