若松2D協奏曲

枝豆

文字の大きさ
上 下
146 / 242
文化祭

結果発表

しおりを挟む
2日間の文化祭はあっという間に終わった。

袋は…全部は無理だった。それでも、
「…839枚!記録達成!」
とみんなで喜び合う事が出来た。

残りの袋は職員室の先生が買い取ってくれた。
もちろん自分たちでも買い取った。
嶋田さんが役所でも…と言ってくれたけれど、学生作品なので万が一のトラブルがあった時には学校が責任を取る、役所に迷惑は掛けられないという話だった。

禁止されている打ち上げ、反省会という名目でも今年のD組はやらない。
まだ2年D組の文化祭は終わっていないから。

「じゃあ、また明日。」
代休を使ってみんなでお出掛けする。
行き先はもちろん、「磯山学園」だ。

売り上げを持って、明日みんなでそれを届けにいく。

「…翠ちゃん、ちょっといい?」
帰りがけ、私にそう声を掛けてきたのはかなり落ち込んだ北斗くんだった。

「…どうしたの?」
「うん…ちょっと。」



「優に、大人の男の人の知り合いっている?」

深刻そうに聞いてきた北斗くん。
こんな感じの、こんな人と説明されても、
「…誰だろう?知らない。」
としか言えなかった。

この2日優ちゃんとはあまり話せていない。
私が吹部で動いていてのもあるし、1日目は優ちゃんは追加の袋制作でブースにはいなかったし、2日目は宣伝でやっぱりいなかった。

最後の体育館でのコンサートの時は、みんなで見に来てくれたのが舞台の上から見えたけど、話はしていない…し。

「なになに?どうしたの?」
横で話を聞いていた皇子くんが
「浮気?」
と、北斗くんを揶揄い始めた。

…あれ?なんなの、いつもと反応が違う…?

揶揄ったはずの皇子くんもしまった!という顔をして固まった。

…これ、マジのヤツ!

えっ、待って!
優ちゃんが?
あの優ちゃんが?

ナイナイ!それはない!

「…違うと思うけど?」
「誰?って聞きゃーいいじゃん。」

…なんか聞けなさそう。

こんな北斗くん見た事ない!

北斗くんの話だと、1日目、優ちゃんはその男の人とどこかに消えて、そのまま戻って来なかった。
「袋制作だろ?」
と皇子くんは言うし、私もそう思ったんだけど。

「そうだけど、そこに行くまではわからないし…。」
とかなり弱気。

北斗くんは部活担当との兼ね合いで、ブースから離れられなかったからしい。
「探しに行きたくても行けなかった…。」

「しかもさぁ、花音と悠太と飯食いに行くって!その面子なら俺誘ってくれても良くね?」
「うん…それは確かに…。」

2日目はほとんどすれ違いだった、と。
どうしていいかわからなくて、つい素っ気なくして、そうしたらますます落ち込んで…。

「だから直接聞けば?って。」
「…聞けないよ。」

「…私、聞いてみようか?」
ポロッと出した言葉に、北斗くんが俯いていた顔をガバッと上げた。

「いいの?聞いてくれるの?」
両腕をガッツリ掴まれて驚いていると、
「北斗!触んな!離れろって!」
と疾風くんが引き離してくれた。

「うん、聞いてみるよ。」

…優ちゃん、今どこにいるんだろう?

「…今どこ?」
優ちゃんは送ったメッセージにすぐに反応して折り返して電話をくれた。

「…駅。」
「まってて。いっしょに帰ろ?」
「…ごめん。人を待ってるから。」
「わかった。じゃあ明日ね。」
と通話を終えた。

「誰かと待ち合わせしてるみたい。」
そう言うしか無かった。

…流石にわかる。
この状況はよろしくない。

皇子くんも疾風くんも何も言えないでいる。

「追いかける?」
「…無理。」
「…らしくねーな、北斗!」
「…俺らしい、って何?」

…北斗くん。

「じゃあ、飯でも食いに行くか?」
「…行く。」

その時、富田くんと絵里ちゃんと仁志くんが前を通りかかった。
「ねえ、これからメシ食いに行くけど、北斗達も行く?」

「あっ、私達も行くところ…だけど。」
チラリと北斗くんを見やった。
あんまり大勢じゃない方がいい?と迷っていると、
「…行く!」
と北斗くんが返事をしてしまったので、みんなでご飯を食べに行く事になった。

自転車通学の仁志くんと富田くんに合わせて、隣駅との間にあるファミレスまでみんなで歩いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

バッサリ〜由紀子の決意

S.H.L
青春
バレー部に入部した由紀子が自慢のロングヘアをバッサリ刈り上げる物語

翠名と椎名の恋路(恋にゲームに小説に花盛り)

jun( ̄▽ ̄)ノ
青春
 中2でFカップって妹こと佐藤翠名(すいな)と、中3でDカップって姉こと佐藤椎名(しいな)に、翠名の同級生でゲーマーな田中望(のぞみ)、そして望の友人で直球型男子の燃得(もえる)の4人が織り成す「恋」に「ゲーム」に「小説」そして「ホットなエロ」の協奏曲

