若松2D協奏曲

枝豆

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新年

いい加減にしろ 悠太

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カルタ会が終わって、富田のお母さんが作ってくれたお汁粉を食べている時。

俺の中で何かがキレた。
富田と新田はどう見ても付き合ってるようにしか見えてなかったのに、最近どこか余所余所しい。
それで心配している和津と翠ちゃんが2人の側で見守ってて…。
入って来れない仁志と優ちゃんが、多分だけど拗ねてる。

いつも一緒にいた、コアになるそれぞれのグループがまるで水と油のように、混ざっていそうで混ざっていない、歪な固まりと化している。

「なぁ、お前らいい加減吐け!」

「何を?」という富田。
しらばっくれんじゃねぇ、11月から12月にかけて、コイツらはなんかコソコソしてる。

「富田、嫌がらせ終わったんだろう?」
一時期富田の自転車や靴箱にイタズラというにはあまりに可愛くない嫌がらせが続いた。

…そうだ、あの頃からだ。

富田が絵里と所構わずに手を繋いでて、仁志が距離を置いて。
和津が北斗や葛西と距離を開けて、流されるように翠ちゃんと優ちゃんの距離も開いた。

「クラス、おかしくなってんだそ!わかってるだろうがっ!」

今日だって…。
葛西は仕方がないとしても、きっと他のみんなはこっちに来てた。仁志と優があっちに行ったから、花音も菜々子もあっちに行くしか無くなった。

こっちに来れる勇気はみんな出せない。
あえて俺がこっちに来たのは、今日は空気を読まないという決意を立てたからだ!

「全部吐け!吐かなかったら…俺剣道辞める!」

ほんとうに辞める気なんてサラサラないけど!
富田にはきっと通じる。

日本男子富田宗!
「じゃあ辞めれば?」
なんてコイツは死んだって言わない!

別に俺は構わない。
俺とみんなの距離が変わった訳じゃない。
富田とだって仁志とだって、葛西や北斗とだって、俺が揉めた訳じゃない。

だけど。
なんか余所余所しいコイツらの中にいるのはなんかムズムズする。

だったら1人のほうが楽。

俺は構わない。
グループの絆が断ち切られようとも構わない。
でも、きっと構うのはコイツらとアイツら。
ったく面倒かけさせてんじゃねぇ!

じっと4人を見つめた。
きっと核になるヤツがいる。
そいつが口を割れば、みんなスルッと喋り出す。

富田…には目力では勝てないか。
和津…コイツじゃねえ。コイツが原因なら富田には相談しない。するならきっと葛西か北斗。
同じ理由で翠ちゃんじゃない。
すると…残るのは。

「新田。教えろ。お前だってみんながギクシャクするのは嫌だろう。」
「悠太、無理強いするな。」
当たった、新田だ。
和津、庇ってるようで庇ってねぇ。
無理強いしてると思われた時点で、確定だ。

「新田、頼む。みんなを信じてくれ。」
下を向いて俯いている新田。
ごめんな、女の子を追い込むのは心が痛い。

「絵里ちゃん…。」
翠ちゃんが新田の腕を摩り始める。

「翠ちゃん、甘やかしちゃダメだと、俺は思う。」
「…甘やかしじゃない…よ。」

マズイ。
翠ちゃんを追い込んじゃう!
翠ちゃんを追い込むと、ホラ和津がキレ始めてる。

「悠太!もう止めろ!」
「和津!止めるなよ!」

「何を4人でコソコソやってんだよ!4人じゃ答えが出ないから、みんなおかしくなってるって事に気付け!

なあ、お前らさぁ、ちゃんと話しておけば良かった、ちゃんと聞いておけば良かった、って後から後悔しても知らねーぞ!

俺は嫌だからな。知らないで友達傷付けるのも、知らないうちに友達が離れて行くのも!
バラバラになるのはそうなる理由をちゃんと知って、納得してから!」

何が新田の心を溶かしたのかはわからない。
ただ、新田の視線がバッと上を向いた。

「…わかった。話す。」
「新田!」
「もういい、こんなの面倒くさい!
誤解で嫌われたくない。そんなのはもうたくさん!」

…俺、この時やっと踏んじゃいけなかった地雷を踏んだって事に気づいた。
けどもう引き返せない。



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