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アンハッピーハロウィン 富田
鳩
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次の日の帰り、自転車がパンクしてた。よく見ると空気弁のパーツがごっそり無くなってた。
「ちっ、面倒だな。」
まっ、いっか。
走って帰ろ、鍛錬、鍛錬。
直してもきっとまた同じことになると思った。
「…富田。図書室行こう。」
お弁当を食べ終わると新田がみんなから離れて俺を誘いに来る。
そんな時、仁志が何か言いたげに俺や新田を見つめる。
…ごめん。今だけ。
必ず返すから。
もう少しだけ、黙って見ててくれ。
「うん、行こう。…仁志は?」
「俺は…いいや。」
「そう。」
じゃあ、と弁当箱をカバンに突っ込んで、教室を出る。
どちらともなく新田と手を繋いで廊下を歩く。
「…富田。」
「何?」
「…仁志…。」
「うん、ごめん。仁志は巻き込まない方がいいと思う。」
「…うん。だけど…。」
「大丈夫、終わったらきっと元通りになる。」
ギュッと新田と繋いでいる手に力を込めた。
「…うん。本当にごめん。」
「もう気にするな。」
「…うん。」
図書室に行くと大抵和津と翠が後からやってくる。
大した話はしてないから、仁志や若瀬が来てもなんの問題もないんだけど、あの2人は来たり来なかったりしてたのが…段々と来なくなった。
それで良い。
今俺の周りにはあんまりいない方が、きっと良い。
朝。
儀式のように使ってない上履きを放り込んでおいた昇降口の靴箱を開けた。
「うわっ!」
流石にこれには驚いちまった。
くそっ!不覚にも程がある。
そこに入っていたのは鳩の死体だった。
「…どうした?」
「なんでもない。あっ、先行ってて。俺ちょっと用が出来た。」
なんとか新田を誤魔化して、たまたま通りかがった菜々子を捕まえて、先に教室へ向かわせた。
…アイツ許せねー。
鳩、そんなに都合よく死なねーだろ?
周りに人がいないことを確認している、部活用の手ぬぐいをカバンから出して、丁寧に鳥を包んだ。
…ただ少し危険な兆候だよな、これ。
アイツの怒りが他に向かい始めた。
さすがにこれを教室には持っていけないから、職員室に寄る。
「原田ぁ、ちょっと相談。これ、どうしよう。」
職員室の原田の席に向かいながら、手ぬぐいの包みを開く。
「わっ!」
「キャッ!」
通りすがりの先生達が悲鳴を上げた。
「お前、よく平然と持てるな。」
「そうですか?普通ですよ。」
5代も続いてる剣道道場の息子を舐めんなよ。
うちの庭には多分だけどタヌキが住んでる。
これどうした?と聞かれて、靴箱に入れられてた、と答えた。
「靴箱?」
「ああ。」
「他には?なんかやられてない?」
「靴の中に画びょう、ああ、あと、自転車パンクさせられてた。」
原田の顔が曇る。
困った…というよりは、またか…かな?
「心当たりは?」
「…ある。」
ない!って言いたいけど、嘘はダメだ。
俺にまだ悪意が向いている間になんとかしないとならないからな。
…潮時って事。
ちらりと原田は時計を見て、
「放課後、面談室。」
「…部活が…。」
「じゃあ、今。」
「授業がある。」
「俺はない。それに気にするのか?お前が?」
「…気にする。」
新田がどう過ごしているか…だけど。
「ちっ、面倒だな。」
まっ、いっか。
走って帰ろ、鍛錬、鍛錬。
直してもきっとまた同じことになると思った。
「…富田。図書室行こう。」
お弁当を食べ終わると新田がみんなから離れて俺を誘いに来る。
そんな時、仁志が何か言いたげに俺や新田を見つめる。
…ごめん。今だけ。
必ず返すから。
もう少しだけ、黙って見ててくれ。
「うん、行こう。…仁志は?」
「俺は…いいや。」
「そう。」
じゃあ、と弁当箱をカバンに突っ込んで、教室を出る。
どちらともなく新田と手を繋いで廊下を歩く。
「…富田。」
「何?」
「…仁志…。」
「うん、ごめん。仁志は巻き込まない方がいいと思う。」
「…うん。だけど…。」
「大丈夫、終わったらきっと元通りになる。」
ギュッと新田と繋いでいる手に力を込めた。
「…うん。本当にごめん。」
「もう気にするな。」
「…うん。」
図書室に行くと大抵和津と翠が後からやってくる。
大した話はしてないから、仁志や若瀬が来てもなんの問題もないんだけど、あの2人は来たり来なかったりしてたのが…段々と来なくなった。
それで良い。
今俺の周りにはあんまりいない方が、きっと良い。
朝。
儀式のように使ってない上履きを放り込んでおいた昇降口の靴箱を開けた。
「うわっ!」
流石にこれには驚いちまった。
くそっ!不覚にも程がある。
そこに入っていたのは鳩の死体だった。
「…どうした?」
「なんでもない。あっ、先行ってて。俺ちょっと用が出来た。」
なんとか新田を誤魔化して、たまたま通りかがった菜々子を捕まえて、先に教室へ向かわせた。
…アイツ許せねー。
鳩、そんなに都合よく死なねーだろ?
周りに人がいないことを確認している、部活用の手ぬぐいをカバンから出して、丁寧に鳥を包んだ。
…ただ少し危険な兆候だよな、これ。
アイツの怒りが他に向かい始めた。
さすがにこれを教室には持っていけないから、職員室に寄る。
「原田ぁ、ちょっと相談。これ、どうしよう。」
職員室の原田の席に向かいながら、手ぬぐいの包みを開く。
「わっ!」
「キャッ!」
通りすがりの先生達が悲鳴を上げた。
「お前、よく平然と持てるな。」
「そうですか?普通ですよ。」
5代も続いてる剣道道場の息子を舐めんなよ。
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これどうした?と聞かれて、靴箱に入れられてた、と答えた。
「靴箱?」
「ああ。」
「他には?なんかやられてない?」
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「心当たりは?」
「…ある。」
ない!って言いたいけど、嘘はダメだ。
俺にまだ悪意が向いている間になんとかしないとならないからな。
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「放課後、面談室。」
「…部活が…。」
「じゃあ、今。」
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「俺はない。それに気にするのか?お前が?」
「…気にする。」
新田がどう過ごしているか…だけど。
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