Dear my roommates

heil/黒鹿月
青春
ルームメイトだけど、あんまり話したことなくて――― ―――お互い、何を思ってるのかわかんなくて でも、私たちはどこか似てて――― ―――いつかは言えるかな。 『お互いの 気持ち』。 星花女子プロジェクト参加作品です。 墨森 望乃夏(黒鹿月 木綿稀)×白峰 雪乃(しっちぃ)。どこか似たもの同士不器用な2人が、仲良くなるまでの日記。 なろうからの改稿になります。 ※時たま話者が変わります。タイトルの所にどちら視点なのかを記載しています。 ※星花女子プロジェクトは、登美司 つかさ様の合同企画です。

後天的貞操逆転世界の異端者〜ある日突然貞操観念が完全に逆転した世界で元のままだった俺、ギラギラした美少女達からロックオンされてしまう〜

水島紗鳥
青春
ある日全世界で男女の貞操観念が逆転する超常現象が発生した。それにより女性の性欲が凄まじく強くなり男性の性欲はめちゃくちゃ弱くなったわけだが、主人公である沢城潤は何故か貞操逆転していない。 そのため今までと何も変わっていない潤だったがそれを知られると面倒ごとに巻き込まれる可能性が高いと判断して隠している。 しかし、そんな潤の秘密に気付いた美少女達にロックオンされてしまって…

神様自学

天ノ谷 霙
青春
ここは霜月神社。そこの神様からとある役職を授かる夕音(ゆうね)。 それは恋心を感じることができる、不思議な力を使う役職だった。 自分の恋心を中心に様々な人の心の変化、思春期特有の感情が溢れていく。 果たして、神様の裏側にある悲しい過去とは。 人の恋心は、どうなるのだろうか。

雪と桜のその間

楠富 つかさ
青春
 地方都市、空の宮市に位置する中高一貫の女子校『星花女子学園』で繰り広げられる恋模様。 主人公、佐伯雪絵は美術部の部長を務める高校3年生。恋をするにはもう遅い、そんなことを考えつつ来る文化祭や受験に向けて日々を過ごしていた。そんな彼女に、思いを寄せる後輩の姿が……?  真面目な先輩と無邪気な後輩が織りなす美術部ガールズラブストーリー、開幕です! 第12回恋愛小説大賞にエントリーしました。

朱に交われば紅くなる

蒼風
青春
□あらすじのようななにか□  学生相談室。それは悩み多き学生が、親には言えないような相談をするための、いわば心のケアを行うための場所である。 「さあ、西園寺!今日はどれにする?」 「そうですね……それじゃあ俺はこの超激辛ってやつにしてみます」 「お!それいくのか。チャレンジャーだねぇ~」 「いやチャレンジャーもなにも、やばそうなやつしかないじゃないですか、今日のカップ麺」  そう、ケアを行うための、 「んじゃ、私はこれかな。極激辛」 「は?マジすか?これ散々兵器だ兵器だって言われてるやつじゃないですか。あの、自殺なら他所でやってもらってもいいですか?」 「失礼な!こう見えても私は辛いものは得意なんだ。バカにするな」 「いや、どうも見えないですし、馬鹿にもしてませんけど……どうなっても知りませんよ?」  ケアを行うための…… 「ダイジョブダイジョブ!ああいう評価は大体誇張だって少年も言ってただろ」 「いや、言いましたけど……まあ、紫乃ちゃんがそれでいいならいいですけど」  前言撤回。  学生相談室。それは悩み多き学生が親には言えないような相談をするための、いわば心のケアを行うための場所。  ……というのは世を忍ぶ仮の姿。真の姿は子供のような無邪気さを持った大人と、大人のようなドライさを持ち合わせた少年が一緒に激辛カップラーメンに挑戦するための、 「ちょっと~?あんまりうるさくしないでね~?」  場所…………  なんの場所なんだろここ。分かったら是非教えてほしい。  ちなみに、無謀にも極激辛を選んだ彼女がどうなったのかは、CMの後。  この番組はまる○食品株式会社の提供でお送りしております(大嘘)  え、結局どんな話かって?それは本編を読んでからのお楽しみってことで、ここは一つ。 「ア゛ッ゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛ー゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛(絶命)」 「ほら言わんこっちゃない」  お後がよろしいようで。 □更新について□ ・原則、一月中は毎日更新する予定です。 ・その後は未定ですが、週一更新にしようかと考えております。 ・その他のことは近況ノートかTwitterの告知アカウント(@soufu_info)をご覧ください。 (最終更新日:2021/01/13)

未来の貴方にさよならの花束を

まったりさん
青春
小夜曲ユキ、そんな名前の女の子が誠のもとに現れた。 友人を作りたくなかった誠は彼女のことを邪険に扱うが、小夜曲ユキはそんなこと構うものかと誠の傍に寄り添って来る。 小夜曲ユキには誠に関わらなければならない「理由」があった。 小夜曲ユキが誠に関わる、その理由とは――!? この出会いは、偶然ではなく必然で―― ――桜が織りなす、さよならの物語。 貴方に、さよならの言葉を――

処理中です...