若松2D協奏曲

枝豆

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新年

延長戦前半

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帰ろうとした俺を引き止めたのは絵里だった。

「…ちゃんと話す。同じ後悔は…もうしない。」


絵里が富田に気付いたのは、なんと夏休み。学校に、補習で来ていた絵里と、部活で来ていた富田と、中庭ですれ違っていた。

「まだ日本に帰ってきたばかりで、日本ぽい物に飢えていたし、モデルのレッスンも再開して、袴姿の立ち姿に惹かれた。」

「じゃあ、悠太でも?」
と聞くとそうだったかもしれない、と正直に認めた。

曖昧でなんとなくの切っ掛け。
クラスに入って、席が近くで。
磯山学園に行った時、富田があの学園に向ける想いを知って、切っ掛けはちゃんとした好きになった。

「でも。富田だけじゃ足りなかった。」

絵里が求める学校生活は、沢山の友達に囲まれて、笑って、楽しんで。
勉強もするけど、馬鹿なことも沢山やりたくて。

「それを叶えてくれてたのが仁志だった。」
私がやろうと言えば、応えてくれてた仁志。堅物過ぎる富田と素直になれない私をマイルドにして笑わせてくれてた仁志。
仁志が富田好きな人を巻き込んで、学校生活を豊かにしてくれていた。

「このままずっと3人でいられるなら、私はそれでもいいとも思ってた。」

だけど、アイツが現れて、心地よい3人の関係は見事に壊れた。

「仁志が離れて。でもそれは仕方がないと思ってて。」 
「そうだな、新田は去る者は追わず、だもんな。」
って皇子が言う。

「別に…去ったつもりはない…。」
変な遮蔽シールド張って、俺を締め出したのはお前達だ、って言いたかったけど、言えなかった。

それを破る努力をしなかったのは俺、だから。
2人が付き合い始めたらもう俺の居られる場所なんてないと思ってた。

「充分だよ、絵里。俺はちゃんと選ばれてたんだろう?」
そう、俺は選ばれてた。
ただ恋人じゃなくて、友達として。
富田すきな人ともだち
絵里の横に富田の横にちゃんと俺の居場所はあった。

「うん。」

「…わかった。俺も悪かった。」
「…ご、こめん。仁志は悪くない…悪いのは私。」
「絵里じゃない、悪いというなら富田だ!」

富田に向かって話し掛ける。

「おい!サムライ!ダンマリのままで終わりにできると思うなよ!」

お前が鈍いから、ちゃんと相手を見ないから、こんなに拗れたんだから。

「責任取りやがれ!ヘタレ日本男子!」

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