若松2D協奏曲

枝豆

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皇子くんの一番

搾取

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「一体いつまで親の人生を搾取するつもりなの?」
風邪で寝込んだ壮に母親がぶつけた一言。
その時壮はまだ幼稚園児だった。

母の仕事が結婚を扱っていることもあって、母の職場は産休と育休が充実している。
俺を産んで、しっかりと育休を取って、職場に復帰したのが俺が4歳の時。
そして壮を産んだのが、俺が小学2年生の時。
その間の4年間で何か思うところがあったのかもしれない、母は壮の時は育休をほとんど取らないで職場に復帰した。

保育園に通い始めた壮は度々熱を出した。
その度に母が職場に電話を掛けて休みを貰っていた。
その度に母は壮を責めていた。

「1年目はみんなそうなんだけどねぇ。」
疾風の母、梓さんはよくそう言って苛立つ母を慰めていたのを思い出す。

顧客にとって一生に一度の結婚式。その仕事で思うように出勤出来ないという状況が母を追い詰めたんだと思う。
母は部下だった後輩のサポートに回された辺りから壮に対しての当たりがキツくなった。

壮の体調が安定し、俺と2人で留守番出来るようになったのが、壮が年長になった時。その頃から母はまた仕事にのめり込んだ。

しかしその時にはもう遅かった。
「自己肯定感が低い。」
「自尊感情の欠如」
保育園からの依頼で検査を受けた壮への診断だった。

正直俺には初めのうちは母が壮に浴びせていた言葉の意味がサッパリ意味がわからなかった。
ただ壮に対してネガティブな事だということだけは分かった。

スマホを与えられてからわからなかった言葉をひとつひとつ確かめていった。
搾取とは?
自己肯定感とは?
自尊感情とは?

そこから発達障害、児童虐待、ネグレクト…と様々な言葉へと拡がって次々に検索していった。
わかっている、ネット検索で調べた事だけを鵜呑みにしちゃダメだということも、壮に当てはまりそうな事だけじゃなく、当てはまらなそうな事も沢山あって…。

そうかな?イヤ違うかも?
怖くて確かめられないままズルズルと3年経った。

多分父や母はもっと詳しいことを知っているはず。違う、知っていて欲しい。
仕事が大切なのはわかっている。
だけど…。

そうかもしれない、イヤ違うかもしれない。
モヤモヤし続ける葛藤の中でひとつだけ確かなことがある。

壮は俺の大切な家族だ。
俺は壮の一番の理解者でありたいと願っている。



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