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文化祭 準備
学習ボランティア 疾風視点
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実際に磯山学園に行ってみよう、そう言い出したのは絵里だった。
「お金を渡すだけ…ってなんか違う気がする。」
と言った俺の言葉を受けて、
「じゃあ、実際に行ってみるのはどうかな?
行ったこともない場所を支援するのと、行った場所を支援するのはきっと熱量が違うから。」
と。
それをみんなに話すと、部活がある人や予定がある人を除いて、10人ほどで磯山学園を見に行く事になった。
原田先生がアポを取ってくれて、「学習ボランティア」という形でお邪魔させて貰う。
もちろん?嶋田さんもくっついて来た。
その日、何故か富田と悠太が剣道の道具一式を抱えて持ってきた。
「何で?」
と聞く絵里に、2人は
「行けばわかる。」
とニヤニヤして答えた。
コハク駅から南洲線に乗り換えて、約1時間。県を跨いで磯山駅に着いた。
「あ、あそこ。」
菜々子が指さしたのは茶色く削れた山肌だった。
生々しい被害の跡に言葉が出ない。
「ほら、タクシー乗るぞ!」
原田先生が被害の跡に立ちすくむ俺たちを急かした。
タクシーが止まったのは細い山道の入り口。
暗く生い茂った大きな木が、アーチを作っている。
その下の急な坂道を登っていくと、磯山学園が見えた。
出迎えてくれた寮長先生が、
「いらっしゃい、あれ?タカシ先生!?」
と驚く。
「タカシ先生!?」
寮長先生の視線の先には富田がいた。
「お久しぶりです。」
ペコリと富田が頭を下げた。
富田の家は剣道の道場をやっていて、父親が師範なんだそうだ。
父親はボランティアでここの子供達に時々剣道を教えていた。
幼い富田も一緒にここへ来て、剣道をして、年齢的に何上がると共に、子供たちに教えるようになったそうだ。
「だから先生ってか。」
防具の意味もわかった。
「ああ、まあ。」
「富田」先生じゃないのはお父さんが「富田先生」になるから、だそうだ。
富田と悠太は道着に着替えて、ホールで剣道を教える事になった。
男の子の半分程がホールに走っていった。
「勉強より、コッチ!」
と言う子供たちには苦笑い。
俺と皇は算数、絵里は簡単な英語、菜々子達は国語。
みんなそれぞれ自分の得意な教科を子供たちと一緒にやる事にした。
廊下からこっちを見ている男の子に最初に気付いたのは皇だった。
「悪い、ここ頼む。」
皇がそっと立ち上がる。
「大丈夫かな?裕翔はスゲエ人見知りなんだ。」
一緒に勉強していた子が教えてくれる。
…そうか。
「うん、あのお兄さんなら大丈夫。」
そう言ってあげる。
…弟の壮くんを思い出させたんだろう。
皇は慣れてる。きっと大丈夫。
「お兄ちゃん、出来た!」
隣で問題を解いていた女の子がノートを見せてくれる。
「うん、どれどれ。うん、出来てる。凄い!」
ニコッと照れて笑う小さな女の子を見て、自然に顔が綻んだ。
「お金を渡すだけ…ってなんか違う気がする。」
と言った俺の言葉を受けて、
「じゃあ、実際に行ってみるのはどうかな?
行ったこともない場所を支援するのと、行った場所を支援するのはきっと熱量が違うから。」
と。
それをみんなに話すと、部活がある人や予定がある人を除いて、10人ほどで磯山学園を見に行く事になった。
原田先生がアポを取ってくれて、「学習ボランティア」という形でお邪魔させて貰う。
もちろん?嶋田さんもくっついて来た。
その日、何故か富田と悠太が剣道の道具一式を抱えて持ってきた。
「何で?」
と聞く絵里に、2人は
「行けばわかる。」
とニヤニヤして答えた。
コハク駅から南洲線に乗り換えて、約1時間。県を跨いで磯山駅に着いた。
「あ、あそこ。」
菜々子が指さしたのは茶色く削れた山肌だった。
生々しい被害の跡に言葉が出ない。
「ほら、タクシー乗るぞ!」
原田先生が被害の跡に立ちすくむ俺たちを急かした。
タクシーが止まったのは細い山道の入り口。
暗く生い茂った大きな木が、アーチを作っている。
その下の急な坂道を登っていくと、磯山学園が見えた。
出迎えてくれた寮長先生が、
「いらっしゃい、あれ?タカシ先生!?」
と驚く。
「タカシ先生!?」
寮長先生の視線の先には富田がいた。
「お久しぶりです。」
ペコリと富田が頭を下げた。
富田の家は剣道の道場をやっていて、父親が師範なんだそうだ。
父親はボランティアでここの子供達に時々剣道を教えていた。
幼い富田も一緒にここへ来て、剣道をして、年齢的に何上がると共に、子供たちに教えるようになったそうだ。
「だから先生ってか。」
防具の意味もわかった。
「ああ、まあ。」
「富田」先生じゃないのはお父さんが「富田先生」になるから、だそうだ。
富田と悠太は道着に着替えて、ホールで剣道を教える事になった。
男の子の半分程がホールに走っていった。
「勉強より、コッチ!」
と言う子供たちには苦笑い。
俺と皇は算数、絵里は簡単な英語、菜々子達は国語。
みんなそれぞれ自分の得意な教科を子供たちと一緒にやる事にした。
廊下からこっちを見ている男の子に最初に気付いたのは皇だった。
「悪い、ここ頼む。」
皇がそっと立ち上がる。
「大丈夫かな?裕翔はスゲエ人見知りなんだ。」
一緒に勉強していた子が教えてくれる。
…そうか。
「うん、あのお兄さんなら大丈夫。」
そう言ってあげる。
…弟の壮くんを思い出させたんだろう。
皇は慣れてる。きっと大丈夫。
「お兄ちゃん、出来た!」
隣で問題を解いていた女の子がノートを見せてくれる。
「うん、どれどれ。うん、出来てる。凄い!」
ニコッと照れて笑う小さな女の子を見て、自然に顔が綻んだ。
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