153 / 242
happy birthday
藍さん
しおりを挟む
翠達家族だけじゃなくて、お父さんのお友達や演奏家仲間達による演奏がひと段落して、パーティーはご歓談タイムへと突入した。
翠は「来てくれた人に挨拶して来るね。」と後から来たお父さんの知り合いの所へ行った。
翠のお父さんも別人のようににこやかに来た人一人ひとりに挨拶をしている。
「藍さん!」
とクミが誰かを手招きする。
手招きに応じてやってきたのは、さっきドラムを叩いていた翠のお兄さんだった。
クミ達とは知り合いらしく、仲良さげに喋って、クミがお兄さんを俺の前に連れてきた。
「コイツです!」
…コイツ?クミ、何をしてくれるんだ!?
お兄さんは上から下まで俺をひと通り見回すと、
「お前が疾風くん?」
と聞いてくる。
「…はい。そうです。」
そうです…けど?それが何か?
言えないけど…。俺、かなり弱気。
「兄の藍です。」
どうも、とか簡単な挨拶をした後、藍さんは俺の横、さっきまで翠が座っていた椅子に座った。
「なぁ、無視されたんだって。」
「うっ!」
痛いところ突かれた。もう知ってるんだ。
「…俺、何かしちゃったんでしょうか。」
「いや、どちらかといえば…何にもしてない。してないから、かな。」
あっ、そう言えば。
ちゃんと挨拶してなかったな。
「すみません、ちゃんと挨拶すべきでした。」
「うん?ああ、無理だろ。翠が連れて来ないんだから。」
藍さんが教えてくれた。
「子離れ出来てないのは親父の方。変な事に拘ってるのも。
君に、と言うよりは翠に対して拗ねているんだ。」
…翠に?イヤ翠は悪くないだろう?
「翠がちゃんと紹介すべきなんだよ、堂々と彼です、って。」
彼…。その言葉になんだかテレる。頬が熱くなりそうだ。
「…照れんなよ。そんな時期とっくに過ぎてるんだろう?何ヶ月だっけ?5月からだから…」
6、7と藍さんは指を折る。
「もう半年か。いい加減親父も拗ねる。」
あー、早いな。もう半年経ったのか。
「今日挨拶させて貰っても?」
「うん、その方がいい。翠にも言っとく。」
当の翠は戻ってきて向こうで優達と話してる。
「ああ見えてツンなんだよな。」
…翠が?ツンっ?ツンデレのツン…だよな。
「翠が?」
「うん、ああ、家族限定。今だって俺がいるからここには戻らない。」
藍さんは色々な過去話を教えてくれた。
過剰なまでに溺愛し過ぎた結果、愛娘から距離を置かれてしまった可哀想な父親の話。父の言うがままに妹に接して、結果嫌われた兄の話を。
「なんか…同情しそう。」
横で聞いていた北斗が呟く。
「親父は学校行事は全部行ってる。体育祭も文化祭も。だから君と体育祭でハグした場面も見てる。」
あぁ、ナギさんも前に言ってたな。文化祭も来てたのか…。
「でも、絶対来るな!と言われているから遠くから見るだけ。」
チラッとでも顔を見せてくれてたら、もっと簡単に紹介してもらえて、軽い挨拶で済んだのかなぁ。
「俺、今行ってくる!」
椅子から立ち上がった。
お父さんは…知り合いかな?前の隅で立ち話をしながらお酒を呑んでいた。
「おっ、男前!頑張れよ。」
背中に藍さんの声援が飛んできた。
翠は「来てくれた人に挨拶して来るね。」と後から来たお父さんの知り合いの所へ行った。
翠のお父さんも別人のようににこやかに来た人一人ひとりに挨拶をしている。
「藍さん!」
とクミが誰かを手招きする。
手招きに応じてやってきたのは、さっきドラムを叩いていた翠のお兄さんだった。
クミ達とは知り合いらしく、仲良さげに喋って、クミがお兄さんを俺の前に連れてきた。
「コイツです!」
…コイツ?クミ、何をしてくれるんだ!?
お兄さんは上から下まで俺をひと通り見回すと、
「お前が疾風くん?」
と聞いてくる。
「…はい。そうです。」
そうです…けど?それが何か?
