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文化祭
菜々子視点
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2ーDの販売ブースは正面玄関を入って直ぐの渡り廊下前。
お客さんが入って直ぐ、目の前、必ずみんなが通る場所になった。
ここは例年、保護者会のブースが並ぶ、一等地。
ここを譲ってくれたのは、市の広報の効果だと思う。
「さあ、頑張ろう!」
並んだ商品の前に立つと、ワクワクと少しの緊張感が押し寄せて来る。
お揃いにしたクラスTシャツはそれぞれが好きな色にして、花音が描いてくれたイラストを付けた。
「…売れるかな。」
隣に立つ花音が不安げに呟いている。
…こんなに話が大きくなるとは思っていなかった。
実行委員になったのは、なり手がいなくてホームルームが無駄に長引いたから。
まあなんとかなるでしょう、と。
このクラスがこんなに行動的だとは思っていなかった。
自分ひとりだったら、きっと千枚売ろうなんて思わなかった。
寄付をするという発想も、役所を巻き込もうだとかは思いつきもしていない。
「このクラス、凄いよね。」
花音にそういうと、
「うん、凄いよ。」
と答えてくれる。
「そのクラスのひとりだよ、菜々子も。」
反対側にいた皇子くんが言ってくれるのが、なんだか照れ臭い。
「大変だっただろ、みんな好き勝手ばかりで。」
「そんな大した事してないよ、好き勝手は否定出来ないけどね。」
私がみんなを引っ張り上げる場面なんて全く無かった。
むしろみんなに引き摺られて今日になった気がする。
閉じられているガラス扉の向こうには、チラホラと人が集まり始めている。
「さあ、始まる!」
「こんにちは。」
「いらっしゃいませー。」
あちこちで声が飛び交い始めた。
ひとり目のお客さんは中学生の女の子達だった。
「いらっしゃいませ。」
手慣れているのか、北斗が声を掛けていく。
「可愛い…。」
呟く女の子達に
「でしょう?」
と手慣れた感じ。
「今日ね、きっと袋活躍するよ。買ったものバンバン入れていって。」
…そうなのだ。
環境保護の一環で、靴を入れるビニール袋も、買った商品を入れる袋も、原則相手からの申告が無ければ渡さない事になっている。
きっとこの袋はそういう意味でも役に立つ。
この袋を持ってみんなが校内を歩いてくれたら、更に多くの人の目に留まる。
袋かバンダナ…。
袋を一生懸命に推したのは、北斗、ううん、北斗の従姉妹のお姉さんだそうだ。
北斗だけじゃなくて、優ちゃんにも「絶対に袋だよ。」と力説していたみたい。
この2人と皇子がうん、と言えばクラスは結局そっちに流れ始めるから不思議だな、と思う。
お客さんが入って直ぐ、目の前、必ずみんなが通る場所になった。
ここは例年、保護者会のブースが並ぶ、一等地。
ここを譲ってくれたのは、市の広報の効果だと思う。
「さあ、頑張ろう!」
並んだ商品の前に立つと、ワクワクと少しの緊張感が押し寄せて来る。
お揃いにしたクラスTシャツはそれぞれが好きな色にして、花音が描いてくれたイラストを付けた。
「…売れるかな。」
隣に立つ花音が不安げに呟いている。
…こんなに話が大きくなるとは思っていなかった。
実行委員になったのは、なり手がいなくてホームルームが無駄に長引いたから。
まあなんとかなるでしょう、と。
このクラスがこんなに行動的だとは思っていなかった。
自分ひとりだったら、きっと千枚売ろうなんて思わなかった。
寄付をするという発想も、役所を巻き込もうだとかは思いつきもしていない。
「このクラス、凄いよね。」
花音にそういうと、
「うん、凄いよ。」
と答えてくれる。
「そのクラスのひとりだよ、菜々子も。」
反対側にいた皇子くんが言ってくれるのが、なんだか照れ臭い。
「大変だっただろ、みんな好き勝手ばかりで。」
「そんな大した事してないよ、好き勝手は否定出来ないけどね。」
私がみんなを引っ張り上げる場面なんて全く無かった。
むしろみんなに引き摺られて今日になった気がする。
閉じられているガラス扉の向こうには、チラホラと人が集まり始めている。
「さあ、始まる!」
「こんにちは。」
「いらっしゃいませー。」
あちこちで声が飛び交い始めた。
ひとり目のお客さんは中学生の女の子達だった。
「いらっしゃいませ。」
手慣れているのか、北斗が声を掛けていく。
「可愛い…。」
呟く女の子達に
「でしょう?」
と手慣れた感じ。
「今日ね、きっと袋活躍するよ。買ったものバンバン入れていって。」
…そうなのだ。
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きっとこの袋はそういう意味でも役に立つ。
この袋を持ってみんなが校内を歩いてくれたら、更に多くの人の目に留まる。
袋かバンダナ…。
袋を一生懸命に推したのは、北斗、ううん、北斗の従姉妹のお姉さんだそうだ。
北斗だけじゃなくて、優ちゃんにも「絶対に袋だよ。」と力説していたみたい。
この2人と皇子がうん、と言えばクラスは結局そっちに流れ始めるから不思議だな、と思う。
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