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皇子くんの一番
誰を撮りたいのか
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「俺に写真の撮り方を教えてもらえませんか?」
ホタルを見に行って嶋田さんに会った時にお願いをした。
「写真教えるのは良いんだけど、何を撮りたいの?」
嶋田さんの質問はここから始まった。
「風景なのか、人物なのか、SNS用の料理とか色々あるじゃない?」
「人物です。」
「友達?」
「弟です。」
今まであまり弟のことを人に話したことがない。疾風が知っているから相談とかは疾風にしてきたし。
話せると思ったのはきっと嶋田さんの人柄によるところが大きい。
「弟さん?」
「あんまり笑わないんです。」
それから疾風と翠のバラ園での写真を見て、その自然な表情に驚いた事、こんな自然な笑顔の写真を弟にも残してあげたい事を話した。
笑わないのも個性だから、笑わない人を無理に笑わせても良い写真を撮るのは難しいよ、嶋田さんの言葉は最もだ。
だけど、それでも俺は弟の笑顔の写真を撮りたかった。いや笑ってなくても良い。
親が土日仕事で、家族で出掛けた事はあんまりない。だから壮の家族写真は驚くほど少ない。
少ない写真でも壮はあまり写りたがらないし、隅っこで固くなっていたり、俯いてしまっていることがほとんどだ。
「弟の自然な表情の写真をたくさん撮ってあげたいんです。」
本気だとわかってくれたのか、元々の優しさなのか、嶋田さんはじゃあ今度弟クンを連れて遊びにおいで、と言ってくれた。
そのことを帰って壮に伝えると、
「行かなきゃダメ?」
と不安そうな顔をされた。
「…ダメってことは無いけど、壮に会わせてやりたいんだ。良い人なんだよ、とっても。」
「だけど…知らない人だよ。」
「そうだけど…。誰だって始めは知らない人だよね。」
「そうだけど…。」
「じゃあ、嶋田さんの家の犬を見にいくのは?」
「犬?」
「うん、犬と遊ばせて貰おうよ。」
「…お兄ちゃんも行く?」
「うん、行く。俺が嶋田さんに会いたいし、ソラとも遊びたい。」
「ソラ?」
「嶋田さんの犬の名前。」
…お兄ちゃんが行きたいなら、一緒に行ってもいいよ。
壮がそう言ってくれた時、第一関門を突破出来た気がして、少し嬉しくなる。
ホタルを見に行って嶋田さんに会った時にお願いをした。
「写真教えるのは良いんだけど、何を撮りたいの?」
嶋田さんの質問はここから始まった。
「風景なのか、人物なのか、SNS用の料理とか色々あるじゃない?」
「人物です。」
「友達?」
「弟です。」
今まであまり弟のことを人に話したことがない。疾風が知っているから相談とかは疾風にしてきたし。
話せると思ったのはきっと嶋田さんの人柄によるところが大きい。
「弟さん?」
「あんまり笑わないんです。」
それから疾風と翠のバラ園での写真を見て、その自然な表情に驚いた事、こんな自然な笑顔の写真を弟にも残してあげたい事を話した。
笑わないのも個性だから、笑わない人を無理に笑わせても良い写真を撮るのは難しいよ、嶋田さんの言葉は最もだ。
だけど、それでも俺は弟の笑顔の写真を撮りたかった。いや笑ってなくても良い。
親が土日仕事で、家族で出掛けた事はあんまりない。だから壮の家族写真は驚くほど少ない。
少ない写真でも壮はあまり写りたがらないし、隅っこで固くなっていたり、俯いてしまっていることがほとんどだ。
「弟の自然な表情の写真をたくさん撮ってあげたいんです。」
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「ソラ?」
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