言えないけど…。俺、かなり弱気。
「兄の藍です。」
どうも、とか簡単な挨拶をした後、藍さんは俺の横、さっきまで翠が座っていた椅子に座った。
「なぁ、無視されたんだって。」
「うっ!」
痛いところ突かれた。もう知ってるんだ。
「…俺、何かしちゃったんでしょうか。」
「いや、どちらかといえば…何にもしてない。してないから、かな。」
あっ、そう言えば。
ちゃんと挨拶してなかったな。
「すみません、ちゃんと挨拶すべきでした。」
「うん?ああ、無理だろ。翠が連れて来ないんだから。」
藍さんが教えてくれた。
「子離れ出来てないのは親父の方。変な事に拘ってるのも。
君に、と言うよりは翠に対して拗ねているんだ。」
…翠に?イヤ翠は悪くないだろう?
「翠がちゃんと紹介すべきなんだよ、堂々と彼です、って。」
彼…。その言葉になんだかテレる。頬が熱くなりそうだ。
「…照れんなよ。そんな時期とっくに過ぎてるんだろう?何ヶ月だっけ?5月からだから…」
6、7と藍さんは指を折る。
「もう半年か。いい加減親父も拗ねる。」
あー、早いな。もう半年経ったのか。
「今日挨拶させて貰っても?」
「うん、その方がいい。翠にも言っとく。」
当の翠は戻ってきて向こうで優達と話してる。
「ああ見えてツンなんだよな。」
…翠が?ツンっ?ツンデレのツン…だよな。
「翠が?」
「うん、ああ、家族限定。今だって俺がいるからここには戻らない。」
藍さんは色々な過去話を教えてくれた。
過剰なまでに溺愛し過ぎた結果、愛娘から距離を置かれてしまった可哀想な父親の話。父の言うがままに妹に接して、結果嫌われた兄の話を。
「なんか…同情しそう。」
横で聞いていた北斗が呟く。
「親父は学校行事は全部行ってる。体育祭も文化祭も。だから君と体育祭でハグした場面も見てる。」
あぁ、ナギさんも前に言ってたな。文化祭も来てたのか…。
「でも、絶対来るな!と言われているから遠くから見るだけ。」
チラッとでも顔を見せてくれてたら、もっと簡単に紹介してもらえて、軽い挨拶で済んだのかなぁ。
「俺、今行ってくる!」
椅子から立ち上がった。
お父さんは…知り合いかな?前の隅で立ち話をしながらお酒を呑んでいた。
「おっ、男前!頑張れよ。」
背中に藍さんの声援が飛んできた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
キスの練習相手は幼馴染で好きな人【連載版】
猫都299
青春
沼田海里(17)は幼馴染でクラスメイトの一井柚佳に恋心を抱いていた。しかしある時、彼女は同じクラスの桜場篤の事が好きなのだと知る。桜場篤は学年一モテる文武両道で性格もいいイケメンだ。告白する予定だと言う柚佳に焦り、失言を重ねる海里。納得できないながらも彼女を応援しようと決めた。しかし自信のなさそうな柚佳に色々と間違ったアドバイスをしてしまう。己の経験のなさも棚に上げて。
「キス、練習すりゃいいだろ? 篤をイチコロにするやつ」
秘密や嘘で隠されたそれぞれの思惑。ずっと好きだった幼馴染に翻弄されながらも、その本心に近付いていく。
※短編で投稿していたものの連載版です。
※不定期更新予定。
※小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+(2024.2.27~)にも投稿しています。
※成人向け小説サイトで連載している別口ドロドロ小説の土台になっている元の小説でもあります。そちらから読まれた読者様には既に色々ネタバレしています。なので、もしどちらから読もうか迷っている読者様がいらっしゃいましたら先に本小説をお読みいただけますと幸いです。(追記2023.10.8)
君に出会って、おれの「冷たさ」で誰かを笑顔にできると知った
ふくろう
青春
おれは人から「冷たい」「ロボットのようだ」と言われる。
子供には泣かれるし、犬には無駄に吠えられる。
当然、友達も彼女もいない。
一人ぼっちの閉ざされた暗い世界にいた。
でも、そんなおれが、今、ステージの上で脚光を浴びている。
君に出会えて、運命が変わったんだ。
家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!
雪那 由多
ライト文芸
恋人に振られて独立を決心!
尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!
庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。
さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!
そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!
古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。
見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!
見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート!
****************************************************************
第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました!
沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました!
****************************************************************
俺の高校生活がラブコメ的な状況になっている件
ながしょー
青春
高校入学を前に両親は長期海外出張。
一人暮らしになるかと思いきや、出発当日の朝、父からとんでもないことを言われた。
それは……
同い年の子と同居?!しかも女の子!
ただえさえ、俺は中学の頃はぼっちで人と話す事も苦手なのだが。
とにかく、同居することになった子はとてつもなく美少女だった。
これから俺はどうなる?この先の生活は?ラブコメ的な展開とかあるのか?!
「俺の家には学校一の美少女がいる!」の改稿版です。
主人公の名前やもしかしたら今後いろんなところが変わってくるかもしれません。
話もだいぶ変わると思います。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
百合の一幕 涼香と涼音の緩い日常
坂餅
青春
毎日更新
一話一話が短いのでサクッと読める作品です。
水原涼香(みずはらりょうか)
黒髪ロングに左目尻ほくろのスレンダーなクールビューティー。下級生を中心に、クールで美人な先輩という認識を持たれている。同級生達からは問題児扱い。涼音の可愛さは全人類が知るべきことだと思っている。
檜山涼音(ひやますずね)
茶色に染められた長い髪をおさげにしており、クリっとした目はとても可愛らしい。その愛らしい見た目は、この学校で可愛い子は? と言えばすぐ名前が上がる程の可愛さ。涼香がいればそれでいいと思っている節がある。
柏木菜々美(かしわぎななみ)
肩口まで伸びてた赤毛の少し釣り目な女子生徒。ここねが世界で一可愛い。
自分がここねといちゃついているのに、他の人がいちゃついているのを見ると顔を真っ赤にして照れたり逃げ出したり爆発する。
基本的にいちゃついているところを見られても真っ赤になったり爆発したりする。
残念美人。
芹澤ここね(せりざわここね)
黒のサイドテールの小柄な体躯に真面目な生徒。目が大きく、小動物のような思わず守ってあげたくなる雰囲気がある。可愛い。ここねの頭を撫でるために今日も争いが繰り広げられているとかいないとか。菜々美が大好き。人前でもいちゃつける人。
綾瀬彩(あやせあや)
ウェーブがかったベージュの髪。セミロング。
成績優秀。可愛い顔をしているのだが、常に機嫌が悪そうな顔をしている、決して菜々美と涼香のせいで機嫌が悪い顔をしているわけではない。決して涼香のせいではない。なぜかフルネームで呼ばれる。夏美とよく一緒にいる。
伊藤夏美(いとうなつみ)
彩の真似をして髪の毛をベージュに染めている。髪型まで同じにしたら彩が怒るからボブヘアーにパーマをあててウェーブさせている
彩と同じ中学出身。彩を追ってこの高校に入学した。
元々は引っ込み思案な性格だったが、堂々としている彩に憧れて、彩の隣に立てるようにと頑張っている。
綺麗な顔立ちの子。
春田若菜(はるたわかな)
黒髪ショートカットのバスケ部。涼香と三年間同じクラスの猛者。
なんとなくの雰囲気でそれっぽいことを言える。涼香と三年間同じクラスで過ごしただけのことはある。
涼香が躓いて放った宙を舞う割れ物は若菜がキャッチする。
チャリ通。
【4話完結】好きなだけ愛しているとは言わないで
西東友一
青春
耳が聞こえず、言葉も喋れない女の子「竜崎」に恋していた。けれど、俺は彼女と会話する努力をせずに日々を過ごしていた。そんなある日、幼馴染の「桜井」から体育館裏に呼ばれ歯車が動き出す―――
見習いシスター、フランチェスカは今日も自らのために祈る
通りすがりの冒険者
ライト文芸
高校2年の安藤次郎は不良たちにからまれ、逃げ出した先の教会でフランチェスカに出会う。
スペインからやってきた美少女はなんと、あのフランシスコ・ザビエルを先祖に持つ見習いシスター!?
ゲーマー&ロック好きのものぐさなフランチェスカが巻き起こす笑って泣けて、時にはラブコメあり、時には海外を舞台に大暴れ!
破天荒で型破りだけど人情味あふれる見習いシスターのドタバタコメディー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる