若松2D協奏曲

枝豆

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芸術鑑賞教室 菜々子

乗り換えナビ

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「明日はあんまり大勢で固まってくるなよ!一般客に迷惑だからな!」

生徒だけで約600人。大体似たような時間に一斉に移動するから、なるべくバラけて、4~5人のグループで電車に乗るように、という注意が入った。

座席は5人で座るゲド、往復は別にする、というか出来なかった。
さすがに北斗くんと和津くんが黙ってなかった。


「…花音ちゃん、どうやって行く?」
「乗り換えナビに聞く。」
乗り換えナビ?

「富田くん、どうやって行く?」
「…まだ決めてない。」

電車好きな富田くんはどの路線で行くかを迷っていた。
私達の声掛けにワラワラと周りの人が集まって来た。

「乗り換えが少ないのは、終点まで乗ってJR。安いのもコレ。だけど駅から劇場まで少し歩く。
一番早いのが相互乗り入れしている地下鉄で行って、ここの駅でこの駅まで歩いてまた地下鉄に乗り換え。
少し高くなるけど、劇場に一番近い駅はこの路線だから、地下鉄であの駅まで行って違う地下鉄に乗り換える。」

さすが乗り換えナビ富田くん。
アプリも見ないでサクッと答えを教えてくれる。
…だけど。

「結局どれ?お前はどれ?」
と聞いた皇子くんに、
「…俺は。」
と少し迷いを見せている。

「台町駅から私鉄に乗り換えて違うJRに乗り換え…たいんだけど。」
「なんか遠回りしてない?」
「うん、この路線だと新幹線と並走するから…。」
「お前、新幹線見るために遠回りするの?」
「したかったんだけど…。」
「絵里に怒られた?」

うん、と富田くんが項垂れた。

「嫌だっていうから、じゃあ現地集合で、って言ったらもっと怒られた。
俺、もうどうしたらいいかわからない。
悠太は付き合ってくれるっていうのに、仁志はゲラゲラ笑うだけ。」

なんか不憫だな、絵里ちゃん…。
いやそれはさすがにどんな彼女でも怒ると思う。

「富田、今回は諦めろ。大人しく早いのか安いので行け。」
男の子達の説得に、
「…うん。そうする。じゃあ、相互乗り入れしてる地下鉄。」
「何時?」
「さくら駅9時6分の急行。」
「急行?相互乗り入れしてるのは快速だろ?」
「台町から始発が出る。」
「なんか面倒ー。とりあえず6分のに乗ればいいんだな。」
「…3両目。」
「なんで?」
「乗り換え駅でエスカレーターの前になる。乗り換え時間が3分しかないから、急がないと間に合わない。」

3分で乗り換えられないと、地下鉄で更に11分待つ事になるらしい。
うん、絵里ちゃんの苦労を少し、いやかなり感じる。

「花音と菜々子もそうして。」
と言われてうんと答えた。
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